Management Eye

自らを乗り越え、帽子を通じて幸せを届ける

「過去に学びつつ、これからの100年を刻みたい」

株式会社栗原 代表取締役社長 栗原 亮氏
株式会社栗原 代表取締役社長
栗原 亮

リレー形式で展開しているこの企画、今回は貝印株式会社の代表取締役社長である遠藤浩彰氏からのバトンとなりました。

遠藤社長とのご縁は、昨年の貝印主催の第1回帽子デザインコンテストで審査員を務めてほしいとお声をかけていただいたことから始まりました。コンテストの応募作品はどれも意欲的で完成度も高く、現在、最優秀賞のデザインを実際に被れるスタイルに落とし込むプロセスに入っており、完成を楽しみにしているところです。一見、本業とはフィールドの異なるコンテストの開催でもわかるように、遠藤社長は枠にとらわれない発想をお持ちで、視野がとても広く、素晴らしい経営者ですね。

御社は帽子づくりを専業にしながら、昨年、創業100年を迎えられました。栗原社長はその4代目ですね。

1922年に大阪の船場で祖父が創業し、帽子の製造・卸を生業として100年という歴史を刻んできました。祖父は私が高校3年生のときに亡くなったのですが、葬儀の際に懸命に尽す社員の姿を見て、社員も家族の一員なのだと感じたことを覚えています。最初に就職した大手アパレルメーカーを退職する際、多くの反対に遭いました。帽子産業の将来性を心配されたんだと思います。2003年に社長となりましたが、入社当時に抱いた「帽子産業を多くの人に知っていただき、帽子をメジャーなアイテムにしたい」という思いは、今も変わりません。

現在は、グローバルブランドとの契約により、ブランドプロデュース、顧客起点のマーケティング活動を行うほか、OEMとして大手スポーツメーカー、アパレルメーカー、有名セレクトショップなど約190社とお取引させていただいています。

帽子の魅力と展開している自社ブランドについてお聞かせいだけますか。

帽子は頭部の保護や日焼け防止といった機能を備えた実用品というだけでなく、心を豊かにするアイテムでもあります。例えば、いつものスーツスタイルに帽子をプラスして変化を楽しむこともできます。また、休日にキャップを被るだけで「いつもと違う」ワクワクした気分になることもあるはずです。特に、中高年の男性にはおすすめです。若く見えますしね(笑)。

1999年に自社ブランド「OVERRIDE(オーバーライド)」を立ち上げたのは、老舗企業が今後も成長し続けるためには自らを「乗り越える(override)」必要があると考えたからです。帽子の対象顧客を増やすためにもカジュアル化に舵を切り、自ら販売もすることで「乗り越えたい」と。お陰様で若い世代を中心にブランド認知も広がりました。最近は、就寝中に頭髪を守るシルク製のナイトキャップやサウナで頭髪の乾燥を防ぐサウナハットなど、時代に合った商品開発やコラボレーション企画にも取り組んでいます。

経営者として大事にされていることはどんなことでしょうか。

豊かな地球環境と平和な社会があるからこそ、帽子を通じて多くの人に幸せと豊かさをお届けできると考え、「帽子と地球、社会との共生」をミッションに掲げました。それには持続可能な世界の実現に向けた活動が必須で、当社も不要になった帽子をリユースする、回収後に砕いてアップサイクルするといった取り組みを始めています。

コロナ禍の厳しい状況で思い出すのは、入社当時、古参の社員に言われたことです。「社員は会社に対する感謝の気持ちがあるから働いていることを忘れたらあきまへん」と。また、あるアート作品に書かれていた「The Future is in the Past」という言葉にも感銘を受けました。これからも経営者として社員が安心して働ける環境をつくるとともに、過去に学んでこそ豊かな未来を創ることができるという思いで、帽子に向き合っていきたいと考えています。

セルフケアシリーズ「MINAMO(ミナモ)とサウナシリーズ
左/セルフケアシリーズ「MINAMO(ミナモ)」のシリーズ第1弾として開発されたナイトキャップ。右/サウナ愛好家で「サウナ・スパ プロフェッショナル」の資格を持つデザイナーが企画したサウナシリーズ。
繊維リサイクルボード「PANECO®(パネコ)」
お客様が不要になった帽子を回収し、着用可能なものは2次販売(リユース)へ、着用不可のものについては環境配慮型素材の繊維リサイクルボード「PANECO®(パネコ)」にアップサイクルする取り組みを開始。