Managemant Eye

先駆的に取り組み、流れをつくる

「物事の本質を捉え、概念的思考でイノベーションを」

コニカミノルタ株式会社 専務執行役 プレシジョンメディシン事業担当 兼 REALM IDx, Inc. 会長 藤井清孝氏
コニカミノルタ株式会社 専務執行役 プレシジョンメディシン事業担当 兼 REALM IDx, Inc. 会長
藤井清孝

リレー形式で展開しているこの企画、今回は株式会社総合車両製作所 代表取締役社長の西山隆雄氏からバトンが渡されました。

西山君は高校時代の同級生で、ともにバレー部に所属し、彼がセッター、私はアタッカーで、いいコンビでした。大学を卒業後は、彼は当時の国鉄(現JR東日本)へ、私はマッキンゼー・アンド・カンパニーへ就職しました。その後、私がハーバード大学在学中にボストンで再会し、以来、同窓生で集まってゴルフや食事をする仲間です。

御社のプレシジョンメディシン事業についてお聞かせください。

当社は、1873年に創業し、自社開発のレントゲンフィルムや国産初のカラーフィルムを発売したコニカ株式会社と、1928年創業で、国産カメラ1号機を発売したミノルタ株式会社が、2003年に経営統合した会社です。その後、イメージング技術を基盤に、時代の要請に応じてオフィスや印刷、ヘルスケアやインダストリーの各分野におけるソリューションを提供し続けてきました。

イメージング技術は人体や疾病といったヘルスケア分野とは非常に相性がよく、同時に、当社にはお客様である医療機関を通じて膨大なデジタルデータを収集できるという強みがあります。そのデータを精緻に解析し、より付加価値の高い製品やサービスを提供していくことが当社の役割です。プレシジョンメディシン事業は、遺伝子検査により人体を分子レベルで診断し、適切な投薬・治療の支援、治験・創薬の支援を行うもので、画像診断システムや医療のデジタル化などとともに、ヘルスケア分野の一翼を担っています。画像診断は、疾病という人体で起こった結果を見ることであり、遺伝子検査による診断は、何が疾病の原因なのかを知ること。画像診断に遺伝子診断が加わることで、疾病の早期発見、早期診断を可能にし、一人ひとりの未来を診るという個別化医療の発展に寄与するのがプレシジョンメディシン事業です。

これまで多くの企業経営に携わられていますが、どんな思いでマネジメントされてきたのでしょうか。

私が関わってきた企業は、ほぼ新しい産業分野でした。言い換えれば、日本に根付くと思うことに先駆的に取り組み、自ら流れをつくることが仕事を選ぶときの軸になっています。当社が2017年に米国の遺伝子診断会社の買収をした際に尽力したのも、それが医療にとって先駆的でインパクトのある取り組みだったからです。

また、優秀な人財を集めることもマネジメントにとっては重要です。新しいことをやるときは、「人の役に立つ」、「社会や人々の暮らしが良くなる」といった大きな課題を解決したいという志と覚悟を持った、その事業に情熱のある人が集まらないと進めることができません。一方、企業は「あの会社で、あの事業をやりたい」と思わせることも大事で、そこに自主的に参加する人財が集まることで、企業は強くなっていくのだと思います。

ルイ・ヴィトンでも手腕を発揮されていました。

「お客様の言うことは聞くな」がルイ・ヴィトンの哲学です。なぜなら、お客様の言うことを聞けば、手頃で使いやすく、みんなが欲しいものはつくれますが、ルイ・ヴィトンが目指すのは、お客様を驚かすこと、感動させることにあるからです。すでに人が持っている答えを聞くのは、決してイノベーションにつながらないということを学びました。しかし、根本的なニーズは理解すべきです。世の中には顕在化していないニーズのほうが多く、オンラインストアをコアビジネスにしたアマゾン、音楽配信サービスを普及させたアップルなどは、欲しいものを早く簡単に購入したいというニーズを新たに掘り起こした好例でしょう。イノベーションには、物事を本質で捉え、柔軟な発想で考える概念的思考が必要となります。経営者自身もそうした思考を持つことが、マネジメントにとってはたいへん重要であると考えています。

デジタルX線動画撮影システムにより生体機能の「動き」の見える化を実現
デジタルX線動画撮影システムにより、「単純X線検査は静止画撮影」という従来の常識を変え、生体機能の「動き」の見える化を実現している。
個別化医療の発展
分子レベルの診断を行う遺伝子検査サービスや創薬支援サービスにより、今後は個別化医療の発展が期待される。