メタバースが切り拓くファッションビジネスの未来
【Insight】— Special Feature —
アパレル企業の有する資産がメタバースに新たな時流を生み出す
「バーチャルマーケット」は、出展者と来場者がアバターで参加し、デジタルとリアルの商品を売買したり、参加者同士でコミュニケーションしたりできる、世界最大のVRイベントだ。アパレル関連企業の出展も多く、メタバースにおけるファッションの可能性を模索する場にもなっている。主催する株式会社HIKKY(ヒッキー)のCEO 舟越 靖氏に、イベント誕生の経緯やファッションとの親和性、今後の展望などを聞いた。

舟越 靖氏
株式会社HIKKY CEO
世界最大規模のVRイベント
VRやメタバースが世間から注目される以前から、私の周囲にはこの領域で熱心にものづくりをしているエンジニアやクリエイターたちがいました。彼らが魅了されているこの世界に可能性を見出し、より多くのつくり手が作品を発表できる場をつくろうと考えたことが「バーチャルマーケット」の始まりです。クリエイターがものづくりをしやすい環境を整え、彼らの期待値を高めることによって参加者を増やしてきた「バーチャルマーケット」には、いまや個人商店から巨大ショッピングモール、エンターテインメントスペースまであらゆるものが展開され、一つの街のような様相を呈しています。ここで経済活動を行うクリエイターも増えており、メタバースにおけるテストマーケティングのために出展する企業も少なくありません。
メタバースとファッションの相性
臨場感がある3D空間の中で親密なコミュニケーションを楽しめることが、メタバースの大きな魅力です。その点、コミュニケーションツールともいえるファッションは、メタバースと非常に相性が良い分野です。メタバース上では洋服に限らず、アバターおよびそのポーズや動作などもファッションと捉えることができ、これらのデータが売買される状況も生まれています。まだ正解が何かといえるものがない黎明期だからこそ、自由な発想から新しいファッションのフォーマットを考え、多くの人たちを惹きつけるクールなものを提示していくことが、メタバースに新たな時流をもたらすカギになると思います。
メタバースには既存のあらゆる商材の顧客単価を向上させる可能性もあります。なぜなら、アミューズメントパークに行ったときのような圧倒的な体験をメタバース上につくり込むことによってユーザーは高揚し、その場で商品を購入したり、体験を周囲に自慢したりしたくなるからです。特にハイブランドをはじめ、職人的なものづくりによって商品の価値を高めてきたアパレル企業には、ワクワクするような体験や世界観をつくり込むことでファンを増やすことができるはずです。
HIKKYが描くメタバースの未来像
当社は、特定のデバイスやアプリを介さずにスマホ一つでアクセスでき、プラットフォームの壁を越えて自由に行き来できるメタバース環境を「オープンメタバース」という言葉で表現しています。これを実現するために、特定のプラットフォームに依存せず、独自ドメインのVR空間を自前で構築できる「Vket Cloud(ブイケットクラウド)」というシステムを提供しており、これらを用いてメタバースサービスを構築・提供するクリエイティブのパートナーも募っています。こうした環境を整備していくことによって、ユーザーに幅広い選択肢を提供し、あらゆる事業者やクリエイターに等しくチャンスが与えられる世界をつくっていきたいと考えています。
