パークイノベーション〜公園が変える地域・暮らし・ビジネス〜
取材先 (社名50音順) |
コクヨ株式会社 | 経営企画本部 クリエイティブ室PR担当 | 安永哲郎氏 |
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働き方改革タスクフォース | 江崎 舞氏 | ||
株式会社ゼットン | 代表取締役社長 | 鈴木伸典氏 | |
三井不動産株式会社 | 商業施設本部 アーバン事業部 | 金澤佑香氏 | |
COLUMN | 株式会社日本総合研究所 | リサーチ・コンサルティング部門 シニアマネジャー | 板垣 晋氏 |
INTERVIEW | 株式会社ボーネルンド | 遊環境事業部 部長 | 美和竜秀氏 |
取材先(社名50音順) | ||
コクヨ株式会社 | 経営企画本部 クリエイティブ室PR担当 | 安永哲郎氏 |
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働き方改革タスクフォース | 江崎 舞氏 | |
株式会社ゼットン | 代表取締役社長 | 鈴木伸典氏 |
三井不動産株式会社 | 商業施設本部 アーバン事業部 | 金澤佑香氏 |
COLUMN | ||
株式会社日本総合研究所 | リサーチ・コンサルティング部門 シニアマネジャー | 板垣 晋氏 |
INTERVIEW | ||
株式会社ボーネルンド | 遊環境事業部 部長 | 美和竜秀氏 |
近年、公園に隣接した飲食店、商業施設、宿泊施設が続々とオープンするなど、都市における屋外公共空間としての公園が注目されている。屋内施設で集うことが難しくなったコロナ禍において、公園を舞台にさまざまなイベントなどが行われる機会が増え、地域コミュニティのハブとしての役割を果たすとともに、街に人を呼び込む賑わい創出の場としても機能している。本号では、地域との接点づくりや新しいサービス提供につながる可能性を秘めた公園の、利活用に取り組んでいる企業関係者や有識者への取材を通じて、ウィズコロナ時代の新たな場づくりのヒントを探る。
公園をハブに豊かな暮らしと新たなビジネス創出へ
官民連携で進める公園整備
2017年の都市公園法改正で、公園の整備・改修に民間企業の参入を促す「Park-PFI(公募設置管理制度)」が制定されたことなどが追い風となり、近年、都市公園を活用した官民連携事業の事例が急増している。2020年にオープンした「MIYASHITA PARK(ミヤシタパーク)」は、三井不動産株式会社が渋谷区との官民連携事業として渋谷区立宮下公園の再整備を進めたプロジェクトだ。同社商業施設本部の金澤佑香氏は、多様な用途を持つ公共空間である公園に民間事業者として関わるスタンスについて、「公共性と事業性の両輪を回していける公園の在り方について、自治体や地域の方々とやり取りを重ねた。開放的な憩いの場として地域に愛される公園であると同時に、従来の公園にはなかった刺激や賑わいが感じられる場所にもしていきたい」と語る。「MIYASHITA PARK」では、公園が持つ媒体価値を生かした広告事業の収益を芝生の維持管理に充てるなど、公共性と事業性を両立させる運営の在り方を模索している。
飲食事業を軸に業績を伸ばしてきた株式会社ゼットンは、2019年に都立葛西臨海公園のプロデュースを手がけたことを機に、公園再生プロジェクトを推進している。「単に公園という場所に出店するのではなく、多くの人たちで賑わう公園そのものをつくることを目指している。これまでの事業で得たノウハウを生かし、公園というパブリックスペースでマネタイズする手法やビジネスモデルを確立していきたい」と語る同社代表取締役社長の鈴木伸典氏は、公園を軸にした新しい企業経営の在り方を追求していく構えだ。公園という自然資源を最大限に生かしながら、経済、環境、地域の好循環を生み出す事業づくりに取り組んでいる同社は、公園活用におけるビジネスモデルを、大学をはじめとする全国各地のオープンスペースに展開していく構想も温めている。
企業の姿勢を発信する場にも
オフィスビルの一部を公園として街に開くアプローチで注目されているのは、コクヨ株式会社が2021年にリニューアルした施設「THE CAMPUS(ザ・キャンパス)」だ。同社経営企画本部 クリエイティブ室の安永哲郎氏は、「自社の資産を街や社会との関係を深めるために活用するという考え方が前提にあったからこそ、このような施設をつくることができた」と振り返る。同施設には、オフィス機能に加えて、公園やショップ、コーヒースタンドなどのパブリックスペースが設置されている。同じく施設づくりに携わった働き方改革タスクフォースの江崎 舞氏が、「つながりを持つことが難しくなったコロナ禍に、安全に集まることができる屋外空間をつくれたことは大きかった」と話すように、社内外問わずコロナ禍でも人々が集える貴重な空間として機能し、さらに夜間の安全性向上など地域にさまざまな恩恵をもたらしている。
「THE CAMPUS」が、コクヨの新しい企業理念を体現する場にもなっているように、公園は企業の姿勢を社会に向けて発信する場にもなり得る。企業によるイベント開催の引き合いが増えているという「MIYASHITA PARK」を管理・運営する三井不動産の金澤氏は、「単なる商品のPRなどではなく、ブランディングなどにつながるイベントを行う企業が増えている。イベントを通じて、地域の人たちとさまざまな社会課題について共に考える機会づくりに努めている企業も多く、当社としてもそのような取り組みを支援していきたい」と語る。さまざまな人々が利用する屋外空間としての公園に、消費者とのエンゲージメントを強める媒体としての価値を見出している企業も少なくないようだ。
民間企業だからこそできること
地域に開かれた公園の整備・運営においては、継続的な利用を促すためのデザインも重要だ。日替わりでキッチンカーを入れ、来場者とのコミュニケーションを図る「コミュニケーター」を常駐させるなどの工夫を行っている「THE CAMPUS」。運営するコクヨの安永氏が、「自社ビルは自分たちの都合で用途を変えられるが、仮に利益にならないからといってすぐに閉めてしまえば社会性を失う。当社が日頃から大切にしている『社会との約束』という観点を忘れず、腰を据えて運営していきたい」と語るように、自社の利益を追求するだけではなく、地域に対して継続的な価値を提供していく姿勢は、公共空間である公園に携わる民間事業者にとって忘れてはならないものだろう。
現在も「Park-PFI」を活用した公園再生プロジェクトを複数進行しているゼットンの鈴木氏は、「これまで自治体によって管理されてきた公園は、いわば無色透明の存在で、どのように使ってもらいたいのかという意思が見えにくかった。しかし、地域で暮らし、働く人たちにいかに寄り添っていくのかを考え、公園に意思を持たせることは非常に大切で、そこに民間事業者の役割がある」と語る。本号で取材した各社が自社の経営資源やノウハウを活用し公園に特色を持たせているように、さまざまな業種・業態の企業が公園に関わることで、地域や人々の暮らしに多様な価値をもたらし、それが新たなビジネス創出につながるはずだ。


