東京の魅力再発見~持続可能な都市の未来
CASE❶ NPO法人 銀座ミツバチプロジェクト
銀座のビルの屋上から環境と共生する都市をデザインする
環境と共生する都市の在り方を模索し、15年以上にわたって銀座のビルの屋上で養蜂活動に取り組んできたNPO法人 銀座ミツバチプロジェクト。いまや年間2トンもの蜂蜜を産出しているという。街の事業者と共に、地産地消の取り組みを推進し、子どもたちへの環境教育や都市と農村の交流にも力を入れるなど、世代や職業、地域を超えて活動の輪を広げてきた同プロジェクトの副理事長に取材した。
田中淳夫氏
NPO法人 銀座ミツバチプロジェクト 副理事長
銀座の地産地消を促進する
もともと私は、銀座にある紙パルプ会館で貸し会議室の管理・運営に携わりながら、銀座の街や食などに関する「銀座の街研究会」も開催していたのですが、その中で養蜂家の藤原誠太さんと出会いました。藤原さんは養蜂ができるビルの屋上を探しており、私は場所だけをお貸しするつもりでしたが、一大消費地である銀座で天然の蜂蜜を生産することに魅力を感じ、気づけばプロジェクトの中核に入っていました。
当初は都心で養蜂をすることを心配されていた方もいらっしゃいましたが、銀座の企業や店舗のオーナーの中には面白いこと、意義あることに対して敏感に反応する方が多く、また、ミツバチは人がむやみに攻撃したりしない限りは刺さないということも理解いただき、徐々に街の皆様に支えていただける体制ができていきました。銀座にはバーテンダーやシェフなど世界レベルの技術を持つ人たちも多く、百貨店や化粧品会社、飲食店などさまざまな事業者の方たちが銀座の蜂蜜を使った商品を次々とつくり出し、地産地消の動きが広がっていきました。
屋上緑化による都市の里山
街の事業者の方には、プロジェクトの意義をご理解いただき、ミツバチのための花や人が食べられる植物を育てる屋上緑化などへのご協力も促してきました。地元中央区も積極的に取り組みを続けた結果、この10年間で中央区の緑被率は8%から11%にまで高まり、都会の中の里山のような風景が少しずつ形成されてきました。
また、銀座の周辺には皇居や日比谷公園、浜離宮などがあり、実は緑が豊かであることや、ミツバチを取り巻く生態系や生命のつながりなど、これまで気づいていなかったものが見えてくるようになりました。これらを自然と触れ合う機会が少ない都心の子どもたちに伝えていく環境教育にも力を入れており、近隣の保育園や小学校での出張授業なども行ってきました。
国内外に広がるネットワーク
蜜源となる花の苗などを地方の生産者からご提供いただくようになったことを機に、さまざまな地域とのつながりが生まれ、これまでに都市と農村の交流イベントや物産フェアなども行ってきました。また、現在は100を超える団体が全国各地でミツバチプロジェクトを展開しており、東日本大震災の際には全国の仲間たちが福島に支援物資を送るなど、顔の見えるつながりの中でお互いに支え合う関係性が築かれています。
今後も私たちは全国の人と人、地域と地域をつなぐグリーンインフラとして、自然と共生するライフスタイルや地域の在り方を発信していきたいと思っています。コロナ禍以前は外国からのツアーで見学・視察に訪れる方たちが絶えなかったように、銀座や東京は世界に向けて発信する力を持つ場所です。世界人口の半数以上を都市住民が占める今、私たちの活動を世界に発信していくことが、都市が抱えるさまざまな課題解決の一助になればと考えています。
