Managemant Eye
「今とこれから」に意識を集中する
「社会の役に立つ人財を育てたい」

山田邦雄氏
リレー形式で展開しているこの企画、今回は株式会社クボタの代表取締役社長 北尾裕一氏からバトンが渡されました。
北尾さんとは高校の1年違いの同窓生で、共通の友人もいます。主に、プライベートな場でお会いすることが多いですね。クボタという素晴らしい会社のトップになられた今、これからのご活躍をますます期待しています。
御社の創業は1899年、歴史ある企業として知られています。
創業以来、当社は胃腸薬や目薬、外皮薬の製造と販売をコア事業として成長してきました。すでに創業してから123年となりますが、私は「歴史の古さ」にはそれほど価値はないと思っています。もちろん長年培ってきたブランド資産は大事ですが、やはり重要なのは「今とこれから」に意識を集中し、一人ひとりの健康に貢献するため、困難なことにも果敢に挑戦することでしょう。
例えば、2001年からは「オバジ(Obagi)」や「肌ラボ」といったスキンケア事業にも取り組み、国内はもとより東南アジアを中心とした海外での売上を伸ばしています。スキンケア事業への進出は、セルフケアの意識が高まり、自分で選ぶ時代が訪れたこと、また、当社の医薬品での研究が生かせて、医薬品を扱うドラッグストアというマーケットとの親和性が高いことが理由でした。
チャレンジということでは、再生医療事業への取り組みも挙げられます。病気やケガなどで失われた組織や臓器を再生させて働きを回復させる医療は、世界中で研究が進められていますが、当社にも生かせる技術があります。スキンケア製品や皮膚用製品の研究開発で培ってきた「細胞を扱う技術」、目薬を量産するための「無菌製剤技術」は、再生医療においても生かせると考え、2013年から本格的な研究を開始しました。
「食」を究極の健康要素と捉え、食事業におけるチャレンジもスタートしています。循環型農業や、生産から販売までを一貫して行う「第6次産業」化への取り組みも進めています。
「今とこれから」を考え、チャレンジするDNAはどのように培われているのでしょうか。
私は、社員自身がやりたいと思うことを大事にしたいと思っています。そのためには、社員自身がいろいろとチャレンジできる環境も大切です。そこで、社会貢献をしたいと考える社員のための社外チャレンジワーク制度や、就業時間の一部を他部署で従事できる社内ダブルジョブ制度などを設けました。
結婚や子育てというライフステージの変化は、働く上でも時間の使い方が問われます。また、子育てを卒業した年代の社員もこれからは増えていくはずです。性別や年代に関係なく、エネルギッシュに取り組む社員にはしっかりと活躍してほしいので、今後は、社員の成長や時代の変化に合わせてさまざまな仕組みを変えていくことも必要でしょう。
経営上、大事にされていることをお聞かせください。
これまで一般的には、会社では「会社の役に立つ」人財を育てることが人財育成とされてきましたが、私は本当の意味での人財とは「社会に役立つ」人財であるべきだと考えます。現代は社会課題が非常に多く、場合によっては当社を飛び出して社会課題の解決のために何か事業を興すというくらいの気概のある人財が育つことが望みです。
企業は、大きな意味で社会に必要とされなければ成り立ちません。そして「時代」に対応していくことが求められます。今、社会は何を求め、何が重要なのかを見誤らないこと。それが大事なのだと感じています。さまざまな世界に触れながら、これまで得た知見とともに、一人ひとりのウェルビーイングのお役に立つ。そんな会社として存在し続けたいと思います。

