女性がより活躍しやすい時代へ~フェムテックの現在~

【COLUMN】株式会社日立コンサルティング

女性活躍社会を実現するフェムテック市場の現状と今後の展望

近年、国内においても大きな関心を集めているフェムテックには、どのような定義や成り立ちがあるのだろうか。経済産業省の委託事業として行ったフェムテック領域の調査をはじめ、フェムテック・女性活躍推進分野の調査、事業企画推進に取り組んでいる株式会社日立コンサルティングの担当者に、業界の動向や市場の可能性、社会に与える影響などを取材した。

株式会社日立コンサルティング スマート社会基盤コンサルティング第2本部 マネージャー 神谷浩史氏/シニアコンサルタント 間杉奈々子氏

株式会社日立コンサルティング スマート社会基盤コンサルティング第2本部

マネージャー 神谷浩史
シニアコンサルタント 間杉奈々子

投資家向けの言葉として登場

フェムテックは、Female(女性)とTechnology(テクノロジー)をかけ合わせた造語で、女性の健康課題をテクノロジーで解決する製品やサービスの総称です。2013年頃、月経管理アプリを開発した海外の女性起業家が、資金調達にあたって注目されるためにこの言葉を使ったことが始まりとされています。

フェムテックは、女性のライフステージに沿って「月経」、「妊娠・不妊」、「産後ケア」、「更年期」、「婦人科系疾患」、「セクシャルウェルネス」の6分野に分けられます。製品やサービスの分類として、「専門家相談/サポート」、「健康管理/トラッキング」、「簡易検査キット」、「医療支援」などがありますが、フェムテックには確立された定義は存在していないのが現状です。

目立つ大手企業の業界参入

フェムテックが注目されるようになった背景には、女性の活躍機会の増加とともに健康課題に関する発信が増えたこと、男女格差意識の高まり、IoTセンサーやスマートフォンの普及、女性管理職比率に関する数値目標設定などさまざまな要因があります。日本においては2000年頃から月経管理サービスなどが展開されていましたが、フェムテックという言葉が浸透し始めたのはこの1、2年のことで、昨今は女性活躍の実現を掲げる政府も、その手段としてフェムテックを推進する動きを強めています。

事業創出、福利厚生それぞれの観点からフェムテック領域に参入する大企業も目立っています。衣料業界などではフェムテック要素を加えることで製品に付加価値を高める動きも見られ、それらがメディアに取り上げられることで生活者の認知も広がっています。

フェムテック製品・サービスの分類
健康管理から医療支援まで、日々の暮らしに密着した製品やサービスが広がり始めている。

フェムテック普及に向けた課題とは

黎明期にあるフェムテック市場には、サービスや製品に業界統一の品質基準が定められていないという課題があります。製品によっては薬機法で定義された医療機器として申請することで安全性・信頼性を担保し、効能・効果をアピールすることもできますが、審査に時間とコストを要することや販路・利用者が限定されてしまうことなどデメリットもあります。こうした中で、吸水ショーツなどの分野では業界団体が独自の品質基準を設ける動きも見られます。また、月経や不妊治療など女性の健康問題のタブー視や知識不足なども普及の妨げとなっており、男女問わず正しい知識を発信していくことや、プライバシー担保などの工夫がフェムテックに関わる企業に求められています。

当社としては、社内への啓発活動やフェムテック市場の成長促進支援を通じて、国やSDGsが推進する女性活躍社会の実現に貢献し、さらにその先には、性差分析を踏まえた研究開発や商品設計を行う「ジェンダード・イノベーション」の概念を普及、啓発していきたいと考えています。