“持たざる消費”に呼応するサブスクリプションの新潮流

取材先
(社名50音順)
株式会社KINTO マーケティング企画部 副部長 兼 EVプロジェクトリーダー 曽根原由梨氏
株式会社Sanu 広報担当 柴田菜々子氏
株式会社大丸松坂屋百貨店 経営戦略本部 DX推進部 田端竜也氏
パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社 ハウジングアプライアンス事業推進室 室長 太田雄策氏
取材先(社名50音順)
株式会社KINTO マーケティング企画部 副部長 兼 EVプロジェクトリーダー 曽根原由梨氏
株式会社Sanu 広報担当 柴田菜々子氏
株式会社大丸松坂屋百貨店 経営戦略本部 DX推進部 田端竜也氏
パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社 ハウジングアプライアンス事業推進室 室長 太田雄策氏

「モノ」から「コト」、「所有」から「利用」へとシフトする消費マインドや情報通信技術の発展などを背景に、2010年代後半頃から注目を集めるようになった定額課金制のサブスクリプションサービス。オンラインを軸に顧客とコミュニケーションを図り、継続的な関係性を構築できるサブスクリプションビジネスは、コロナ禍による「巣ごもり需要」を追い風に動画や音楽配信などエンターテインメント領域で急成長を遂げた。今やそれらのサービスにとどまらず、「衣・食・住」、「モビリティ」などさまざまな分野に広がっている。本号では、“持たざる消費”の新潮流を牽引するサービスを展開する各社への取材を通じて、不確実性が高まる時代における持続可能なビジネスのあり方を探る。

顧客との信頼関係でサービスの継続利用を促すことが成功のカギ

モノとユーザーの新たな関係

サブスクリプションサービスがさまざまな領域に広がっている背景には、人口減少に伴う市場の縮小や、若者世代を中心に進む消費者の「モノ離れ」など、既存の売り切り型ビジネスを続けていくことへの企業側の危機意識がある。

百貨店業界初のファッションサブスクリプションサービスとして「AnotherADdress(アナザーアドレス)」を2021年より運営している株式会社大丸松坂屋百貨店。経営戦略本部 DX推進部の田端竜也氏は、「ECが登場した際、店頭で商品に触れてから購入することが当たり前だった高級アパレルには無縁だと判断し、参入に遅れた経験があった。この経験から、ECに続く大きな消費の転換点となり得るサブスクリプションサービスに早期参入した」と立ち上げの経緯を話す。大量廃棄などの課題を抱えるアパレル業界の現状を打開する可能性をも秘めた同サービスは、5年目までに登録者3万人、年間売上55億円から60億円を目指しており、その先にはアパレルにとどまらないモノのサブスクリプションのプラットフォーマーとしての地位確立を見据えている。

トヨタグループが展開する車のサブスクリプションサービス「KINTO(キント)」は加速度的に利用者を増やしている。車の新しい売り方の開発をミッションに設立された株式会社KINTOでマーケティング企画部に所属する曽根原由梨氏は、「これまで車の購入に踏み切れなかったお客様に代替としてご利用いただくことも多い。当初は販売店側から警戒されていた側面もあったが、若い世代など新しい層からの新規受注が増えている」と利用状況について語る。同サービスはこうした新規ユーザーの窓口になるだけでなく、オンラインプラットフォームや契約者限定イベントなどを通じた顧客との継続的な関係の構築にも力を入れている。

持たない暮らしで循環を促す

大手企業も新しいモノの届け方としてサブスクリプションモデルを次々と導入する中、家電と賃貸物件を組み合わせたユニークな業態で話題になっているのが「noiful(ノイフル)」だ。賃貸住宅の法人オーナー向けに月額制による家電パッケージの提供や物件のリノベーションなどを行う同サービスを運営するパナソニック株式会社 くらしアプライアンス社の太田雄策氏は、「立ち上げの背景には空き家の増加や家電の廃棄などへの課題意識があった。こうした社会課題などに配慮したモノとの付き合い方が若い世代を中心に広がってきている」と語る。同サービスにより、社会と暮らしを活性化する循環モデルの構築に向けて「持たない豊かな住まい方」を推進していく構えだ。

セカンドホームのサブスクリプションサービス「SANU 2nd home(サヌ セカンドホーム)」は、自然と共に生きるライフスタイルの提案を通じて、持たない暮らしを促している。株式会社Sanuの広報担当 柴田菜々子氏は、「持たない暮らしは余分なモノを買わない、つくらないことにつながり、他の人とシェアすることで大切に使おうという感覚も育まれる。所有していないからこそすぐにやめることもでき、その手軽さがサブスクリプションの魅力であり、セカンドホームを持つ可能性を高めている」と指摘する。合理的な設計と工法でスピーディな拠点拡大を実現した同社の「SANU CABIN(サヌ キャビン)」は解体後の再利用まで見据えた建築で、植林活動などによってカーボンネガティブを実現するなど、自然と寄り添い、環境負荷が少ない暮らしを標榜する同社の思想が反映されている。

求められる長期的な視野

モノのサブスクリプションの今後について大丸松坂屋百貨店の田端氏は、「保管場所や廃棄の問題など消費者と企業側双方の痛みを解消するモノのサブスクは確実に広がる。経年劣化や物流コストが発生するためビジネスの難易度は高いが、顧客の利用状況や商品の経年劣化に関するデータは新しいビジネスやモノづくりに生かせる」と話す。また、パナソニックの太田氏が、「黎明期にあるモノのサブスクリプションには成長の余地が大いにあるが、長期間かけて利益を回収していくため、PL思考で臨んでいた売り切り型の事業とは異なる経営管理が求められる」と指摘するように、短期的な利益だけにとらわれず、サブスクリプション事業から得られる価値を見定めることが求められるだろう。

SANUの柴田氏が、「サブスクリプションの良い点は顧客と深い関係を築けること。お客様の声をスピーディにサービスに反映することがより良いフィードバックにつながり、サービスの質も高まる」と語る。KINTOの曽根原氏は、「迅速に意思決定ができる組織にするために新会社を設立した背景がある。お客様の反応を見ながらPDCAを回し、走りながら考えるということを続けてきた」と振り返る。

“持たざる消費”のような新たなビジネスの構築には、小回りの利く組織運営が不可欠だということ、サステナブルな取り組みにつながると考えていることが、各社に共通した見解だったことも最後に付け加えておきたい。

「KINTO」
初期費用を必要とせず、自動車税や任意保険料、メンテナンス料などの諸経費を月額に含む「KINTO」は、始めやすく、やめやすいことをサービスの設計思想に据えている。
「SANU 2nd home」
自然の中にもう一つの家があるライフスタイルを提供する「SANU 2nd home」。宿泊棟の「SANU CABIN」はデザインからコンセントの位置まですべて共通。環境にも最大限配慮した建築だ。
「AnotherADress」
デザイナーズブランドなど高級アパレルを月額5,500円からレンタルできる「AnotherADress」は、洋服の寿命を延ばし、捨てずにアップサイクルすることで環境に貢献することも目指す。
「noiful」
「持たない豊かな住まい方」を提供することを理念に掲げ、物件オーナーや管理会社を対象に、家電と賃貸物件を組み合わせたサービスを展開している「noiful」。