ファッションを再定義する新時代のセレクトショップ

CASE❸ 株式会社阪急阪神百貨店

異分野とのコラボレーションを強化し五感を刺激するライフスタイルを提案

ファッションやビューティ領域に強みを持つ全国有数の百貨店として、時代のトレンドを発信し続けてきた阪急うめだ本店。近年は「楽しさNo. 1デパートメントストア」のキャッチフレーズのもと、商品の販売のみならず、ブランドの世界観やデザイナーやつくり手の思いを伝える取り組みにも力を入れている。同店の看板ともいえる3階モードフロアにおける自主編集売り場の取り組みについて担当者に話を聞いた。

株式会社阪急阪神百貨店 モードファッション商品統括部 モード商品部 モード戦略自前売場MD担当 芝崎慶子氏

芝崎慶子

株式会社阪急阪神百貨店 モードファッション商品統括部 モード商品部 モード戦略自前売場MD担当

特性の異なる複数の売り場

阪急うめだ本店のモードフロアでは、現在の潮流を捉えて一歩先のファッションを提案することを掲げ、「ディー・エディット(D.EDIT)」、「ディー・ラボ(D-LAB)」という2つの自主編集売り場を展開しています。「ディー・エディット」では、パリ、ミラノ、ロンドン、ニューヨークの世界4大コレクションに参加する国内外のデザイナーズブランドを中心に、独自の目線でセレクトしたアイテムをラインナップしています。一方の「ディー・ラボ」では、「キャッチー&ネクスト」をキーワードに、ストリートの感性を持った国内外のブランドや新しい服づくりを行っている旬のデザイナーを取り扱い、バイヤーの感性を重視したスタイリングの提案や、雑貨アイテムの展開などにも注力しています。

「ディー・エディット」のお客様が新しい刺激を求めて「ディー・ラボ」にも足を運ばれるなど、2つの売り場を行き来されるお客様は少なくありません。また、当店がセレクトするブランドのラインナップを信頼していただいているお客様からは、無名のブランドでも自信を持って購入できるといったありがたいお声もいただいています。

顧客とつながり続ける関係づくり

ご自身で選ぶ力をお持ちのお客様が増えている昨今は、単に新しいブランドやトレンドを紹介するだけではご満足いただけなくなっていると感じています。ブランドの哲学やモノづくりの背景などに、より深く踏み込んだ情報をお客様に伝えていくことが不可欠になっている中で、各フロアにある顧客参加型のイベントスペース「コトコトステージ」では、その時々で最も伝えたいこと、打ち出したい商品を深く掘り下げて表現する取り組みを行っています。

モードフロアでは、「マルニフラワーカフェ(MARNI FLOWER CAFE)や「トム ブラウン(THOM BROWNE.)」のチョコレートショップなど、百貨店という場の特性を生かした異分野とのコラボレーションにも力を入れています。高感度なファッションを求めて店頭にお越しになるお客様に対して、ブランドの世界観をより深く感じていただいたり、日常を彩り、五感を刺激するライフスタイルを提案し、お客様自身が進化し続けられる売り場にすることで、つながり続ける関係づくりに努めています。

大阪・関西万博に向けてさらなる進化を

2025年に控える日本国際博覧会に向け、インバウンド需要も見据えて売り場を進化させていくことがこれからの課題です。その中でモードフロアでは、 次世代のファッションマニアが虜となるムーブメントの震源地として、さらなる先進性を世界に向けて発信し続ける場所へと進化していきたいと考えています。また、店頭での接客やSNSなどを通じて、売り場のスタッフ一人ひとりの強みや個性を生かした発信を強化していくつもりです。

日常を豊かにし、人々の心を動かすことができるファッションの素晴らしさを若い世代に伝え続けていくことも当店の役割です。最近は服づくりをされている学生さんともつながり始めているのですが、当店の売り場が若手ブランドの登竜門的な役割を担い、ファッションに挑戦する新しい世代のネットワークやコミュニティを育む場になれたらと考えています。

「ディー・ラボ」
「ディー・ラボ」は、最先端トレンドからキャッチーなヒットアイテムまで、幅広いテイストを自由なスタイリングで提案。
毎年開催のクリエーターズウィーク
毎年開催のクリエーターズウィークでは、ブランドの背景やデザイナーの生き方を掘り下げ、カテゴリーの枠を越えたMDとして表現。画像は「トモ コイズミ(TOMO KOIZUMI)」。