コロナ禍で広がる「癒やし」消費の形
CASE❹ ロート製薬株式会社
香りのある日常を通じて健やかな心と身体を育む
胃腸薬や目薬、スキンケア製品などを展開するロート製薬株式会社は、2019年に香りの研究、商品やサービスの開発などを行うオープンイノベーションラボ「べレアラボ(BÉLAIR LAB)」を開設した。香りに関する学術的研究や、香りを通じた空間プロデュースなどのBtoB事業に加え、ルームフレグランスやアロマディフューザーなどの販売も開始。コロナ禍における癒やしを提供している「べレアラボ」の代表に話を聞いた。

星 亜香里氏
ロート製薬株式会社 べレアラボ 代表
香りと感性のオープンイノベーションラボ
ロート製薬は胃腸薬から事業をスタートし、目薬や一般用医薬品、さらにスキンケアなどに製品ラインナップを広げてきました。この20年ほどで売上の構成比が変化する中、近年は「薬に頼らない製薬会社」を一つのテーマに掲げ、「食」などを通じて病気やストレスに負けない健やかな心身を育んでいく事業にも取り組んできました。
こうした中、2019年にスタートした「べレアラボ」は、香りと感性をテーマにしたオープンイノベーションラボです。古来よりスパイスやハーブは病や虫などから身を守るために使われてきましたし、日本においても「香薬」という言葉があるように、香りと薬が同一視されていた時代があります。また、病気が顕在化しているマイナスの状況で飲むことが多い薬に対して、香りはポジティブな気持ちで用いるケースが多く、心身ともに健康になるために良い役割を果たせるのではないかという思いが立ち上げの背景にありました。
コロナ禍で高まった香りのニーズ
「べレアラボ」では、世界的な調香師であるクリストフ・ロダミエル氏の監修のもと、香りを通じた空間プロデュースなどのBtoB事業や、プロアスリートの協力を得て、香りが精神や睡眠に与える影響に関する研究などを行ってきました。
2020年からはこれまでの研究成果をもとにBtoC事業にも着手し、今年6月には「ナチュラル アロマディフューザー」をリリースしました。コロナ禍によって、香りを通じて毎日の生活を良くしたいというニーズが高まっており、これまで香りに興味をお持ちでなかったお客様も、さまざまな香りを少しずつ楽しめるセット商品などを購入し、気分やシチュエーションに合わせて楽しまれています。
商品の販売はオンラインが中心ですが、東京・有楽町や渋谷に展開する体験型ストア「b8ta(ベータ)」においてアートをテーマにした展示を行うなど、リアルな場所で香りの体験を提供していくことにも注力しています。
香りがもたらす癒やしの効果
私自身、過去にアロママッサージの施術をしていた経験がありますが、香りには心と身体を癒やす力があることを強く感じてきました。コロナ禍で旅行などができなくなり、一日の生活をずっと同じ空間で過ごすことが余儀なくされる中、こうした香りの効力や価値に多くの人が気づいたように感じます。また、BtoBの事業においても、遠洋漁業の漁船に陸地を感じさせるグリーンの香りを提供することで、陸とつながっている安心感をもたらし、乗組員のストレス軽減をサポートすることができました。
私たちの研究では、集中して作業をしている日中から香りを取り入れることで、睡眠の質が高まることなどがわかっており、その他にも香りが及ぼすさまざまな効果が検証されています。今後はより幅広いシーンに香りを提案し、一人でも多くの人たちの心身をより良い状態にしていきたいと考えています。

