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総合商社である強みを生かして業界を活性化

「情熱を持って人とつながり、そこから信頼を培う」

伊藤忠商事株式会社 代表取締役社長COO 石井敬太氏
伊藤忠商事株式会社 代表取締役社長COO
石井敬太

コロナ禍での社長就任となりました。いまだ不確実な状況ですが、新年の決意からお聞かせください。

緊急事態宣言が解除になって、ようやくいろいろな方々にお会いできるようになり、改めて気を引き締めて取り組まなければならないと感じています。伊藤忠商事の持続的な企業価値の向上を実現するためにも、社会課題解決と収益拡大の好循環を生み出すのが私の使命。真摯に向き合っていきたいですね。

企業価値を担うのは、一人ひとりの社員です。「個」の成長と「組織」の発展については、どのようにお考えでしょう。

私自身が成長を感じた経験の一つが、アメリカのテキサス州ヒューストン時代のことです。入社後は有機化学品第一部に配属され、国内外から石化原料を買い付けてユーザーに納入するのが仕事でした。1996年に初めて海外駐在したヒューストンでは、アメリカで伝手や情報の何もないところから高分子樹脂の販売を担当することになりました。大手小売にプライベートブランド商品を納入するメーカーをターゲットに定め、一つひとつ探し出しては電話をかけ、広大な土地をレンタカーで移動しながら売り込みました。アメリカでは、まず「君は何者?」から始まります。「敵か?味方か?」、「いい人か?悪い人か?」……。要するに、どのように信頼関係を築いていくかが鍵であり、「ひとりの商人」として鍛えられました。また、蓄電池ビジネスにおいてチームを主導し、皆でアイデアを出し合いながら、現在の次世代型蓄電システム「Smart Star(スマートスター)」シリーズを核とするビジネスモデルを構築できたことは、チームの成長と発展を実感できた経験でした。

結局は、「情熱」だと思います。「情熱」を持って人とつながり、そこから信頼を培うことこそが重要です。また、先輩のやり方を学びつつも、個性を発揮して自分のスタイルで進んでいく強さも成長には必要でしょう。企業の発展には、「個」の力とその集合体である「チーム」の両輪が欠かせないと思っています。

総合商社として、これからは何が求められるのでしょうか。

今、企業側から一方的に商品を売り込むだけではモノは売れない時代です。2019年に伊藤忠商事は、「マーケットインの発想」を起点としたカンパニー横断でビジネスを創出する第8カンパニーをつくりました。その第一歩となるのがファミリーマートです。ファミリーマートには食料、繊維、エネルギー・化学品、情報・金融など、さまざまな事業領域で消費者との接点があり、「マーケットインの発想」からカンパニー横断で取り組むことが可能です。

また、「SDGs」は企業活動において絶対に避けては通れず、地球上で活動する企業の責務であると思います。私の出身であるエネルギー・化学品カンパニーは、供給先の業種が幅広く、あらゆる産業の需要動向に敏感です。一方、繊維カンパニーは消費者に近いところでビジネスを展開しています。ポリエステルなどの合成繊維の原料は化学品の商材の一つでもあり、両カンパニーは接点も多い。こうしたカンパニー同士が横断的にコラボレーションをすることで、世の中を変えるようなビジネスモデルや商品が生まれることが十分に考えられます。

「繊維」の看板を掲げる総合商社は今や伊藤忠商事だけですから、繊維カンパニーはその強みを生かし、「マーケットイン」と「SDGs」の実現を通して繊維・ファッション業界の活性化に大いに寄与してほしいですね。

AIを搭載した「Smart Star 3」
AIを搭載した「Smart Star 3」は、気象予報や、家庭の電力需要、太陽光発電電力量等を分析・学習し、蓄電池の最適充放電制御を行うことで、効率的な電力使用を実現する。
第38回「ベストジーニスト2021」「協議会選出・特別貢献賞」を受賞した石井敬太社長
第38回「ベストジーニスト2021」(主催:日本ジーンズ協議会、後援:経済産業省)で、伊藤忠商事がビジネスシーンにおけるジーンズの普及や需要喚起に貢献した企業に贈る「協議会選出・特別貢献賞」を受賞。授賞式での石井敬太社長。