ダイバーシティ&インクルージョン 2023~多様な「個」が自分らしく働くために~

CASE❸ 伊藤忠商事株式会社

すべての従業員が能力を発揮できる「厳しくとも働きがいのある企業」へ

2020年度に「女性が輝く先進企業表彰」において「内閣府特命担当大臣(男女共同参画)表彰」を受けるなど、すべての社員が能力を最大限に発揮できる環境づくりが各所で評価されてきた伊藤忠商事株式会社。経営戦略の一つとして10年来取り組んできた同社の働き方改革は、着実に成果を生み出している。同社にその取り組みについて聞いた。

伊藤忠商事株式会社 理事 的場佳子氏

的場佳子

伊藤忠商事株式会社 理事

多様な人材を支援する働き方改革

当社は、企業の持続的発展のためには「組織としての多様性」が不可欠であるという認識のもと、多様な人材の活躍支援を推進してきました。2010年以降は、多様な価値観が尊重され、すべての社員が能力を最大限に発揮できる「厳しくとも働きがいのある」企業風土の醸成を目指し、すべての社員が健康かつモチベーション高く働くための働き方改革を行ってきました。

2013年度より、20時以降の残業を原則禁止し、8時以前の朝型勤務を推奨していますが、これは育児や介護などの事情で時間に制約のある社員の活躍を後押しするとともに、家族との時間や自己啓発の時間の創出などにもつながっています。また、社員一人ひとりが安心して思う存分働ける環境を整備するために健康経営にも注力し、がんと仕事の両立支援施策を実行するなど、改革に取り組んできました。

経営と一丸となった女性活躍推進

当社では、子育てをしながらキャリアを継続できる環境づくりにも努めてきました。朝型勤務体制を敷いた2013年度以降、当社における期間合計特殊出生率は上昇を続けており、2021年度には厚生労働省が発表している期間合計特殊出生率1.33を大きく上回る1.97となり、仕事と育児が両立できる環境が整いつつあることを裏付ける結果が出ています。

現在は、採用数を拡大した2000年代以降入社の女性総合職が役職候補となるステージに入っており、ライフステージやキャリアに応じた個別支援に注力しています。さらに2021年には「女性活躍推進委員会」を設置するなど、経営と一丸となって女性の活躍を後押し、2021年4月時点で35名だった女性役職者が、2022年4月時点で46名に増加するなど成果が現れています。

飛躍的に向上した労働生産性

働き方改革を通じて一貫して目指してきたのは労働生産性の向上ですが、その実現にはダイバーシティ&インクルージョン(D&I)に関する社内の理解が不可欠です。そのため、2018年度からは12月に「ダイバーシティウィーク」と称し、全社員を対象に多様性受容(D&I)に関する理解を深めるためのさまざまな周知・研修・ワークショップを行っています。

一連の取り組みの結果、2021年度時点の労働生産性は2010年度に比べて5倍以上に拡大しました。2022年5月からは働き方改革の第2ステージとして、15時以降の早帰りを認める「朝型フレックスタイム制度」、全社員を対象とした「在宅勤務制度」を導入するなど、今後もより一層の働き方改革を通じて、さらなる企業価値の向上に努めて参ります。

「朝型フレックスタイム制度」
2022年5月より「朝型勤務」を進化させ、個々の社員が業務・生活の状況に応じて働き方を選択できる「朝型フレックスタイム制度」を導入。
労働生産性は飛躍的に伸びた
2010年度を1とした場合の労働生産性推移(連結純利益/単体社員数)。「朝型勤務制度」、「健康経営」、「女性活躍支援」などの取り組みにより、労働生産性は飛躍的に伸びた。