攻めの「変革」に挑み続ける一年に
市場に合ったネタづくりで人気を確立

諸藤IT企業でしっかり仕事をされながら、なぜ、芸能界へチャレンジされたのでしょう。
ジェイソンザブングルの加藤さんの舞台を何度か観に行ったことがありました。そのときに、加藤さんが「悔しいです!」という決めゼリフを言うために、力が強そうな人を選んで腕相撲をする企画で、舞台に上がりました。それがきっかけで名刺を渡したら、連絡をくれて。身近に芸人という存在がいたことが、きっかけの一つですね。それから、面白そうだと思って趣味の延長のような気持ちで養成所に1年間通いました。
諸藤そうしたら、売れ出した(笑)。ネタは全部自分で考えるんですか。
ジェイソンはい。でも試し試しで、滑ったところを削って、より良くしようということの繰り返しです。実は僕自身は、あんまり面白いと思っていないこともある(笑)。ある意味、ネタは売れるための道具で、自分が最初からやりたいということではなくて、市場が必要としていたネタをやっているといえますね。
諸藤ご自身でやりたかったネタはあったんですね。
ジェイソン最初は、世の中のさまざまな話題を面白おかしく皮肉交じりで語るアメリカのスタンダップコメディを日本語でやる感じでした。あるとき政治をいじったネタをやったら、会場が「シーン」となってしまって。あるお笑い番組で、大声で変な動きをする人がウケているのを見て、そんな感じで出てみようかなと思ってやってみたのが僕のスタイルになりました。
諸藤それがとってもウケた。確かに、政治的なブラックジョークは日本では馴染まないかもしれませんね。
ジェイソン当時の印象がまだ残っていて、きっと今日も聞きますよね。最近の「Why Japanese People」。
諸藤はい。ぜひ教えてください(笑)。
ジェイソンないです、もう10年以上日本にいますから(笑)。
モノが欲しくないことは逆に強い
諸藤ところで、最近のジェイソンさんは著書の影響もあって、貯蓄や投資の話題を取り上げられることが多いのではないでしょうか。
ジェイソン実際、投資は長年続けているので、仕事のギャラよりも投資でお金を稼いでいるといえますね。
諸藤この1年、2年は株価に変動がありますが、状況はいかがですか。
ジェイソン僕の投資は、米国株のインデックスファンドに定期的にお金を入れるだけのシンプルなもの。要するに、ドル建ての投資信託だけです。確かに昨今は株価が下がることもありましたが、円安でカバーできていて、円で見たときはほとんど変わっていません。
諸藤著書が売れているのは、日本人も投資によってお金を増やしたいと考えている人が増えているということでしょう。それには、節約することが大切だとも書かれていますね。ジェイソンさんの節約術についてお聞かせください。
ジェイソン例えば、自分でお金を出して服を買ったことはないんです。
諸藤そうなんですか。でも、今日はとても素敵なスタイリングですよね。
ジェイソン実は、今日の服装は仕事でいただいたものなんです。ふだんは、上着も下着もボロボロになるまで着ています。大学時代のものも、まだ着ていますよ、穴だらけですけど(笑)。寝るときに着ているスウェットは、高校時代のアメリカンフットボールのウエア。穴が空いたら、ぼろくなった靴下を使って繕っています。
諸藤それは究極のサステナブルですね。長く、大切に使いながら、適宜リペアする。新しいものを着たいという気持ちになることはないのでしょうか。
ジェイソンないですね。1回しか着ないような服よりは、10年以上使えるもののほうがいい。何よりもったいないですし、体になじんで快適です。そもそも、周りにどう見られているのかはちょっぴりでも興味がないんです。
諸藤でも、ビジネスのときと芸人として出るときは服も使い分けているのでしょう。
ジェイソン僕の場合、ほぼ一緒なんです。会社にはビジネスカジュアルな服装で出かけて、そのまま養成所へ通ってネタをやっていたので、基本的に会社と舞台の服装は同じ。それ以外はジャージで過ごしています。
諸藤コンビニエンスストアにも行かないそうですね。基本的に、モノの消費はしないということなんですね。
ジェイソンはい。車も持っていないし、スポーツもお金のかからない散歩とランニング。ただし、本当に価値のあるモノに対してはお金を使います。例えば、自分で住むための家。土地は価値が残りますし、それは消費ではなくて資産となりますから。あと、高級な食べ物も食べますよ。定期的に来るんです、ふるさと納税で(笑)。ふるさと納税はやらないともったいない。
諸藤ご家族もそうした質素倹約な生活を送っていらっしゃるんですか。
ジェイソンそうですね。金銭感覚も含めて、夫婦の価値観が合っていたのは大きいと思います。最近では、長女からも「それお金かかるよ」って指摘されることがあります(笑)。
諸藤そもそも、物欲がないということですね。
ジェイソンゼロです。モノを欲しがって生きることは、永遠に満足できない人生を送ることになると思うんです。欲しいモノが手に入ったら、すぐまた欲しいモノを探しているようなら、幸せを感じる瞬間がないんじゃないかと。僕はモノがなくても、娘や飼っているインコと遊んだりして、純粋に笑っているときが幸せだし、満足できる。
諸藤モノが欲しくないというのは、逆に強いですよね。
ジェイソンはい、無敵です(笑)。「これがないと生活に困る」ということがないから、逆に「それはいらない」とはっきり主張もできて、交渉力も強くなります。
諸藤私たちは、マーケットインの発想でビジネスを捉え、同時にサステナブルな取り組みも推し進めています。本当に価値があると思うモノを大切に長く使い続ける。そんなジェイソンさんの考え方はとても参考になります。依然としてコロナ禍ではありますが、企業としては「変革」に挑み続けていくことが求められています。「変革」には、時代に即した考え方をうまく取り入れていかなくてはならず、必要なモノ以外は「持たない」という価値観もその一つでしょう。本日は、貴重なお話をありがとうございました。
