Managemant Eye
リアル店舗の「高揚感」こそが競争力
「人と時代をつないでワクワクする売場をつくり続ける」

竹内 徹氏
伊藤忠商事株式会社の石井敬太社長COOからのリレーとなりますが、どのような交流があるのでしょうか。
小学生の頃から家族ぐるみの付き合いがあり、今でも「敬太」と呼んでいます(笑)。早稲田大学高等学院時代は同じラグビー部員として初めて全国大会である花園出場を果たし、大学時代もともに過ごした友人です。社会人になってからは、それぞれが海外赴任などで会えずにいた時期もありましたが、たまに会う機会があると会わなかった時間をすぐに埋められるのがうれしいですね。
「人と時代をつなぐ三越伊勢丹グループ」という考え方について教えていただけますか。
百貨店は、売場を通して商品という百貨にお客様を巡り合わせることが役割です。商品については今も目利きが欠かせませんし、お客様においても現在は求めるものが細分化していますので、マーケットをどう見るかという目利きも問われます。
売場は最強のマーケティングの場であり、百貨店のようなリアルマーケティングの良さは、次なる消費動向の兆しを捉え、仮説を立てて売場をつくり、実際のお客様の反応を見ながらその答え合わせができることにあります。幸い、伊勢丹新宿本店では年間で2,500万人、三越銀座店では2,100万人のお客様にお越しいただいていますので(※コロナ前)、時系列で定点観測をすることでマーケットの変化が見えてきます。昨今ではサウナやフェムテックなど、これまで百貨店で扱うことのなかった分野の催事を催すなど、時代に即した新しいマーケットの流れを見極めながら、商品とお客様が巡り合うような仕掛けを常に考えています。
百貨店ならではの魅力についてお聞かせください。
百貨店のリアル店舗を考える上で、5つのポイントがあると考えています。それは「商品」、「接客も含む販売サービス」、「店舗環境」、「イベントやプロモーション」、「売場での商品の見せ方」で、これらをどう展開するかで、お客様が目の前に広がる売場に心躍らせ、気持ちを高ぶらせながらお買い物ができるかどうかが決まります。この「高揚感」こそが百貨店の競争力であり、5つのポイントはそのためのツールなのです。
例えば、伊勢丹新宿本店ではブランドからバッグだけを1階に集めて陳列するという「売場での商品の見せ方」を実施しています。今では他店でも見かける方法ですが、開始当時はかなり斬新なものでした。実現するためには、ヨーロッパに渡ってラグジュアリーブランド各社に直接交渉し、日本では一つのブランドにこだわらないお客様が多く、年2回のボーナス時に高額商品を買うといった購買特徴があることを力説。実際、ブランドによっては1階だけでブティックの2倍の売上を記録するなど成功事例となりました。お客様がストレスなくブランドを横断して商品を選べることで生まれる「高揚感」、それが成功に導いたのだと思っています。
今後の展開についてお教えください。
伊勢丹新宿本店と三越日本橋本店は、当グループにとってのフラッグシップ店です。将来的には周辺の再開発などに合わせて大改装をする予定で、各店舗の顧客プロファイリングに合った仕掛けを考えています。一方で、サテライトショップを含めて全国に約120の店舗がありますので、店舗のフロア構成を工夫しながら、デジタルツールも活用することで、地方におけるタッチポイントとし、これまでリーチできていなかった全国の潜在的なお客様にも広く商品を届けていきたいと考えています。
これからも「高揚感」をキーワードに、見て、触れて、ワクワクできるリアル店舗をつくり続けていきたいと思います。

