東京の魅力再発見~持続可能な都市の未来

【COLUMN】

人的資源を生かして都市の魅力を再構築する

新型コロナウイルスの感染拡大は、グローバリゼーションがもたらす弊害や都市の脆弱性を顕わにし、東京においても地域での暮らしやコミュニティに改めて目が向けられている。昨今の気候変動などによって災害リスクも高まる中、持続可能な都市の姿とはどのようなものなのか。環境政策、持続可能な地域づくり、環境学を専門とする武蔵野大学 工学部 環境システム学科教授、白井信雄氏に聞いた。

武蔵野大学 工学部 環境システム学科 教授 白井信雄氏

武蔵野大学 工学部 環境システム学科 教授

白井信雄

持続可能な地域づくりは住民主体が不可欠

日本における持続可能な地域づくりの取り組みは1980年代に始まり、当時は生活公害などの環境問題を都市の構造や循環システムで解決することが目指されていました。そして、地域経済の衰退が目立つようになった2000年代以降は、トレードオフだと考えられていた環境と経済の両立に重きが置かれるようになります。さらに少子高齢化などの地域課題が顕在化している近年は、「環境」、「経済」、「社会」がバランス良く統合された都市の在り方が志向されるようになり、内閣府による「SDGs未来都市」などの施策はその一例です。

各自治体も持続可能な地域づくりの計画を進めていますが、その実現には住民の主体性が不可欠です。地域の自然や文化を守ろうとする住民の自発性が推進力になるケースが多く、公害や自然災害のリスクが高い地域に先進的な事例が多いこともその現れでしょう。

進みつつあるリローカリゼーション

東日本大震災や新型コロナウイルス感染症などの出来事は、食糧やエネルギーなどさまざまな資源を外部に依存する東京という都市の脆弱性を顕わにしました。都市生活による孤立化、環境の変化に対する危機感や備えの不足、過度な交流密度などが災害リスクを高めている中、地域内で支え合いながら安心して暮らせるようなレジリエントな都市の在り方が問われています。

パンデミックによってグローバリゼーションの弊害が顕在化したことで、自分たちが暮らす地域や近隣との関係に目を向けるリローカリゼーションの動きが世界的に加速しています。パリやポートランド、メルボルンなどの大都市では徒歩や公共交通機関を使って15~20分圏内で生活を完結できる地域づくりが進められています。

東京を中心に地方とつながり資源を循環

「地産地消」、「自給自足」を求める流れも強まっており、東京でも東京野菜や多摩産材などが注目されています。しかし、東京のような大都市において地域内の資源を循環させることには限界があり、地方とのつながりは不可欠です。都市と山村を物流だけでつなぐのではなく、人の往来を活発化させ、顔が見える関係の中で広義の「地産地消」を実践することが都市のウェルビーイングを高め、山村の交流人口を増やすことにもなるはずです。また、名古屋などで進められているフェアトレードタウン運動のように、「地産地消」に限らず、エシカルで持続可能な消費をまちぐるみで促進し、地域を変えていく取り組みも都市ならではのアプローチだといえます。東京の場合は、最大の資源が「人」です。「人」を中心に地方とつながり、資源を循環させていくことも大切だと思います。

持続可能な都市づくりには企業も重要な役割を果たします。災害リスクが高まる中、防災拠点などとして地域に貢献することもできるはずですし、ビジネスにおいてもグローバル市場だけを見るのではなく、地域に合わせたローカリゼーションや、ローカルビジネスをサポートするような取り組みを通して、都市の魅力を再構築することも重要になるのではないでしょうか。

東京
東京が持続可能な都市として機能するには、東京自身のリローカリゼーションが一つのキーワードになりそうだ。