パークイノベーション〜公園が変える地域・暮らし・ビジネス〜

CASE❸ 三井不動産株式会社

公園に複数の要素を掛け合わせ新たなコミュニケーションが生まれる場に

1966年に東京初の屋上公園として整備され、長らく渋谷のカルチャーを象徴する存在だった渋谷区立宮下公園が2020年7月、公園・商業施設・ホテルから成る全長約330mの複合施設「MIYASHITA PARK(ミヤシタパーク)」に生まれ変わった。一つの施設に複数の用途を持たせる「ミクストユース型」開発のノウハウを生かし、渋谷区との官民連携プロジェクトをリードした三井不動産株式会社の担当者に話を聞いた。

三井不動産株式会社 商業施設本部 アーバン事業部 運営企画グループ 金澤佑香氏

金澤佑香

三井不動産株式会社 商業施設本部 アーバン事業部 運営企画グループ

公園・商業施設・ホテルによる複合施設

「MIYASHITA PARK」は、2014年に実施された渋谷区の公募型プロポーザルに採択された当社が、官民連携事業として宮下公園を再整備した施設です。公園の所有者は渋谷区ですが、指定管理者制度によって当社と西武造園株式会社による宮下公園パートナーズが管理・運営しています。

渋谷区からは公募時より、バリアフリー動線や耐震性の確保に加え、防災意識の高まり、来街者の増加といった社会変化に対応できる公園にすることが求められていました。また、公園を他の施設と一体的に整備する「立体都市公園制度」を活用した渋谷区初のプロジェクトだったことから、公園という開放的な空間を他の要素と組み合わせることで新しい来園者やコミュニケーションを創出することを目的に、1階~3階に商業施設、屋上に公園、施設の最北端にホテルを併設した複合施設を提案しました。

より幅広い層に開かれた場所にしたい

もともと宮下公園にはボルダリングウォールやスケートボード場があり、渋谷のストリート文化を体現する場所でした。再整備にあたってもこれらの施設は残し、さらに多目的運動施設(サンドコート)を設置することで、より幅広い層がアーバンスポーツを親しめる場にしました。商業施設「RAYARD(レイヤード) MIYASHITA PARK」は、日本初上陸となる店舗や、アウトドアやスポーツブランドのショップなど、渋谷らしい文化を発信する多様なテナントで構成され、併設するホテル「sequence(シークエンス) MIYASHITA PARK」とともに、感度が高い若者やミレニアル世代、訪日外国人などを中心に幅広い層に訴求する施設となっています。

屋上の宮下公園には円弧上のキャノピーを設置することで緑のアーチをつくり、さらに外からでも施設内の様子がわかるような開かれた施設づくりを心がけたことによって、鬱蒼としてやや近寄りがたい印象があった従来の宮下公園に比べて明るくなったという声もいただいており、地域の安全性向上という観点からも評価されています。

渋谷ならではのカルチャーを発信

公園は都市部における数少ない「余白」や「ゆとり」の空間であり、老若男女が思い思いの時間を過ごせる「憩いの場」と、多くの人とコミュニケーションができる「賑わいの場」という2つの側面を併せ持つ場所です。こうした公園の価値を最大限生かしていくために、当社では「MIYASHITA PARK」のオープンを機に、公園一体型の新商業施設ブランド「RAYARD」の展開を始めました。

おかげさまで「MIYASHITA PARK」は、渋谷の新しいカルチャースポットとして認知されつつあり、企業によるイベントなどの引き合いも増えています。当社としても、今後は宮下公園のアイデンティティであるスポーツや、渋谷の街とも親和性が高い音楽関連のイベントなどを通じて地域の文化を発信しながら、20年、30年先まで愛され続ける施設にしていきたいと考えています。

大胆にデザインされたキャノピー
大胆にデザインされたキャノピーは巨大な緑のアーチを形成。
施設内の柱型デジタルサイネージ
施設内の柱型デジタルサイネージなどには広告の出稿が可能。
アーバンスポーツを楽しめる多目的運動施設
さまざまな世代がアーバンスポーツを楽しめる多目的運動施設も設置されている。