パークイノベーション〜公園が変える地域・暮らし・ビジネス〜

【COLUMN】

公共性と経済性を両立させる事業者が都市公園の価値を高める

公共施設である都市公園の管理・運営や新規ビジネスを行う上で、地方自治体など行政との連携は不可欠だ。2017年の都市公園法改正によってより多様な事業者に公園事業への門戸が開かれる中、都市公園をはじめ、集客性が高い公共施設における官民連携事業の行政支援を行ってきた株式会社日本総合研究所の板垣 晋氏に、近年の公園利活用の潮流や今後の可能性、課題などを聞いた。

株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 シニアマネジャー 板垣 晋氏

板垣 晋

株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 シニアマネジャー

規制緩和で高まる企業の関心

都市公園は、地域の防災拠点、都市部におけるオープンスペース、住民の健康増進や憩いの場などさまざまな機能を持ち、誰にでも開かれた公共性が高い屋外空間です。他の公共施設に比べて利害関係者が圧倒的に多い都市公園は、定められた法律を遵守する形で厳格に管理・運営されてきた歴史があり、それ故に利活用が進みにくい状況が長らく続いていました。

しかし、近年は政府の方針のもと、行政側の運営コスト削減、住民へのサービス向上、民間事業者のビジネス機会創出などを目的にした公共施設運営における官民連携が推進されています。2017年には都市公園法改正によって公募設置管理制度「Park-PFI」が新設され、都市公園においても規制緩和が行われたことで、多様な事業者が公園の整備・運営に参画するようになりました。

公園活用における近年の潮流

これまでも指定管理者制度などを活用した民間企業による公園運営の事例はありましたが、これらを担うのはゼネコンや造園事業者などが中心でした。しかし、「Park-PFI」導入以降は、大手ディベロッパーや商業施設事業者が参画し、不動産価値が高い都市部や観光地の公園に商業施設や宿泊施設が設置される事例が増えています。一方、地方部においては一定の面積や自然環境を有する公園をアウトドアが体験できるテーマパークなどに活用していく動きが加速しています。

さまざまな立場の人たちが集う都市公園は、しっかりした管理・運営ができれば企業イメージの向上につながりますし、情報発信やマーケティングの場としても活用可能です。しかし、公園には都市基盤施設としての役割があることを忘れてはなりません。行政とも連携しながら地域との対話を通じて多様なニーズを把握し、利用者との合意形成を図っていくことは不可欠で、地域との関わりを大切にしながら自社のブランディングやビジネス創出につなげていく姿勢が企業側には求められるのではないでしょうか。

多様な事業者の参入を促す

コロナ禍を経験したことで、私たちのライフスタイルや価値観は大きく変わり、自然を身近に感じられる屋外空間でのアクティビティが再評価されるようになりました。社会生活を営む人間にとって普遍的ともいえるこれらのニーズを満たす場として、都市公園はうってつけのフィールドです。また、地方部の公園には地域に新しい雇用を生んだり、地域全体の評価を高める役割が期待でき、地域創生の拠点にもなり得るものです。

こうしたポテンシャルを最大限に生かすためには、公園における社会性と経済性を両立させる民間事業者のアイデアやノウハウが不可欠です。当研究所としてもこれまで公園と接点がなかった企業の発掘などに力を入れながら、アパレル企業をはじめ、より多様な事業者を巻き込んでいけたらと考えています。

パークイノベーション
公園は、都市部だけでなく地方部においても多彩な機能が期待され、今まさにパークイノベーションが注目されている。