人々の価値観や社会環境、市場の変化などに対応するべく、パナソニック株式会社が2022年1月にスタートさせた「noiful（ノイフル）」は、賃貸住宅の法人オーナーおよび管理会社を対象にした家電のサブスクリプションサービスだ。パナソニック家電のパッケージを月額制で提供する「noiful ROOM（ノイフル ルーム）」、物件のリノベーションから管理・運用までを行う「noiful LIFE（ノイフル ライフ）」の2本柱で、新たな家電ビジネスの構築を図る同サービスの責任者に取材した。

「noiful」を立ち上げた背景には、売り切り型の家電販売というビジネスだけを続けていくことへの危機意識がありました。2019年に、将来に向けた新たなサービス事業を生み出すための複数のワーキンググループが社内で立ち上がり、その中の一つから生まれたのが「noiful」の原型となるコンセプトでした。

「noiful」は、入居者像や物件の間取りなどに応じて家電の種類や点数、月額、契約期間などをプランニングし、家電のパッケージを月額制で提供する「noiful ROOM」、家電が調和する空間のリノベーションから入居者の募集、物件の管理・運用まで対応する「noiful LIFE」という2つのサービスで構成され、どちらも賃貸物件の法人オーナーや管理会社を対象にしています。サービス名は、「not owning is fulfilling」（持たざることは満たされること）の頭文字を合わせた造語で、「持たない豊かな住まい方」を提供することを理念に掲げています。

家電の配送、設置、回収、修理、交換などの費用はすべてパッケージ料金に含まれているため、入居者は設置の費用や手間を必要とせず、家電が揃った状態で新生活を迎えることができ、故障への心配も不要です。一方、物件のオーナーは賃貸住宅の付加価値向上による安定的な物件運用が見込まれます。また、入居者の属性やライフスタイルに応じて、「調理」、「美容」、「最新IoT」などテーマに特化した家電パッケージを選択できる点なども好評で、すでに多くの問い合わせをいただいています。

海外ではサービスアパートメントと呼ばれる家具・家電付きの賃貸が一般的であるものの、日本では浸透していないことや類似サービスがないことなどから、物件オーナーや管理会社における運営体制の整備などに時間を要しているのが現状の課題です。サービスの特性上、単身赴任者や海外からの駐在員などとの親和性が高いこともあり、今後はこうした特定のセグメントを意識しながら、戦略的にスケールの拡大を図っていきたいと思います。

「noiful」は、入居者が退去された際に家電の回収やクリーニングを行い、中古家電としてリユースをしています。サービスを立ち上げた当初から、家電の廃棄に対する環境課題意識を持っており、その解決の一助として家電の新しい循環スキームを構築することで、環境負荷を削減していきたいという思いがありました。

「noiful ROOM」、「noiful LIFE」を合わせて、2030年までに国内20万戸に展開することが当面の目標です。将来的には、暮らし向きに合わせて軽やかに住まいを替える「くらしの循環」、社会課題にもなっている空き家やストック住宅の再価値化による「住まいの循環」、家電のリユース・リサイクルによる「モノの循環」の3つを実現し、社会と暮らしが活性化されるエコシステムをつくって社会と暮らしのお役に立てればと考えています。