アフターコロナを勝ち抜く、繊維カンパニーのビジネス戦略

垣根を越えてシナジーを生み出し、グループ全体の成長へ(1)

執行役員 ブランドマーケティング部門長 福垣 学

福垣 学

執行役員 ブランドマーケティング部門長

1990年入社。織物貿易第二部配属。研修生として1993年スリランカ、1998年ニューヨークに駐在。2009年ブランドマーケティング第六課長を経て2011年コンバースフットウェア(株)(現コンバースジャパン(株))に出向し、2013年に代表取締役社長就任。2016年ブランドマーケティング第三部長、2018年ブランドマーケティング第一部長。2022年(株)レリアン代表取締役社長を経て、2023年4月より現職。

事業会社同士の垣根を越えた取り組みが始まっている (福垣)

大室5月には新型コロナウイルスが季節性インフルエンザと同等の五類感染症に引き下げられ、繊維カンパニーとしても「削る」、「防ぐ」から「稼ぐ」へとギアチェンジしていくことになるはずです。ここからは、アフターコロナに向けた繊維カンパニーの戦略についてお話しいただけますか。

武内繊維カンパニーのポートフォリオを作成し、当カンパニーのビジネスを「スポーツ」、「シューズ」、「中高級品」、「カジュアル」、「OEM」、「海外」という6つの領域に整理しました。これによって繊維カンパニーの強みを再確認でき、現在欠けているものや強化すべき領域なども明確になったと感じています。4月のプレジデント就任に当たっても、このポートフォリオを常に念頭に置いて、自分が現在いる場所やその延長線上でできることを考えて動いてほしいということをカンパニーの皆さんに伝えました。

ポートフォリオを明確に定義できた要因の一つとして、繊維カンパニー内の部門がコンパクトになり、組織間の壁や垣根がなくなったことがあると感じています。これまでの繊維カンパニーは、伊藤忠商事の中でも連結経営への意識が低かったと思うのですが、今後は領域ごとにさまざまな事業会社を緩やかにつなぎながらシナジーを生み出していくことが重要になってくると考えています。

中西例えば、当部門は以前からさまざまなスポーツメーカーと長年にわたり取引関係にあり、高機能なモノづくりができるノウハウを有しています。そこで培ったノウハウを生かして、今後も得意なOEMをより伸ばしていきたいと考えています。

福垣私がこの3月まで社長を務めていた株式会社レリアンでは、ブランド55周年記念企画として、「LeSportsac(レスポートサック)」とのコラボレーションアイテムを販売しました。また、レリアンや系列店の「NEMIKA(ネミカ)」などの売り場を活用した「mila schön」の販売といった取り組みを予定しており、すでに事業会社の垣根を越えた試みが始まっています。

武内例えばシューズに関しても、展開している「CONVERSE(コンバース)」や「DESCENTE(デサント)」、「UNDER ARMOUR」、「FILA(フィラ)」などを合わせると年間1,000万足規模の取り扱いとなり、これは大手スポーツメーカーと対等に戦えるスケールです。今後これらのブランドがあくまで切磋琢磨しながらではありますが、 生産や販売の面で一緒に取り組めることもあると思いますし、こうしたコーディネーションこそ商社の得意とするところではないでしょうか。

また、他の領域として、百貨店ビジネスを軸としている服飾雑貨系の取引先企業に恩返しをしたいという思いがあります。直近の市況の影響で厳しい状況に追い込まれている企業も少なくない中で、ブランドビジネスを進化させ、お客様の事業を継続させていく必要性を感じています。ヒントになると思うのは、私が株式会社ジョイックスコーポレーションで社長をしていた時代に立ち上げた「Vivienne Westwood(ヴィヴィアン・ウエストウッド)」の雑貨ショップです。ジョイックスコーポレーションでは、「Vivienne Westwood」のメンズを扱っていたのですが、メンズ雑貨のみならず、サブライセンシーからレディスの雑貨なども提供していただき、渋谷パルコ・福岡パルコで店舗を構えて販売しました。 このようなプラットフォーム事業を通じてできることがあるのではないかと考えています。

「LeSportsac」
「LeSportsac」はレリアンとのコラボレーションアイテムを販売した。
韓国総合化粧品ブランド「TONYMOLY」
韓国総合化粧品ブランド「TONYMOLY」の日本市場における独占販売権を取得。