ダイバーシティ&インクルージョン 2023~多様な「個」が自分らしく働くために~
CASE❷ 株式会社資生堂
一人ひとりの自分らしい生き方に寄り添う女性活躍支援のリーディングカンパニー
全社員の8割以上を女性が占め、国内の女性管理職比率も4割に迫るなど、日本企業の女性活躍推進をリードしてきた株式会社資生堂。多様なジェンダーや国籍、文化的背景を持つ人材の「個」の力を最大化することで、グローバル企業としての競争力を高めてきた同社に、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の考え方や具体的な施策、今後の展望などを聞いた。

本多由紀氏
株式会社資生堂 D&I戦略推進部 部長
受け継がれてきた資生堂のDNA
当社は1872年、創業者の福原有信によって洋風調剤薬局としてスタートし、有信の三男でコロンビア大学で薬学を学び、初代社長となった福原信三が化粧品事業に舵を切った歴史があります。写真家としても活動しクリエイティブな才能にあふれた信三には、当時、慣習的で画一的だった生き方や美しさから女性たちを解放したいという思いがありました。女性たちが自分らしく生き、さまざまなチャレンジができるように応援しようと、以来、女性たちに寄り添い、ときに先導する役割を担ってきました。
こうしたDNAが脈々と引き継がれている当社にとって、D&Iは経営方針の大きな柱であり、女性の活躍支援はもちろん、多様な国籍・文化的背景を持つ人材の登用・育成に努めてきました。
あらゆる階層における女性管理職比率を50%に
当社では、1990年代から女性の出産・育児などを支援するさまざまな制度を導入し、2000年頃にはほぼ100%の女性社員が育児休業から復職するようになりました。2005年には女性活躍推進を経営戦略として明確に位置付け、育児や介護などある意味さまざまな制約がある社員でも、キャリアアップできる会社を目指してきました。
現在、日本国内における女性管理職比率は37.6%ですが、2030年までにあらゆる階層における女性管理職比率を50%にすることを目指し、2017年からは女性リーダーを育成する研修なども実施しています。こうした取り組みの成果として、近年は子育てを含め、多様なバッググラウンドを持った女性がリーダーとして働く姿が増え、若い女性社員のキャリアアップへの意識も高まるなど、女性のリーダー像が着実に様変わりしたことを実感しています。
D&Iに関する実証研究にも着手
これまでのアクションを通じて、ジェンダーに関する社内のアンコンシャス・バイアスは解消されてきましたが、一部の領域においては未だに性別役割分担意識が根強く、取り組みはまだ道半ばです。また、有名企業に入り、昇進することが人生の成功パターンだった時代とは大きく価値観が変わってきている中、一人ひとりが仕事にやりがいや達成感を感じ、自分の生活を充実させる機会を提供していくためにも、D&Iの推進がこれからの企業には不可欠だと感じています。
今年、東京大学の研究チームとともに発足した「資生堂D&Iラボ」では、自社の事例をもとに、D&Iの実行が組織に与える影響を客観的に検証する実証研究に着手します。ここで得られた知見を社内外に発信することで、日本社会のD&I向上に貢献していきたいと考えています。

