東京の魅力再発見~持続可能な都市の未来
CASE❷ 東京ニットファッション工業組合
伝統の技術と地の利を生かし世界から注目されるニット産地に
江戸時代から手編みの靴下や下着などのニット製品がつくられ、国内ニット産業発祥の地としての歴史を持つ東京東部エリア。長きにわたって日本のアパレル産業を支えてきたニット産地が時代とともに衰退する中、2017年よりスタートしたブランディング事業が「TOKYO KNIT(トウキョウニット)」だ。同事業を通じて、産地復興を目指し、国内外で精力的な活動を展開する東京ニットファッション工業組合の理事長に話を聞いた。

南木健利氏
東京ニットファッション工業組合 理事長
国内ニット産業発祥の地
東京ニットファッション工業組合は、墨田区を中心とした東京東部で、メリヤス生地、セーターやカットソーなどの製品、関連する資材などを製造する中小企業が中心となった工業組合です。この界隈は江戸時代の下級武士たちによってニット製品がつくられていた歴史があり、明治時代にはニット産業発祥の地となりました。戦後、東京がファッション文化の中心地となったことで産地は活況を呈し、組合にも最盛期には数千の企業が加盟していました。しかし、時代とともにモノづくりの拠点が地方に移り、海外製品の台頭なども相まって産地は衰退し、現在の組合員は161社にまで減少しています。こうした中、20代から40代までの青年部が中心となって、生き残り戦略を探るための勉強会が開かれるようになり、ニット産地としての付加価値を向上させるためのブランディング事業「TOKYO KNIT」が立ち上がりました。
活動を通して得られた成果
東京都からの支援を受けてスタートした「TOKYO KNIT」では、一定の品質基準を設けたブランド認証制度をつくるとともに、各社が技術を磨くための支援を行ってきました。さらに、東京でマーケティングやブランディングの仕事に従事する方々へのヒアリングや海外視察などを行い、2020年1月にはイタリアの見本市「PITTI IMMAGINE UOMO」にも出展しました。コロナ禍以降は、ECやSNS、YouTubeなどオンラインツールの活用にも積極的に取り組み、国内外問わず私たちのモノづくりの技術や情熱を伝えるための発信を続けてきました。
活動を通じて、参加者の意識も大きく向上し、さまざまな成果も生まれています。17社からスタートし、現在34社が参画している「TOKYO KNIT」ですが、今後はさらに仲間を増やすとともに、技術力のみならず、切磋琢磨していくことで、産地としての多様な魅力をアピールし、いつの日か東京を世界中から人々が集うニット産地にしたいと考えています。
東京の産地としての強みを生かす
東京で活躍するファッションデザイナーとのコラボレーションも継続的に行ってきましたが、一様に技術力の高さ、コミュニケーションや納品の速さを評価してくださっています。また、さまざまな人や情報が集まる東京の産地には、トレンドを理解し、新しい感性を生かしたモノづくりができる強みもあります。
消費地に近い東京の産地には、市場の動向を見ながらさまざまな情報をモノづくりに反映できる機動力があり、適時・適量生産を実現できる環境があると考えています。すでに「TOKYO KNIT」としてサステナビリティを意識したアクションを始めていますが、多くの繊維・アパレル企業が集まる東京には、こうした動きを広げていきやすい地の利があります。大量生産・大量廃棄という課題と向き合い、業界のネガティブなイメージを払拭していくモデルケースをつくれるのではないかと思っています。

