コロナ禍の経験を生かした新たな成長へ
ウェアの素材にもこだわるトップアスリート
諸藤 オリンピックやパラリンピックでは各国の公式ウェアや、競技ごとのユニフォームにも注目が集まります。今、さまざまな機能性素材が開発されていますが、アスリートからすると、ウェアにはどんなことを期待するのでしょうか。
廣瀬 機動性と見た目の格好良さ。この2つが大きいと思います。デザイン的には、やはり格好良さは外せませんね。
諸藤 トップアスリートはデザインだけでなく、素材への要求も非常に細かいと聞きます。それだけパフォーマンスにとっては、ウェアの存在が大きいということですね。
廣瀬 ラグビーのジャージもそうですが、昔は素材がコットン一択でした。雨に濡れるとジャージがめちゃくちゃ重くなって、「自分は何と戦っているんだろう」と感じたものです(笑)。昨今の素材は軽くて強く、速乾性もあり、ストレッチ性も高いですから、大きな動きをしてもまったくストレスがありません。
諸藤 例えば、事業会社のデサントでは、スポーツウェアの研究開発拠点「DISC(DESCENTE INNOVATION STUDIO COMPLEX)OSAKA」に1周250mのトラックや人工気象室などを設置し、実際の着用シーンを想定して、各競技の動きを徹底的に研究しながらウェアを開発しています。トップアスリートの要求に応えた商品は、当然ながらものすごくレベルが高いので、発売すると人気商品になるそうです。コロナ禍でも運動不足の解消を目的に屋外でスポーツを楽しむ方が多く、ゴルフウェアを筆頭にスポーツブランドは好調です。今年は冬季オリンピック・パラリンピックが開催されるので、その効果にも期待したいところです。
多様性を体現しているラグビーの魅力
諸藤 子どもの頃からラグビーに親しんでこられた中で、改めてラグビーの魅力をお聞かせください。
廣瀬 まず、格闘技とボールゲームの2つの要素があるのが面白いと思います。また、自分に備わった体格や特技を変えず、それぞれの個性を生かして活躍できるポジションがあるというのもラグビーの良さでしょう。自分1人でできることは限られていることを知っているせいか、みんなとても優しいんですよ。すべてを自分でやろうとせず、誰かとともに課題を乗り越えることや、その喜びを体感できるのは、特に子どもたちにはいい経験になるのではないでしょうか。昨今は選手が多国籍ということもあり、自分たちの当たり前が当たり前ではないということに気づかされることも大きいですね。
諸藤 ラグビーには、多様性について自然に学べる環境があるわけですね。実はかつて、亡くなった平尾誠二さんをはじめ神戸製鋼コベルコスティーラーズの皆さんに、「マリオ・ヴァレンティーノ」ブランドのオフィシャルスーツを提供していました。そのご縁で平尾さんに講演をしていただいた際、「ラグビーで一番いいことは『ノーサイド』があること」とおっしゃっていました。それがとても印象に残っています。
廣瀬 本当にその通りで、実際、試合が終わると選手だけでなくファンの皆さんも、敵味方なくお互いの健闘を讃え合うのがうれしいですね。
諸藤 ノーサイドの精神はビジネスに生かせる場面も多そうですね。多様性といえば、今回の東京オリンピック・パラリンピックはそれを考えるいい機会にもなりました。個人的には、ボッチャという競技にとても感動しました。
廣瀬 僕も同じです。例えば、投げることができなければ滑り台が使えるなど、競技者がルールに沿うのではなく、ルールが競技者に沿っていくという発想が素晴らしく、学ぶことが多かった競技ですね。また、LGBTQの方などの問題提起もあり、改めて多様性について考えさせられました。ただ、やはり日本の皆さんにとっては、障がい者スポーツが身近な存在ではなかったという課題も見えた気がします。
世界の潮流となったSDGsフェアプレイで実現したい
諸藤 多様性を含め、今、世界の経済活動はSDGsが大きな潮流となっています。当社でも、サステナブル素材の展開を加速しており、繊維由来の再生ポリエステル繊維「レニュー(RENU)」やインドのオーガニックコットン、フィンランド発の革新的なセルロース繊維「クウラ(Kuura)」を中心に、サステナブル素材を起点とした持続的なバリューチェーンを構築しています。コロナ禍では、サプライチェーンの分断なども経験していますので、そのリスクを抑えて持続可能な企業活動を支えるという狙いもあります。廣瀬さんは、SDGsに関する活動は何か考えていらっしゃいますか。
廣瀬 アパレル関連では、アフリカの教育や雇用の創出を目的とした認定NPO法人で理事を務めており、ここを通じて株式会社 DOYAのアフリカの民族柄や伝統の織などを使った「クラウディ(CLOUDY)」というブランドに関わっています。実際に2020年の3月にはガーナを訪問し、現地の子どもたちとスポーツフェスティバルを開催するなど、アフリカの現状を自分の目で見るとともに楽しんできました。
また、2021年に新しいプロジェクト「TEAM FAIR PLAY」を立ち上げました。これは、アスリートと企業が協業して社会課題の解決を目指すプロジェクトで、そこには「ルールを守り、他社を尊重し、チームのためにベストを尽くす」というフェアプレイで社会をより良くしたいという思いがあります。社会課題には、環境問題や食、健康、地方創生など幅広い領域があり、当然SDGsも絡んでくるはずで、そこにスポーツやアスリートが果たせる役割があるのではないかと思っています。
諸藤 フェアプレイ、良い言葉ですね。当社も企業理念に「三方よし」を掲げ、中期経営計画として「SDGsへの貢献・取組強化」にも取り組んでいますので、廣瀬さんのお考えとは通じ合えるものが非常に多いです。具体的にはどういった形で社会課題の解決を目指していらっしゃいますか。
廣瀬 例えば、地域ごとに「おらがチーム」があればいいなと。子どもたちにスポーツをさせてみたいと思う場が身近にあって、そこを拠点にたくさんの人が交流し、みんなで幸せになれたらいいですよね。そして高齢者も巻き込むことができれば、健康寿命を延ばすことにも貢献できて、社会課題解決にもつながりそうです。
諸藤 まだまだやりたいことがたくさんありそうですね。中長期的にトライしてみたいことはあるのでしょうか?
廣瀬 これからも、アスリートやスポーツを軸に活動する姿勢は変わりませんが、日本の伝統的な文化や良いモノを世界へ伝えたいという気持ちも強いので、将来は日本を世界へ発信するような仕事もしたいと思っています。
諸藤 やはりアスリートの皆さんの高いポテンシャルは、ビジネス界においても十分に通用するものですね。スポーツは、いろいろな可能性を秘めていることが改めてわかりました。当社にはスポーツが好きな社員がたくさんいますし、スポーツ関連ビジネスには今後も引き続き注力していきますので、ぜひ、何か一緒にスクラムを組んでいけたらいいですね。本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
