コロナ禍で広がる「癒やし」消費の形
CASE❸ 森永乳業株式会社
情緒的な訴求に注力し「癒やしの時間」に想起されるブランドに
全国の動物園・水族館と連携し、飼育員自ら撮影した動物の赤ちゃんの写真を商品パッケージに展開した森永乳業株式会社の「マウントレーニア 深い癒やしプロジェクト」。パッケージ、広告、キャンペーンなど多彩なアプローチを通じて、コロナ禍でストレスを抱える生活者に癒やしを届けるとともに、売上の一部を寄付するなど、コロナ禍に苦しむ動物園・水族館の応援にも一役買った同プロジェクトを取材した。

片岡由依氏
森永乳業株式会社 営業本部マーケティング統括部 ビバレッジ事業マーケティング部
癒やしを通じて三方よしを実現
1993年発売の「マウントレーニア」は、「チルドカップコーヒー」という新たなカテゴリーを日本で最初につくったブランドです。エスプレッソ&ミルクの味わいを手軽に楽しめる「マウントレーニア」には、気分やシーンによって飲み分けられるさまざまなラインアップが揃っており、自分らしい時間、心を癒やす時間をお客様に提供することを目指してきました。
2021年4月にスタートした「深い癒やしプロジェクト」は、コロナ禍によって多くの生活者が“見えないストレス”を抱えている中で、「マウントレーニア」を通じて癒やしをお届けしたいという思いからスタートしました。そして、全国の動物園の赤ちゃんの写真を「マウントレーニアカフェラッテ」のパッケージに使うことで「深い癒やし」を提供し、売上の一部を寄付することで、お客様、動物園、企業の三方よしとなる仕組みを構築しました。
動物園と生活者をつなぐ多彩な試み
当プロジェクトは大きな反響をいただき、出荷本数は前年実績を大幅に上回り伸長しました。SNS上の投稿では、「動物の赤ちゃんに癒やされる」という声と同時に、「マウントレーニア」を通じて動物園を応援したいという能動的なアクションも多く見られました。お客様からの好意的な声に加え、動物園の皆様からも良い反応が得られたことから、7月には水族館の生き物たちを加えた第2弾パッケージを展開しました。
当初からプロジェクトではパッケージにとどまらず、さまざまな形で癒やしをお届けしていくことを想定しており、全国複数路線の電車広告を動物園や水族館の人気者たちがジャックする「深い癒やしトレイン」、可愛らしい動物の映像を流すWeb広告、動物たちが参加するオンライン会議「ZOOm」などの施策を展開してきました。今後は当プロジェクトの一環として、「マウントレーニア」の他商品のパッケージにも、花火や自然などをテーマにした新企画を展開していく予定です。
生活者の心を満たす存在を目指す
「深い癒やし」を掲げた当プロジェクトが広く受け入れられた背景には、癒やされたいという生活者の強いニーズがあることは間違いないと思います。プロジェクトをいつまで継続するかは未定ですが、癒やしというテーマは今後もしばらく求められるのではないでしょうか。
これまではオフィスで飲まれる機会が多かった「マウントレーニア」ですが、コロナ禍では、自宅などのよりパーソナルなシーンで求められるようになりました。こうした状況の中、コーヒーの味わいを追求するだけではなく、お客様一人ひとりの心を満たす存在になることがブランドの課題だと考えていますし、今回の企画はその第一歩になったのではないかと感じています。今後も当社はブランドの価値を情緒的な観点から訴求していくことによって、「癒やしの時間」に想起していただけるブランドになることを目指していきます。


