“持たざる消費”に呼応するサブスクリプションの新潮流
CASE❶ 株式会社KINTO
「購入」「レンタル」に代わる第3の選択肢で、車とユーザーの新たな関係を構築
2019年にサービスを開始した「KINTO(キント)」は、トヨタグループが展開する車のサブスクリプションサービスだ。初期費用を必要とせず、自動車税や任意保険料、メンテナンス料などの諸経費を月額に含むことで利用のハードルを下げ、車離れが指摘される30歳代以下の若い世代を中心に利用者を増やしつつある。車とユーザーの新たな関係構築を目指す同サービスの担当者に話を聞いた。

曽根原由梨氏
株式会社KINTO マーケティング企画部 副部長 兼 EVプロジェクトリーダー
諸経費込みの月額制サービス
自動運転やEVなど技術開発が進む自動車業界ですが、お客様との接点は「販売」か「レンタル」の選択肢しかない状況が長らく続いていました。こうした中、モビリティカンパニーへの変革を掲げるトヨタグループが、車の新しい売り方の開発をミッションに設立したのが株式会社KINTOです。
KINTOは、初期費用なしでトヨタ・レクサス車に3年・5年・7年の一定期間乗ることができる月額制のサービスです。始めやすく、やめやすいことをサービスの設計思想に据えている当サービスでは、ガソリン代と駐車場代以外の諸経費がすべて月額に含まれています。申し込みから契約までをオンラインで完結でき、「初期費用フリープラン」、「解約金フリープラン」など利用障壁を下げる契約プランを用意していることなどが特徴です。2019年12月時点では約1,200件だった累計申し込み数は、2022年1月時点で約32,000件となり、取り扱い車種も当初の6車種から約30車種に増え、7月からは中古車の展開も開始しました。
「車離れ」世代の支持を獲得
申し込みの7割はWEBからで、30歳代以下のお客様が全体の4割を超えています。同世代の構成比が1割前後に過ぎない新車購入に比べるとかなり高い数字であり、WEBを通じて時間帯を問わずに申し込みができることや、通常若い世代ほど高く設定される任意保険料が一定であることなどが支持されています。
若い世代に限らず、車のメンテナンスや故障などの予期せぬ出費で苦い経験をされた方や、購入時の値引き交渉などにストレスを感じていた方、いつまで車に乗り続けられるかわからない単身赴任のお客様などが「KINTO」に乗り換えるケースも少なくありません。また、トヨタの正規販売店でメンテナンスが受けられる点や、WEB上で価格が明示され、契約や解約がオンラインで完結できる透明性や利便性なども、競合サービスにはない強みになっています。
新たな挑戦のプラットフォームに
2022年5月から新型電気自動車「bZ4X」を「KINTO」限定で提供するなど、カーボンニュートラルの実現に向けたラインナップ拡充も見据えています。ソフトウェアの更新や運転データの取得などが肝となるEVや自動運転などは、お客様とつながり続けられるサブスクリプションサービスと相性が良いと感じています。また、地球資源の保護を促すシェアやリユースなどの観点もますます重要になる中で、当社はサブスクリプションサービスという形態を通じて、メーカーの新たな挑戦をサポートするプラットフォームでありたいと考えています。
今後は、既販車の機能やアイテムを最新に進化させる「KINTO FACTORY(キント ファクトリー)」や、移動の楽しさ、安心や快適につながるサービスを揃えたオンラインプラットフォーム「モビリティマーケット」など、当社の他のサービスとも連携を図りながら、「KINTO」のさまざまな可能性を探っていきます。


