次なる消費リーダー「Z世代」を狙え!
CASE❸ 株式会社yutori
SNS時代に最適化したコミュニティベースのブランドづくり
Instagramメディア『古着女子』を2017年に立ち上げた片石貴展氏が、その翌年に設立した株式会社yutoriは、「ナインティナインティ(9090)」、「センチメーター(centimeter)」をはじめ10を超えるD2Cブランドを展開するアパレル企業だ。SNSを活用したブランドコミュニティの形成に長け、Z世代を中心に絶大な支持を集めている同社は、株式会社ZOZOの傘下に入った2020年以降も精力的に事業の幅を広げている。

片石貴展氏
株式会社yutori 代表取締役社長
原点は古着専門のSNSメディア
起業のきっかけとなったInstagramメディア『古着女子』は、当時盛り上がっていた古着カルチャーの受け皿になるメディアやコミュニティをつくることが立ち上げの動機でした。この頃からアパレルビジネスの構想があり、yutoriを設立してからは90年代のストリートスタイルをベースにした「ナインティナインティ」をはじめ、20以上のブランドを立ち上げてきました。その時々で自分たちが好きなもの、やりたいことを刹那的に形にしてきた側面もありますが、もともと好きだった古着からスタートしている自分たちのコアにあるのは、かつて流行していたものを現代的に解釈していくことであり、同時に反骨精神のようなストリートのマインドを洋服を通して表現していくことだと考えています。
ハッシュタグで考えるブランド像
ブランドをつくる上で意識しているのは、特定のスタイルや考え方を持つコミュニティの輪郭を、洋服を通じて浮かび上がらせていくことです。「スケート」や「ヒップホップ」というファッションのジャンルから、「生意気」など抽象的な言葉まで、SNSのハッシュタグを考えるようにブランドのテーマを設定していくことが多いです。
当社が展開するD2Cブランドにはラグジュアリーブランドにおけるアイコニックなデザイナーのような存在は必要ではありません。もちろん、つくり手はブランドを構成する大切な要素ですが、ユーザーがD2Cブランドを判断する主な基準はSNSの画像であり、さまざまな画像が流れてくるタイムラインの中でいかに目を引くビジュアルを総合的につくっていけるのかということが重要だと考えています。
共感やわかりやすさを重視する世代
Z世代は、コンテンツの消費速度が非常に速く、新しいものに興味が軽やかに移っていく姿勢を持っています。そのため、コンテンツを提供する側には、常に予想を裏切るような驚きを提供し、ユーザーを飽きさせない工夫が求められます。また、ファッションの情報源がプロによってキュレーションされていた雑誌から、誰もが発信できるSNSに変わった時代を生きるZ世代は、良くも悪くも共感やわかりやすさを重視します。そうした世代に向けたビジネスにおいては、多くの人に共通するもので、さらに自分自身もリアリティを感じられる要素を見出していくことが大切だと考えています。
現在リブランディングを進めている当社では、ビジョンを刷新するとともに新しい事業戦略として「アジア×ストリート」を掲げます。反骨精神を持ったアジア中の人たちに自分のアイデンティティを強化してもらえるような洋服を提供し、アジアで一番のストリートブランドになることがこれからの目標です。

