メタバースが切り拓くファッションビジネスの未来

CASE❸ 株式会社三越伊勢丹

百貨店が提供してきた体験価値を仮想空間上に転用するプラットフォーム

2021年3月に公開された「REV WORLDS(レヴ ワールズ)」は、株式会社三越伊勢丹が運営するスマートフォン向けの仮想都市のコミュニケーションプラットフォームだ。舞台となる仮想新宿で営業する仮想伊勢丹新宿店にはさまざまな店舗が出店し、陳列されている商品は実際にオンラインストアで購入できる。百貨店の新しいビジネスの在り方を模索する取り組みとして本プロジェクトを立ち上げた担当者に、その狙いやこれまでの取り組みなどを聞いた。

株式会社三越伊勢丹 営業本部 オンラインストアグループ デジタル事業運営部 仲田朝彦氏

仲田朝彦

株式会社三越伊勢丹 営業本部 オンラインストアグループ デジタル事業運営部

接客の経験から生まれた構想

「REV WORLDS」の構想は、10年以上務めてきた百貨店での接客の経験から生まれました。同じ商品をご購入いただく場合でも、店頭での体験はECサイトに比べて大きな付加価値があることを感じています。メタバースの世界でも同様の体験価値を提供することで、新しい顧客との接点やビジネスモデルがつくれるのではないかと考え、社内起業制度を用いて「仮想伊勢丹新宿店」の企画を提案しました。

最終的に「REV WORLDS」は、バーチャル都市のプラットフォームとして公開することになりました。その背景には、単にバーチャル空間に伊勢丹があるだけではなく、都市空間の中を歩き回り、他の人とコミュニケーションを取りながら買い物も楽しめるプラットフォームにした方が、ユーザーの体験価値が高まるという考えがありました。

百貨店のノウハウをメタバースに活用

仮想伊勢丹新宿店では、デパ地下や人気ショップを再現した売り場に加え、他社のコンテンツも充実させています。出店していただいている企業には、自社のアセットをメタバースで活用するための実証実験をしたいという共通したニーズがあり、伊勢丹新宿店に実店舗を持たない企業からお声がけいただくこともあります。それぞれのケースに対して、いかに高い体験価値を提供できるのかということをパートナー企業とディスカッションしながら売り場づくりを行っています。

売り場づくりで大切にしているのは、実店舗で培ってきたノウハウをしっかり生かすことです。例えば、商品の世界観を最大限に表現する装飾什器をつくったり、お客様が関心を持ちそうな他の商品を近くに陳列するといったことをしています。こうした実店舗で積み重ねてきた百貨店のノウハウをバーチャルの世界にも転用できれば価値はしっかり伝わると思います。

自己表現ツールとしてのアバター

「REV WORLDS」の中心ユーザーは30代ですが、コロナ禍で外出が難しい中、仮想空間での買い物に興味を持たれた70代~80代のお客様からお問い合わせをいただくこともあります。また、仮想伊勢丹新宿店で久しぶりに親子が会えたという感想などもいただいているように、複数のユーザーが体験を共有できることがメタバースの大きな特徴です。一方、「REV WORLDS」上のお客様は思い思いの肌の色や髪型、洋服をアバターにまとわせており、自分らしさを表現して人とコミュニケーションをしたいという欲求はリアルの世界と変わりません。オンラインのコミュニケーションにおいてアバターは自分らしさを豊かに表現できるツールであり、アバターのファッションにも自己実現を支援するものとしてポテンシャルを感じています。

「REV WORLDS」では実店舗と連動した企画も行っていますが、今後はメタバースを通してリアルのファッションの価値を知っていただくような取り組みもしたいですし、リアルとバーチャルそれぞれの世界に価値を提供できるプラットフォームでありたいと考えています。

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