特別な購買体験を提供するパーソナルオーダーの新潮流
CASE❶ 株式会社crossDs japan
新たな生産・消費の形を見据えるオーダーメイドのパンプス
2020年にスタートした「AYAME(アヤメ)」は、最新の3D技術を活用し、フルオーダーメイドのパンプスを月額5,500円で提供するサブスクリプションサービスだ。3Dプリンターなどの先端テクノロジーと靴職人の匠の技を融合させ、ユーザーの足に合ったパンプスを届ける同サービスについて、株式会社crossDs japan(クロスディーズジャパン)の代表に取材した。
パンプスの課題を解決する3D技術
パンプスは履く人を綺麗に見せ、気持ちを高めてくれる靴である一方、靴擦れや外反母趾など身体に悪影響を与えてしまう側面があります。これらの悩みを解決するためには、自分の足に合うものを選ぶことが必要になりますが、従来のオーダーメイドパンプスは価格や納期の面で手軽に利用できるものではなく、また、直立した状態の計測データをもとにかかとを上げた足を想像して木型をつくるため、誤差が生じることもありました。
こうした課題がある中で、3D技術を活用して自分にぴったりの靴型をつくり、フルオーダーメイドのパンプスを短期間かつ安価に提供するサービスとして、「AYAME」を立ち上げました。3D計測用の専門端末を活用することで、店頭と自宅のどちらからでも計測や注文が可能となっており、デザインについては、つま先の形状やヒールの高さ、革の色などをかけ合わせることで約8,900万通りの中からお選びいただけます。
サブスクモデルで日常使いを促進
3Dプリンターで作成した靴型をもとに、靴職人が伝統の製法で丁寧に仕上げ、1.5カ月から2カ月ほどで完成します。購入から1年間は月額5,500円をお支払いいただくサブスクリプションモデルですが、課金期間中はいつでもメンテナンスが受けられ、その後はパンプスがお客様のものとなります。また、2年目以降もメンテナンスのみ継続するプランを用意しています。自分にぴったりの靴をおつくりいただいたからこそ、特別な日だけではなく、普段からたくさん使っていただきたいというつくり手側の思いがあるため、修理を受けるほどお得に感じられる料金体系を導入しました。
無駄のない生産・消費を実現する
主なお客様は30歳代~40歳代の働く女性ですが、サブスクリプションモデルはまだ収入が多くない10歳代~20歳代の若いお客様にも好評です。今後も自分に合った靴を履くことの大切さを若い世代にも訴求しながら、オーダーメイドシューズに抱かれがちな「高級品」のイメージを払拭していきたいと考えています。
靴は洋服などと比べてもはるかに多くのサイズが展開されているにもかかわらず、量産品の中から自分の足に合う靴を見つけることは簡単ではなく、購入後にほとんど履いていない靴をお持ちの方は少なくありません。それに対してオーダーメイドのシューズは無駄な買い物を減らすことができますし、さらにメンテナンスサービスを提供することで長く利用していただくことができます。
「AYAME」では、生産工程における無駄を極力減らし、カーボンニュートラルな靴型やエゾシカの革を使用するなど、環境に配慮したものづくりを行っています。今後は、当社の技術やサービスを全国の協力会社や靴職人に広く提供していくB to B to Cのサービス展開も見据えており、オーダーメイドシューズをつくる仲間を増やしながら、新しい生産や消費のあり方を広げていくことを目指しています。