コロナ禍の経験を生かした新たな成長へ

[スペシャル対談] [インタビュー]伊藤忠商事株式会社
株式会社HiRAKU 代表取締役 廣瀬俊朗氏 ファッションアパレル部門長 中西英雄
伊藤忠商事株式会社 常務執行役員 繊維カンパニー プレジデント 諸藤雅浩 ブランドマーケティング第一部門長 北島義典
執行役員 ブランドマーケティング第二部門長 武内秀人

新年あけましておめでとうございます。2021年もまた、新型コロナウイルスに翻弄された1年でしたが、東京オリンピック・パラリンピックが開催されるなど、スポーツの力を感じた1年でもありました。第一部のスペシャル対談では、元ラグビー日本代表のキャプテンで、現在は起業家として多方面で活躍されている廣瀬俊朗氏をお招きし、伊藤忠商事の諸藤雅浩常務執行役員 繊維カンパニー プレジデントが、「スポーツ」や「SDGs」という視点を中心に「スポーツが持つ可能性」についてお話をうかがいました。第二部のインタビューでは、繊維カンパニーの幹部に部門方針などについて取材しました。

廣瀬俊朗氏 × 諸藤雅浩スポーツの可能性を信じてこれからの日本を元気にしたい

株式会社HiRAKU 代表取締役 廣瀬俊朗氏

廣瀬俊朗

株式会社HiRAKU 代表取締役

1981年生まれ。元ラグビー日本代表キャプテン。ラグビーワールドカップ2019アンバサダー。大阪府立北野高校卒業後、慶應義塾大学・理工学部に入学。高校日本代表、U19日本代表。その後、東芝ブレイブルーパスに入団。2007年に日本代表選手に選出され、12年から13年までキャプテンを務める。ポジションはスタンドオフ、ウイング。2016年現役引退後、ビジネス・ブレークスルー大学大学院で経営を学び、経営管理修士(MBA)を取得。その後「ビジネス・ブレークスルー アスリートアンバサダー」に就任。2019年、株式会社HiRAKU設立。2020年より日本テレビ系列「news zero」木曜パートナーとして出演中。

フェアプレイの精神でより良い社会づくりに貢献したい ── 廣瀬

伊藤忠商事株式会社 常務執行役員 繊維カンパニー プレジデント 諸藤雅浩

諸藤雅浩

伊藤忠商事株式会社 常務執行役員 繊維カンパニー プレジデント

1960年生まれ。1983年慶應義塾大学・商学部卒業、伊藤忠商事入社。輸入繊維部配属後、一貫してブランドビジネスに携わり、2010年にブランドマーケティング第一部門長、2014年に執行役員、2016年に執行役員 繊維カンパニー エグゼクティブ バイス プレジデント(兼)同部門長に就く。2017年常務執行役員に昇格。2019年に常務執行役員 繊維カンパニープレジデントに就任。

サステナブル素材を起点に持続的バリューチェーンで「三方よし」の実現を ── 諸藤

アスリートやスポーツを支えたい

伊藤忠商事株式会社 常務執行役員 繊維カンパニー プレジデント 諸藤雅浩(以下、諸藤) 2021年も世界中がコロナ禍にあり、経済活動に影響を及ぼす事態が続きました。その中で開催された東京オリンピック・パラリンピックは、世界各国のトップアスリートによる戦いをリアルタイムで楽しむことができ、改めてスポーツの魅力を感じました。本日は、元ラグビー日本代表でキャプテンを務めた廣瀬俊朗さんに、スポーツを通して日本を元気にするようなお話をお聞かせいただけたらと期待しています。現役を引退されてからは、選手時代とは違ってスーツを着る機会が多いのではないでしょうか。

株式会社HiRAKU 代表取締役 廣瀬俊朗氏(以下、廣瀬) はい。自宅にいるときはラフな格好で過ごしていますが、仕事にはスーツを着用することが多いので、仕事へのオンのスイッチを入れるのがスーツといえます。服装にはあまりこだわらないほうですが、シンプルな装いの中にワンポイントでアクセントを入れるのが好きですね。スーツを着る機会が増えてからは、チーフやネクタイ、靴やベルトなどにも気を遣うようになりました。

諸藤 ファッションには気持ちを高揚させてくれる効能がありますから、装い次第で仕事のモチベーションを高めてくれますよね。さて、ラグビーのトップアスリートとしてのキャリアを経て、ご自身で会社を設立されていますが、まずは、現在の活動内容からお話しください。引退後すぐのビジネス界への転身は、さまざまな苦難もあったのではないでしょうか。

廣瀬 一つは、アスリートのセカンドキャリアを支援する「一般社団法人アポロプロジェクト」の活動があります。ビジネス・ブレークスルー大学大学院(BBT大学院)で学ぶ機会を得てリーダーシップについて考察する中で、アスリートのセカンドキャリアについて何かできることはないかと考えるようになりました。ラグビーの場合、企業スポーツからチームのプロ化という流れがあり、現役引退後はチームのコーチや学校での指導者になる場合はあるとしても、継続して企業の社員として働くという選択肢に頼ることができない可能性があります。そこで、自分がやりたいことを見つけ、引退後に次の活動へスムーズにトランジションできるよう、BBT大学院さんと一緒に1年間かけて教育プログラムをつくりました。

諸藤 アスリートの皆さんは一般的には体力があるという点に注目されがちですが、スポーツの最前線で活躍された方々は頭脳も明晰です。また、ご自身が重圧の中で競技を続けてきた貴重な経験も含め、ビジネス界で活躍できる高いポテンシャルがあると感じます。廣瀬さんの支援活動を通じてアスリートのセカンドキャリアがより確立されてくれば、ビジネス界にとっても、喜ばしいことだと思います。

スポーツの普及啓発と指導者やアスリートの育成支援

廣瀬俊朗氏 × 諸藤雅浩

諸藤 学生アスリートに向けて、このコロナ禍で「スポーツを止めるな」という活動もされていますね。さまざまな世代のアスリートがいる中で、なぜ高校生に着目されたのでしょうか。

廣瀬 共同代表理事を務める「一般社団法人スポーツを止めるな」は、コロナ禍で大会が中止になって、進学に向けたアピールの場を失った高校生アスリートたちに、アピールの機会を提供したいという思いから始めました。高校生自身が動画をつくり、「#スポーツを止めるな」を付けてTwitterに投稿すると、それを有名選手や関係者たちがリツイートして進学のチャンスにつなげるという活動です。昨年現役を引退した五郎丸歩さんにも協力していただいています。当初はラグビーとバスケットの2競技でスタートしたのですが、他の競技も加わって、一つのムーブメントへと広がりました。学生アスリートが自らを主体的にプロモートするという経験は、これからの社会で確実に必要になってくるスキルにもつながると考えています。

諸藤 青春をスポーツに懸けてきた高校生にとって、本当に勇気づけられる取り組みで、まさにキャリア支援を具現化されていますね。

廣瀬 他にも、「NPO法人One Rugby」で理事長を務めています。ラグビーは、15人制や7人制、車いすラグビーはよく知られていますが、他にもデフラグビーやブラインドラグビー、ビーチラグビーなど、意外に種類が多いんです。それらを「One Rugby」として、競技の持つ魅力を広く社会に伝え、互いに協力し合いながらスポーツの普及啓発、指導者やアスリートの育成支援を行っています。

また、2019年ラグビーワールドカップをきっかけに始めた、「国歌を歌っておもてなし」をする「スクラム ユニゾン」という活動も続けており、YouTubeのチャンネルでは約80カ国分の国歌がカタカナの字幕付きで流れ、意味やトリビアも伝えています。東京オリンピック・パラリンピックはほぼ無観客だったので歌う機会はなかったのですが、企業の方が海外へ行ったとき、あるいは海外からの来訪者に、その国の国歌を歌うととても喜んでもらえます。

諸藤 素晴らしい取り組みですね。当社では、コロナ禍で今年度の入社式が中止となる中、新入社員にとって一生記憶に残る日にしようと、世界各地の駐在員や現地スタッフとリアルタイムで映像をつないで、新入社員の門出を祝う入社セレモニーを行いました。来年度は駐在員に歌で歓迎してもらう形も良いかもしれませんね(笑)。