「シニア」とは呼ばせない! これからのリタイア世代を掴め

CASE❶ 株式会社アダストリア

60代女性のリアルな声と向き合い世代の気分を体現する「素敵な日常着」

「グローバルワーク(GLOBAL WORK)」、「ニコアンド(niko and ...)」など30を超えるブランドを、国内外に約1,400店舗で展開する株式会社アダストリア。ヤングカジュアルをブランドポートフォリオの中心にしてきた同社だが、お客様の人生に長く寄り添う、幅広い年代、カテゴリーのブランド開発にも注力しており、華やかな色や柄で注目される「ウタオ(Utao:)」もその一つだ。同社に、立ち上げの経緯や商品コンセプトなどを取材した。

株式会社アダストリア スタディオクリップ営業本部長 新井隆広氏

新井隆広

株式会社アダストリア スタディオクリップ営業本部長

60代女性に向けた新ブランド

当社では、2018年より「Play fashion!」をミッションに掲げ、ファッションと人生をより楽しめる選択肢を提案することを目指してきました。長らく当社の主な顧客層は20代~30代でしたが、日本において女性人口の半数以上が50代に突入した今、こうした世代と向き合うことが不可欠だと考え、2019年に50代向けブランド「エルーラ(Elura)」を立ち上げました。さらに、今後ますます人口が増える60代に向けて、30代~40代に支持されている「スタディオクリップ(studio CLIP)」のコンセプトを踏襲したブランドの開発にも着手しました。

しかしながら、マーケット調査を通じて、現在の60代女性は「スタディオクリップ」のようなナチュラルなテイストよりも華やかなファッションを好むことが見えてきました。それを受け、60代女性から支持されている雑誌『素敵なあの人』(宝島社)の協力なども得ながら、同誌の読者「素敵世代」に向けた新しいコンセプトのブランド「ウタオ」を2020年にデビューさせました。

第二の青春を楽しむための服

「ウタオ」のターゲットである60代の女性は、ようやく子どもが自立し、自由になれる時間が増える年代です。また、『素敵なあの人』編集部との情報交換を通じて、若い頃に旅行や買い物などを楽しんできた世代だからこそ、第二の青春を謳歌したいという考えが強いことがわかってきました。そのため、「華やかな柄」、「鮮やかな色」、「際立たせのベーシック」という3つのポイントを設定し、コンサバティブなスタイルをベースに、若々しく明るい気分を表現することをブランドのコンセプトに据えました。

この世代はファッションに対して、明るさや若々しさを演出してくれる「情緒」的な面と、体形の悩みをカバーしてくれる「機能」的な面を求めています。その中で「ウタオ」では、季節感を持った明るい色や柄を積極的に取り入れるとともに、被服体型学の専門家らの協力を得た商品の開発などにも取り組んでいます。

世代特性を意識したブランド発信

現在の主な販路は、「スタディオクリップ」店舗内でのポップアップ販売と公式WEBストアです。ECの売上は全体の40%程度でスマートフォンからの購入は他の世代から比べて少なく、またメールではなく電話でのお問い合わせが多いことなどの特徴が見られました。それらを踏まえ、現在は定期的にテレビ通販での販売を行っており、カタログ通販への販路拡大の準備も進めています。

売上や業界内の評価から、確かな手応えを感じていますが、今後はさらなるブランドの認知拡大が不可欠であり、そのために単独店の立ち上げなどを検討しています。今後50代、60代の市場はさらに広がり、ブランドも多様化していくことが予想される中で、自社のバリューチェーンやネットワークを強みにしながら、これまで以上にお客様のリアルな声と向き合い、この世代におけるナンバーワンブランドになることを目指していきます。

60代女性向けのブランド「ウタオ」
手に取りやすい価格帯の華やかな日常着を提案。洗練されたデザインの中には、体形カバーなど機能性も考慮されている。
株式会社日比谷花壇とのコラボレーション
株式会社日比谷花壇とのコラボレーションでは、着るだけで気分が上がる華やかなアイテムが揃う。