Management Eye
多様性を尊ぶ「自律協働社会」を目指したい
「未来に向かってチャレンジできる環境づくりを」

黒田英邦氏
リレー形式で展開しているこの企画、Takram Japan株式会社の代表取締役 田川欣哉氏からのバトンとなりました。
2011年に「コクヨデザインアワード」という国際プロダクトデザインコンペティションの 審査員をお願いしたのが、田川さんとのご縁の始まりです。現在では2021年2月に策定した「長期ビジョン CCC2030」や「HASA(ハサ)」という名のハサミの開発にもご協力いただきました。田川さんやTakram Japanの皆さんからは、私だけでなく社員もたくさんの刺激や気づきをいただいています。
長期ビジョンの策定の際に、企業理念も刷新されました。新たな理念「be Unique.」についてお聞かせください。
1905年に帳簿の表紙づくりで創業した当社は、以来、「商品を通じて世の中の役に立つ」という理念を掲げ、文具、オフィス家具、日本初のライブオフィスⓇ空間の提案、オフィス通販と、時代の流れに合わせて事業を拡大させてきました。現在の成熟した環境で、新たな価値を創るためには世の中の変化を捉え、先人のように事業領域を広げていく必要があります。
そうした長期ビジョンを行動に落とし込むには、未来のありたい姿をリードするメッセージがほしいと思いました。そして今後、世の中はどんどんユニークになり、当社も顧客起点で変化する必要があると考え、「be Unique.」を理念に据えたのです。個人が自分らしさを追求し、個々の能力を発揮しつつ、多様な価値観を尊重して協力し合う社会。当社はこれを「自律協働社会」と表現しています。そこでは新しい働き方や暮らし方、学び方が生まれるはずで、そのための商品やサービスを提供していくことが当社の役割だと思います。
新たな企業理念を全社で共有するための施策や、人材育成についてはいかがでしょうか。
理念や長期ビジョンについてはチームで戦略的にコミュニケーションを考え、Zoomでの100人単位で集うタウンホールミーティングや、社内公募企画で採用された社長の動画配信を行うほか、私も積極的にメディアで発信するようにしています。今年は、「ワクワクする未来のワークとライフをヨコクする。」というパーパスを掲げましたので、それについて語ることが多くなりました。
東京・品川の自社ビルをリノベーションした「THE CAMPUS(ザ・キャンパス)」のインパクトも大きいですね。ここは「みんなのワーク&ライフ開放区」というコンセプトでスタートし、「長期ビジョン CCC2030」とは別の若手中心のプロジェクトで進行していたのですが、完成してみると、まさに「自律協働社会」を体現するような場所になりました。
また、人材は資産と考えており、さまざまな取り組みを行っています。30歳代前半までの社員を対象にマーケティング大学を社内に開校しました。これは、新規事業を考えるプログラムを経て役員にプレゼンテーションするというもので、顧客起点で市場をどう捉え、どのような価値を創り出すのか、そのスキルを磨いてほしいと考えてのことです。もう少し年齢が上の社員からの要望もあり、マーケティング大学院も開校しています。社内複業も始めました。当社はサプライチェーンが長く、企画から販売までの間にさまざまな職種があるので、各部署からの求人と応募した社員がWin-Winになるようマッチングを考慮し、個々の成長につながる複業を促しています。
経営者として大事にされていることをお聞かせください。
当社にはワクワクするような仕事がたくさんあり、一人ひとりが自律しながら協働し、新たなワークとライフの提言ができる。社員がそんな未来に向かってチャレンジできる環境をつくることが、私の役割だと考えています。

