Management Eye

失敗を恐れず「野鍛冶の精神」でチャレンジし続ける

「仕事、お客様、社員に誠実であることを大切にしたい」

202301■■■■ 202301■■■■氏
貝印株式会社カイインダストリーズ株式会社 代表取締役社長 兼 最高執行責任者(COO)
遠藤浩彰

リレー形式で展開しているこの企画、コクヨ株式会社の代表取締役社長 黒田英邦氏からバトンが渡されました。

実は黒田社長のお祖父様と私の祖父には交流があり、現会長の父は自社に入社する前に修業という目的でコクヨさんに2年間出向していたというご縁があります。現在は、「HASA(ハサ)」というコクヨさんの商品で協業するなど、ビジネスを通じてお付き合いさせていただいています。常に先を見据えてビジネスを切り開く黒田社長は、信念と覚悟を持ち、バイタリティ溢れる経営者。学ぶところが多く、尊敬しています。

2022年には創業114年を迎えられました。長い歴史の中で、今も受け継がれているDNAについてお聞かせください。

当社は刃物の町、岐阜県関市で1908年に創業し、ポケットナイフの製造販売からスタートしました。明治時代に刀職人が廃刀令によって包丁や農具といった道具を手掛ける「野鍛冶」に転身し、使い手の特徴に合った刃物づくりが行われていました。私たちはこれを「野鍛冶の精神」と呼び、「お客様が真に求める商品をつくる」という創業時からのこの精神を今も大切にしています。

その後、日本人初の替え刃カミソリの生産や世界初の3枚刃カミソリの開発など、新たなチャレンジを続けてきた結果、キッチン・製菓・ビューティケア・メンズケア・身だしなみとその領域を広げ、約1万点というアイテムを展開するまでになりました。現在は医療用器具や工業用特殊刃物などの領域にも参入し、刃物をコアに横断的に商品を展開する唯一無二の企業であると自負しています。また、アメリカやドイツに現地法人を立ち上げ、ポケットナイフや高級包丁、カミソリなどの製造販売によりグローバル化にも意欲的に取り組み、海外での売上比率は約50%に達しています。

画期的なサステナブル商品として「紙カミソリ®」も誕生しました。

「紙カミソリ®」は、当初は「新たな価値を持つカミソリ」というイノベーションを起こし、1日1回刃を替える「1Dayカミソリ」というコンセプトで、極上の切れ味を毎日お客様に提供したいという思いから出発しました。後に環境負荷低減を叶えるための答えとなったのが「紙」であり、耐水性に優れ、剃る際の強度を実現するため「紙」を折って組み立てるスタイルとなりました。

こうした商品開発のベースとなっているのが、「DUPS」という基本方針です。「DUPS」はデザイン、ユニーク、パテント、セーフティ&ストーリーの略で、機能美としてのデザイン性、オンリーワンの独自性、特許などによる知財の蓄積、そして安全で誕生秘話による共感を大事にした製品をつくる。それが「KAI品質」であると私たちは考えています。

経営者として大事にされていることをお聞かせください。

現会長の父から学んだのは、「仕事、お客様、社員に誠実であれ」という姿勢でした。それは、「週報」というメールによる全社員とのコミュニケーションとして15年間続いています。私をはじめ経営陣からコメントを送ることもありますし、社員のアイデアが業務改善や商品開発などに生かされることもあります。また、刃物の胆である「切れ味」の「味」の部分を大切にし、刃物という道具にとどまらず、そこから生まれるお客様の体験価値を広げることで、生活を豊かにしていただける情報発信にも積極的に取り組んでいます。これからの100年に向け、「野鍛冶の精神」で失敗を恐れず、唯一無二の存在であり続けたいと思います。

金属と紙を組み合わせた「紙カミソリ®」
カミソリの刃は特許の塊だという。特許のせめぎ合いの中から生まれた金属と紙を組み合わせた「紙カミソリ®」は、水や40℃以下のお湯に濡れても使用が可能だ。
男性の身だしなみを整える新ブランド「AUGER®(オーガー)」
男性の身だしなみを整える新ブランド「AUGER®(オーガー)」は、システムカミソリ、ツメキリ、ネイルファイル、オシャレハサミ、セーフティハサミ、毛抜きをラインアップする。