“持たざる消費”に呼応するサブスクリプションの新潮流

CASE❸ 株式会社大丸松坂屋百貨店

デザイナーズブランドとの接点をつくり潜在層にファッションの楽しみを届ける

株式会社大丸松坂屋百貨店が、百貨店業界初の高級アパレルのファッションレンタルサービスとして2021年にスタートした「AnotherADdress(アナザーアドレス)」。世界的なデザイナーズブランドを多く取り扱い、他社とは一線を画すラインナップの洋服を月額5,500円からレンタルできる点が多くの女性から支持を集めている。サービス開始以来、順調に推移している同事業の責任者に、立ち上げの背景やユーザーの反応、今後の展望などを聞いた。

株式会社大丸松坂屋百貨店 経営戦略本部 DX推進部 田端竜也氏

田端竜也

株式会社大丸松坂屋百貨店 経営戦略本部 DX推進部

百貨店初のファッションサブスク

将来に向けて、新しい事業·業態を模索してきた当社は、6年ほど前から海外のファッションレンタルサービスの動向に注目し、米国のスタートアップ企業への投資などを通じて日本への展開を検討してきました。当時は、既存事業とのカニバリゼーションを危惧する社内の声もありましたが、シェアリングエコノミーの潮流やサステナビリティへの意識の高まりなどを受け、自社の新規事業としてサブスクリプションビジネスに取り組むことになりました。

百貨店という大きな組織の中で新事業を立ち上げる難しさはありましたが、ベンチャーとは違 って資金調達へのストレスが低いことや、ブランド交渉などにおいては、長年かけて信頼を構築してきた百貨店の強みを生かすことができ、2021年3月に「AnotherADdress」をスタートできました。

ターゲットはファッションの潜在層

ターゲットは既存の百貨店の「購買層」ではなく、ときにはデザイナーズブランドを着ておしゃれを楽しみたいと考えている「潜在層」です。そのため利用しやすい価格設定にこだわっており、現在は月額11,880円で毎月3着をレンタルできるスタンダードプラン、月額5,500円で毎月1着をレンタルできるライトプランを用意しています。ユーザーは3大都市圏で働く40代前後の女性が中心で、商談や旅行、デートなどの際にお使いいただいているようです。

サービス開始以来、予想を大きく上回るお客様にご利用いただき、うれしいお声もたくさん頂戴しています。一方、シーズンごとに商品が入れ替わるECサイトなどとは異なり、すでに5,000以上のアイテムがストックされている中で、いかに商品を選びやすくできるかが今後の課題です。検索機能の強化、履歴に基づいたリコメンド、スタイリストやバイヤーの提案などさまざまな施策を通じて、ファッションの醍醐味である選ぶ楽しさを提供していきたいと考えています。

百貨店事業とのシナジー効果も

現在、百貨店事業と「AnotherADdress」のお客様は棲み分けがされていますが、このサービスを通じてファッションの楽しみに目覚める方が増えれば、百貨店事業にも良い影響があると考えています。小売とレンタルは決して対立するものではないですし、お客様にとっても「買う」と「借りる」を使い分けることでファッションの幅は広がるはずです。

当社が目指しているのは、ファッションのポジティブな力を伝えることはもちろん、持続可能なビジネスモデルの構築です。洋服の寿命を延ばすことや、捨てずにアップサイクルすることで環境に貢献することを目指し、サステナブルな取り組みを推進する事業者らと連携したさまざまな取り組みを行っています。

今後はメンズやキッズなどのカテゴリへの拡大なども視野に入れて日本一のファッションサブスクリプションサービスをつくり上げ、さらにその先にはファッションにとどまらないモノのサブスクリプションサービスのリーダー企業になることを目指しています。

大丸松坂屋百貨店のサブスクリプションビジネス
洗練されたブランドを自由に選ぶことができると、40歳代の働く女性を中心に支持を集めている。
月額5,500円から利用が可能
月額5,500円から利用が可能で、登録や選択もスマートフォンで簡単にできる。送料無料・クリーニング不要などコストがかからない設計も人気を支えている。