次なる消費リーダー「Z世代」を狙え!

メディアから生活動向を探る【MEDIA SCOPE】『日経クロストレンド』

Z世代特有の消費行動に注目

昨年末、『日経トレンディ』と『日経クロストレンド』により発表された「2021年ヒット商品ベスト30」。その中にはZ世代が発端となって消費を押し上げた商品やサービスが少なくない。マーケティング専門のオンラインメディア『日経クロストレンド』の編集長 佐藤央明氏に、Z世代と2021年の消費トレンドについてうかがった。

『日経トレンディ2021年12月号』

圧倒的な情報量を処理するZ世代

「2021年ヒット商品ベスト30」で1位となったのが、「TikTok売れ」だ。短尺動画のプラットフォームTikTokは、利用者の嗜好に合いそうな動画をアプリが表示してくれるレコメンド機能が特徴で、2021年は若い世代によるTikTokで人気となった商品がヒットしたという。佐藤央明氏は、「12位の『格安越境EC』は、韓国コスメやファッションの流行で若い世代の利用が加速しています。気に入ったものを購入するためなら国境も気にしないというZ世代の特徴が表れています」と振り返る。また、4位の「昭和・平成レトロブーム」もZ世代から肯定的に受け入れられたことで、ブームが拡大した。

こうした消費トレンドについて佐藤氏は、「我々を取り巻く情報量はここ数年で600倍にも及ぶといわれる中、Z世代はそこから効率よく情報を選択することに長けています。『タイパ(タイムパフォーマンス)』が悪いことを好まないので、TikTokのような効率よく情報処理できるツールが重宝されます。またZ世代は親子関係が良好で、親と洋服を共有したり、親が親しんだフィルムカメラやレコードなどにも好意的。そうした背景が実体験のない時代へのノスタルジーを喚起し、レトロブームへつながっているのでは」と考察する。

2021年ヒット商品ベスト30 1位〜10位
Z世代が発端になり、新たな消費行動が開花した2021年。『日経トレンディ2021年12月号』ヒット商品ベスト30より。

「記号」消費より「暗号」消費

消費志向をさらに分析すると、「人と同じものは着たくないが、目立ちたくもないのがZ世代。高級車や高級ブランドがステータスのアイコンだった時代を『記号』消費というなら、自分の価値観に合うブランドや商品を求め、周りだけがわかればいいという『暗号』消費の世代がZ世代といわれています。そのため、ファッションでもD2Cブランドが好まれます」と佐藤氏。

また、手間をかけることやリアル店舗での買い物など「体験」を大事にすることも特徴の一つだという。「『ケイト』の『リップモンスター』という口紅は、『欲望の塊』、『2:00AM』、『ラスボス』など色名が独特。三菱鉛筆の『ユニボール ワン』も『ねこじゃらし色』や『焼きりんご色』などがあり、どちらも情緒に訴え、使ってみたいという体験へ導くことで消費へとつなげています。これからは体験をキーワードに、自ら情報や商品を取得したいと思わせる仕掛けが、Z世代へのアプローチの一つなのかもしれません」と佐藤氏は分析する。