今、ソーシャルビジネスを考える 〜社会の課題解決に挑む〜
座談会 | ||
[出席者] *社名50音順 |
合同会社クアッガ 代表 | 斉藤優也氏 |
---|---|---|
株式会社ヘラルボニー 代表取締役社長 CEO | 松田崇弥氏 | |
株式会社マザーハウス 取締役COO 兼 コーポレート部門統轄責任者 | 王 宏平氏 | |
[司会] | 伊藤忠ファッションシステム株式会社 ifs未来研究所 上席研究員 | 浅沼小優氏 |
[出席者](社名50音順) | |
合同会社クアッガ 代表 | 斉藤優也氏 |
---|---|
株式会社ヘラルボニー 代表取締役社長 CEO | 松田崇弥氏 |
株式会社マザーハウス 取締役COO 兼 コーポレート部門統轄責任者 | 王 宏平氏 |
[司会] | |
伊藤忠ファッションシステム株式会社 ifs未来研究所 上席研究員 | 浅沼小優氏 |
「ソーシャルビジネス」という言葉は、2006年にノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス博士が初めて用いたとされ、翌2007年には日本でも経済産業省によって研究会が発足した。かつては行政やボランティアが担うべきと見られていた、社会課題の解決にビジネスとして取り組むことにより、企業と社会の双方に利益をもたらす社会的企業が世界的に増加し、近年はSDGsやCSRの観点から注目する企業も急増している。本号の巻頭特集では、ソーシャルビジネスに取り組んできた各社による座談会を通じて、これからの企業と社会の関係性、持続可能なビジネスの在り方などを探る。
ファッション・アート・食の分野で活躍

伊藤忠ファッションシステム株式会 社 ifs未来研究所 上席研究員 浅沼小優氏(以下、浅沼):本日の司会を務めます浅沼です。私は、これまで社会デザインというフィールドを研究し、消費と社会的行為の関係性に着目をしてきました。ここ数年、日本においても社会性を意識したビジネス設計が注目されていますが、本日は「ソーシャルビジネス」の領域でご活躍されている皆様にお集まりいただきました。まずは、現在展開されているビジネスの概要や皆様の経歴などをご紹介ください。
株式会社マザーハウス 取締役COO兼 コーポレート部門統轄責任者 王 宏平氏(以下、王):株式会社マザーハウスは、私の大学の同級生でもある創業者の山口絵理子が、2006年にバングラデシュでスタートした会社です。かねてから貧困問題に関心のあった山口が、当時のアジア最貧国だったバングラデシュでジュートという麻の素材と出合い、現地の工場でバッグをつくったことが事業の始まりです。現在はバングラデシュの他、ネパールやインドネシア、インドなど計6カ国でバッグや雑貨、ジュエリーなどをつくっており、日本、台湾、香港、シンガポールの4カ国計43店舗で販売しています。私自身は政府系の金融機関で働いた後、6年前に当社に参画し、経理や人事、総務など主にバックオフィスの仕事を担当するようになりました。その後、生産から販売までのサプライチェーンを見るようになり、現在はCOOの仕事を兼務しています。
株式会社ヘラルボニー 代表取締役社長 CEO 松田崇弥氏(以下、松田):株式会社ヘラルボニーは創業から4年を迎える会社で、アートというIP(Intellectual Property)によるライセンスビジネスが事業の軸です。全国の福祉施設に在籍する、主に知的障害がある作家150人以上と契約し、お預かりした2,000点以上の作品データをさまざまなプロダクトに展開する他、オフィスの内装や空間のプロデュースなども行っています。当社は私と双子の兄が創業したのですが、きっかけは知的障害がある4歳上の兄の存在でした。兄が周囲から「可哀想な人」と決めつけられていることにずっと違和感があり、障害のある人に対する世間のイメージを変えたいという思いを持っていました。起業前に広告の企画会社で働いていて、キャラクターライセンスの仕事をしていたこともあり、ライセンスビジネスとアートは相性が良いのではと考え、27歳で起業しました。
合同会社クアッガ 代表 斉藤優也氏(以下、斉藤):合同会社クアッガは、パン屋さんで売れ残った「ロスパン」を会員に販売するECサイト「リベイク(rebake)」を運営しています。私は北海道の農家に生まれたのですが、子どもの頃に近所に高速道路がつくられ、畑の半分くらいがなくなってしまったことに憤りを覚えたんですね。それ以来、自然保護ということに関心を持ち、大学では生物多様性や有機農業などについて学んだのですが、経済活動と環境保護の両立という二律背反に限界を感じ、経済活動を通じて自然を守る方法を模索し始めました。そして、姉がパン屋を経営していたこともきっかけになり、売れ残ってしまったパンを買い取って路上で販売し、やがてそれを通販で行うようになりました。


