パークイノベーション〜公園が変える地域・暮らし・ビジネス〜
CASE❷ 株式会社ゼットン
公園再生プロジェクトのビジネスモデルを確立しサステナブルな企業の成長を実現する
飲食店を中心に幅広く事業を展開している株式会社ゼットンは、2000年代以降、名古屋・徳川園や大阪・中之島公園などの都市公園に出店し、地域の賑わいづくりに貢献してきた。2019年に東京・葛西臨海公園のプロデュースを手掛けたことを機に、飲食店事業で培ってきたノウハウを生かした公園運営による街づくり、持続可能な事業モデルづくりを推進している同社の代表に取材した。

鈴木伸典氏
株式会社ゼットン 代表取締役社長
街づくりのフィールドとしての公園
当社は1995年の創業以来、「店づくりは、人づくり 店づくりは、街づくり」を経営理念に掲げてきましたが、近年取り組んでいる公園再生プロジェクトにおいても、この理念が深く関わっています。これまでの事業を通じて、当社は、一つの飲食店が人の流れを生み、街を変えていくエネルギーになることを実感してきました。
リーマンショックや東日本大震災を経て、2000年代から続いた外食産業の勢いが失われた後、改めてこの企業理念に立ち返り、飲食店づくりを通じて培ってきたデザイン、オペレーション、プロデュースの力を駆使し、街をつくることが当社の使命だと考えるようになりました。そして、低炭素・脱炭素社会の実現、効率的な資源の再利用などサステナビリティ戦略を掲げてきた当社にとって、街づくりにおける最適なフィールドが公園でした。
地域に活気をもたらした公園再生プロジェクト
公園の再生プロジェクトとして最初に手掛けたのが、2019年の葛西臨海公園のプロジェクトです。海に隣接した立地、素晴らしい太陽の光、美しい芝生という資源をもとに公園の魅力を最大限生かすために、カフェやレストランをリニューアルするとともに、バーベキュー会場を新設し、機材のレンタルなども行うようになりました。さらに、パークウェディング事業をスタートし、ヨガやランニングイベントなども開催。これらのコンテンツによって公園のイメージは大きく変わり、その結果、葛西という街のイメージも向上し、地域に活気をもたらすことができました。
2022年からは隣接する葛西海浜公園で、環境保全を意識したバーベキュー場の管理・運営を行っています。今後は、干潟の保護・再生を目的につくられた東西2つの渚があるこの公園で、研究機関などと連携した環境保全やお子様向け体験学習などにも取り組みを広げていきたいと考えています。
新たに施設をつくらず既存資源を活用する
葛西臨海公園での取り組みが示すように、街づくりにおいて新しい建物や施設をつくることは必須ではありません。当然、新しい建物をつくればCO₂排出量は増えてしまうので、すでにある建物や資源を活用したビジネスモデルを考えるということを強く意識しています。そうしたビジネスモデルを確立し、当社のような企業が成長すればするほどCO₂排出量が少なくなっていくということを立証していきたいと考えています。そうした観点からもこの公園再生プロジェクトは、今後の企業経営における重要な柱となるのです。
現在も横浜・山下公園や名古屋・徳川園などのプロジェクトが進行中ですが、いずれは当社自身で公園をつくりたいという思いもあります。現在、本社の屋上にバーベキュー場がありますが、ここに農園をつくって公園化する構想があり、こうした取り組みを通じて得たノウハウを街づくりにも広げていきたいと思います。


