Managemant Eye

社会インフラを支えるDNAを受け継ぐ

「平等なコミュニケーションでイノベーションを促す」

株式会社クボタ 代表取締役社長 北尾裕一氏
株式会社クボタ 代表取締役社長
北尾裕一

この企画はリレー形式で展開していますが、今回は、コニカミノルタ株式会社の専務執行役 藤井清孝氏からのバトンとなりました。

藤井さんとは高校と大学では同期でしたが、実際に親交を深めるようになったのは、大学の同窓会で会ったことがきっかけでした。以来、主にプライベートなお付き合いをしています。藤井さんの日本人離れしたビジネススタイルと、先進的なやり方で業界を牽引する姿はとても魅力的ですね。

130年以上もの歴史を誇る御社ですが、その原点と現在についてお聞かせください。

創業者の久保田権四郎は、1890年に鋳物業から会社を興しました。3年後、コレラが流行したことを契機に安心・安全な水を提供するために水道用鋳鉄管の事業に着手。その後は、農工用石油発動機の製造や国産初の畑作用乗用トラクタの開発などに取り組みました。また、水質汚染や大量廃棄物など公害が社会問題となり始めた時代には、ゴミ焼却炉や溶融炉なども開発しています。

こうした事業活動の原点にあるのは、「技術的に優れているだけでなく、社会の役に立つものでなければならない」という創業者の思いです。その時代における社会課題を解決する製品やサービスを提供してきたのが当社の歴史であり、「社会の役に立つ」ことへの挑戦は当社のDNAとして、現在の事業にも受け継がれています。

社会のインフラを支える企業として、現在はどんな取り組みをされているのでしょうか。

当社は、食料・水・環境の分野において、必ず当社の製品やサービスが利用される、皆さんにとって必要不可欠な「命を支えるプラットフォーマー」となることを目指しています。

今、課題となっているのは、農業に従事する方の高齢化ですね。日本の農業生産を守るには省力化は不可欠で、新規参入者が取り組みやすい農業を目指す必要があります。そこで、トラクターなどの自動運転や、1台のトラクターで複数台のトラクターを動かせる農機開発を進めてきました。また、位置情報や作業管理記録などをデータとして見える化し、作業計画や収量向上につなげる「クボタスマートアグリシステム(KSAS)」という支援サービスも提供しています。

もう一つ、喫緊の課題が水問題です。自治体の人手不足といった諸事情により、浄水場や下水処理場のメンテナンスが行き届かないことや、地中に埋められている管路の15%〜20%が耐用年数を過ぎているにもかかわらず、地震に強い耐震管への切り替えが遅れているのが現状です。この課題に対してITやAIを活用し、水道管情報や土質の変化情報などをデータ化する情報システム、問題が発生しそうな管路を発見する診断システム、浄水場や下水処理場のメンテナンスシステムなどを開発し、自治体の困り事を解決する取り組みを進め、「命を支えるプラットフォーマ―」と位置づけて注力しているところです。

そうした開発には、イノベーションが欠かせません。

副社長時代に、これからの生き残りを考え、イノベーションセンターを創設しました。これからは、DXなどの先端技術や異業種分野と連携したソリューションが必要になるはずで、10年先を見据えた研究開発に取り組むのがイノベーションセンターです。すでにさまざまなプロジェクトが立ち上がっていますので、しっかりとサポートしていきたいと考えています。

こうしたイノベーションを支えるのは、やはり人です。かつて大先輩からは、新事業開発には「同時体験則」、「漸進管理」、「平等の原則」の3つが大切と教わりました。イノベーションは未知のことですから、コミュニケーションを密にして情報を共有し、一歩一歩、同時に体験しながら道を進んでいく。それには組織上の上下関係は無用で、誰もが平等に意見やアイデアを出さなければなりません。この3つの教えを礎に、活発なコミュニケーションを図りながら、各部門がお互いに相手の立場に立って取り組むことで、当社の成長を促していきたいですね。

クボタは農業機械の「自動・無人運転」分野においても業界を牽引
農業機械の「自動・無人運転」分野においても業界を牽引。労働力の減少や高齢化といった課題を克服し、力強く活力ある農業を営むための支援サービスを提供している。
クボタが進めている、廃棄物のスラグから有価金属を取り出す装置の実証実験
長年、溶融炉を開発してきたクボタでは、現在、廃棄物を焼却した灰などを高温で溶かして固めたスラグから有価金属を取り出す装置の実用化に向け、実証実験を進めている。