パークイノベーション〜公園が変える地域・暮らし・ビジネス〜
CASE❶ コクヨ株式会社
オフィスビルを街に開き企業と地域をつなぐ「余白」をつく
2021年、コクヨ株式会社が東京・品川にある自社ビルを改築してオープンさせた「THE CAMPUS(ザ・キャンパス)」は、誰もが利用できる公園やショップ、コーヒースタンドなどのパブリックスペースを併設したオフィスだ。「みんなのワーク&ライフ開放区」をコンセプトに自社の一部を街に開くことで、地域との接点をつくり出している。本プロジェクトの担当者に、舞台裏について聞いた。

安永哲郎氏
コクヨ株式会社 経営企画本部 クリエイティブ室
江崎 舞氏
働き方改革タスクフォース
街に開かれた新しい形の企業オフィス
「THE CAMPUS」は、築約40年となる自社ビルをリノベーションした施設です。私たちがオフィスを構える品川はオフィスビルが立ち並び、ワーカーが働くためだけに通う街になっている側面があり、周囲に緑も少なく、季節の移ろいを感じることも難しいのが現状でした。オフィスとしてのセキュリティの問題もあり、ここで働いていた私たち自身も、これまでは地域との接点がほとんどありませんでした。
働き方の提案も事業領域としている当社は、こうした状況を課題の一つと感じていたことから、オフィスに足を運ぶ理由を考えた末に生まれたのが、「みんなのワーク&ライフ開放区」というコンセプトです。そこには、この街で暮らす人たちと働く人たちが交わることができる接点をつくり、さまざまな実験・実践をしていく場にしていきたいという思いがありました。
企業と地域をつなぐ多彩な工夫
「THE CAMPUS」は、会議や専門業務、集中作業など働き方に応じてフロア分けがされたワークスペースと、屋外空間やショップ、コーヒースタンドなど、どなたでもご利用いただける「パブリックエリア」で構成されています。「パブリックエリア」では、企業と地域をつなぐ「余白」をつくることを意識しました。受付など会社の機能は2階に設けるとともに、四季の変化を楽しめる約230種類の植栽を選定した屋外空間「PARK(パーク)」には、ウッドデッキ、家具、卓球台などを配置。街の人たちが自分の居場所として自由に過ごしていただくための設計にこだわりました。また、地域の方とのコミュニケーションやお子様向けワークショップの企画などを担う「コミュニケーター」を常駐させ、近隣のワーカーも利用できる日替わりのキッチンカーを誘致するなど、地域とつながるさまざまな工夫を行っています。
オフィス機能と公共性の両立
「THE CAMPUS」のオープン以降、社員の働き方やマインドは非常に柔軟になりました。社内イベントを行う機会も増え、産休・育休中などでもフラッと足を運べる場所ができたことで、コロナ禍で断絶しかけていた社内のつながりを取り戻すこともできました。地域との接点というところでも、お子様が遊んでいる姿を見て幸せを感じるという社員の声なども多く、地域の方たちからも施設に対して良いフィードバックをいただけています。今後も長期的な視野を持ち、オフィスとしての機能と地域に開かれた空間としての公共性を両立させるという難しいテーマに向き合っていきたいと思います。
当社では、「THE CAMPUS」のオープンと同じタイミングで企業理念を「be Unique.」に変更しました。ものづくりを通じて社会に貢献するだけではなく、世の中にいる一人ひとりの個性を輝かせ、在りたい社会を共につくっていくというメッセージを打ち出すためです。社会と密接につながる「THE CAMPUS」という場を有効に活用しながら、メッセージを社内外にしっかりと発信していきたいですね。


