特別な購買体験を提供するパーソナルオーダーの新潮流
| 取材先 (社名50音順) |
株式会社crossDs japan 代表取締役 | 諏訪部 梓氏 |
|---|---|---|
| サントリー食品インターナショナル株式会社 SBFジャパン イノベーション開発部 | 今中悠穂氏 | |
| 株式会社ジョイックスコーポレーション 第1事業部 商品企画1部 企画1課 課長 | 笠原徹也氏 | |
| 株式会社Sparty love passport mila ブランドマネジャー | 西田将之氏 |
| 取材先(社名50音順) | |
| 株式会社crossDs japan 代表取締役 | 諏訪部 梓氏 |
|---|---|
| サントリー食品インターナショナル株式会社 SBFジャパン イノベーション開発部 | 今中悠穂氏 |
| 株式会社ジョイックスコーポレーション 第1事業部 商品企画1部 企画1課 課長 | 笠原徹也氏 |
| 株式会社Sparty love passport mila ブランドマネジャー | 西田将之氏 |
巷にあふれる膨大なモノや情報、一人ひとりの個性が尊重される時代の潮流などを背景に、自分らしい選択、自分に最適な消費をサポートするパーソナルオーダーのニーズが高まっている。スーツをはじめとする従来のオーダーメイドは、限られた人が利用するサービスであったが、昨今は、オンライン上や店舗でも気軽に自分好みのオーダーが可能となった。また、製造工程の最適化による低コスト・短納期化が実現し、美容、日用雑貨、食料品など多岐にわたる分野に広がりをみせている。本号では、高品質な商品・サービスに加え、パーソナルオーダーならではの購買体験を提供する企業への取材を通じて、現代の消費者のインサイトやこれからのビジネスのヒントを探る。
個々のニーズに向き合うことでサービスの付加価値を創出
オンライン上で完結できるパーソナルオーダー体験
スーツや靴などに代表される従来のオーダーメイドは、店頭でのカウンセリングや素材選び、採寸、試着などの工程が必要になるが、デジタル化が進む近年は、これらをすべてオンライン上で完結できるサービスが増えている。
パーソナライズを基軸としたD2Cブランドを展開する株式会社Sparty(スパーティー)は、オンライン上で複数の質問に回答するだけで、自分の悩みや理想にぴったりの商品が届けられるという手軽なオーダー体験を提供し、支持を広げてきた。パーソナライズフレグランス「love passport mila(ラブ パスポート ミラ)」を担当するブランドマネジャーの西田将之氏は、「現代の消費者は膨大なモノや情報から自分に合うものを選ぶことへのストレスが強く、自分に合うかどうかわからないものにお金を使うことに抵抗感を持っている。そのため、当社が提供するパーソナルオーダーでは、いかに納得していただける価値を提供できるかがカギ」と語り、現代の消費者が抱える「曖昧」な欲求を具現化することの重要性を指摘する。
同じくオンライン上で、自分好みの味わいやラベルにカスタマイズしたボトルコーヒーをオーダーできる「TAG COFFEE STAN(D)(タグコーヒースタンド)」は、ラベルに名前やメッセージを入れられる機能で「記念」や「お祝い」、「推し活」ニーズまでもとらえている。同サービスを運営するサントリー食品インターナショナル株式会社 SBFジャパン イノベーション開発部の今中悠穂氏はヒットの要因について、「個を大切にする機運が高まっている中で、自分だけのモノを持つことが自分らしさの表現につながっている。コロナ禍で自分の気持ちの行き場が失われたことも相まって、気持ちを表現する受け皿になったのではないか」と分析し、自分らしい消費を支援するパーソナルオーダーの可能性を示唆する。
購買体験が築く新たな関係
IT領域で経験を積んできた諏訪部 梓氏が創業した株式会社crossDs japan(クロスディーズジャパン)が手掛ける「AYAME(アヤメ)」は、3D技術を活用した採寸や靴型の作成によって、一人ひとりの足に合ったパンプスを提供している。「従来のオーダーメイドパンプスのボトルネックになっていた木型づくりの工程に3D技術を導入し、靴づくりは職人が手作業で行っている。再現性が高い機械と柔軟性に長けた人間の得意な部分を生かすことで、高品質な商品を、短納期でかつ、価格を抑えて提供できる仕組みを構築できた」と語る諏訪部氏。この仕組みを軸にメーカーや靴職人、消費者との新しい関係を構築しながら、これからの時代の生産・消費の在り方を追求していく構えだ。
英国を代表するブランド、「Paul Smith(ポール・スミス)」は生地、ボタン、ステッチなどの豊富なバリエーションを揃えるパターンオーダーサービス「Made to Measure(メイド トゥー メジャー)」を2019年より展開している。日本において同サービスを運営する株式会社ジョイックスコーポレーション 第1事業部の笠原徹也氏は、「オーダーの内容を見ると一着として同じものはなく、それぞれにお客様の好みが反映されている。こだわりが強いお客様は単に洋服を買うだけではなく、店頭でスタッフとコミュニケーションを取りながら、自分に合うものを探す体験を求められている側面がある」と語る。このようなパーソナルオーダーならではの一連の体験に、価値を見出している消費者も少なくないだろう。
パーソナライズの先にあるもの
Spartyの西田氏が、「天然由来成分にこだわった原料や資材のリサイクル、物流のエコ化など、持続可能なものづくりを大切にしている。これらはパーソナライズされた商品に関心を持つお客様が求めていることでもある」と分析するように、無駄な生産・消費を削減するパーソナルオーダーがサステナブルなビジネスを後押しするものであるというのは今回取材した各社に共通する見解だ。一方、ジョイックスコーポレーションの笠原氏は、「1着のオーダースーツをつくるには、社内外のさまざまな部署やお取引先との連携が必須。既製服以上に関係各所との目線合わせが求められると同時に、不測の事態にも柔軟に対応できる生産背景を構築していく必要がある」と提言。サプライチェーンの構築や外部パートナーとの連携は避けては通れない課題だろう。
メンテナンスを前提としたサブスクリプションモデルを導入しているcrossDs japanの諏訪部氏は、「一人ひとりの足に合わせて靴をつくり、メンテナンスを続けることは決して効率的ではない。それでもあえて取り組むからには中途半端にパーソナライズするのではなく、お客様にとってプラスになることを徹底的に追求するべきだ」と語る。また、サントリー食品インターナショナルの今中氏は、「パーソナライズの要素が増えるほど、コストやスピードは良くない方向に向かう。パーソナライズの先にお客様が何を求めているのかを見極め、その部分に特化することが必要」と指摘する。顧客との継続的な関係を構築しながら、一人ひとりのニーズと真摯に向き合っていくことがサービスの付加価値となり、ひいては市場における独自性にもつながるはずだ。
