2024年 新入社員への社長メッセージ

2024年4月1日

この度は入社おめでとうございます。本日ここに、総合職134名、事務職21名、合計155名の新しい仲間を迎えることができました。

当社の入社式の恒例となりましたが、今朝も皆さんの為に会場に満開の桜を咲かせ、真っ赤なカーペットを敷き、多くの役員・社員で皆さんの人生にとって大切な社会人としての第一歩をお迎えしました。本日は、岡藤会長CEOやカンパニープレジデント、職能オフィサー、皆さんの受入部署の所属長や先輩社員に加え、来賓の方々にも出席頂いています。改めて、本日この様に皆さんと一堂に会することができたことを大変嬉しく思います。

さて、まず最初に、本日伊藤忠商事の社員となった皆さんに二つの重要な心得についてお伝えします。

一つ目は、当社の行動指針である「ひとりの商人、無数の使命」です。これは、私にとっても、自分をリセットする時にいつも振り返る重要なフレーズの一つです。創業者である初代 伊藤忠兵衛翁の商人の心構えに学び、「商人の使命」は、商いを通して社会の課題を解決し、人々の暮らしを豊かにしていくことだという姿勢を表しています。すなわち、私たち伊藤忠社員一人ひとりは、仕事を通じて、無数にある社会の課題に挑戦し、解決していくという使命を負っており、高い意識を持って仕事に向き合えという事だと思います。

二つ目は、「三方よし」の精神です。近年、企業経営におけるSDGsの重要性が一段と高まりを見せていますが、その中で、たびたび「三方よし」という言葉が引用されています。この「三方よし」は、売り手、買い手、世間の三方が共に満足するという共存共栄の考えにあり、近江商人の経営哲学をルーツとする 現在の当社の企業理念です。創業の精神として引き継がれ、160年間以上続く商いの精神であり、調和の心です。

皆さんのこれからの商人人生の中で、行き詰まったり、失敗したりすることがあるかも知れません。そんな時、自分に原点を振り返らせ、克服するエネルギーを与えてくれるのが「ひとりの商人、無数の使命」と「三方よし」です。この言葉を常に心にとどめておいて頂きたいと思います。

現在、当社は、岡藤会長CEOの指揮の下で「マーケットイン 利は川下にあり」の経営戦略に加え、独自の働き方改革でトップ商社の一角を担うまでに成長し、世間から注目を浴びる会社となりました。皆さんの知る伊藤忠商事も常にトップを争う商社という認識だと思います。しかしながら、当社は非財閥の生まれであり、大阪繊維問屋から現在の総合商社へと成長する過程では、戦乱は当然のこと、その後も成功と挫折を経験しながら、数々の困難を乗り越えてきたという事を知ってほしいと思います。 

これまでの幾多の困難を乗り越えられた原動力は、一人ひとりの社員の頑張りに他なりません。困難を乗り越えるのも社員たち、これからの未来を切り開くのも社員たちの力です。今日から皆さんも当社の社員です。皆さん一人ひとりが強い社員となり、次の伊藤忠の未来を担う原動力となることを期待しています。

さて、本日から皆さんは伊藤忠の商人になる為の見習いを始めることになりますが、知識の習得以外に磨いて欲しい事があります。それは、デジタル時代だからこそ価値のある人間力と感性の磨きです。人間力が磨かれれば、自ずと人を惹きつけ、人脈も広がっていきます。そして、感性を磨くことで、一歩先を読む力やお客様が求めるものの本質を見抜く力を身につけることができます。このことは、皆さんが独自に磨き上げるスキルであり、こればかりは流石のChat GPTも教えてはくれません。 

また基本動作としては、地道なことかもしれませんが、現場を大事にして、足を動かすことだと思います。好奇心を持って現場に出ていき、目で見て、手で触って、人と会話して、あらゆる物事をよく観察することから始まる経験の積み重ねが、皆さんを磨き、プロの商人へと導いてくれると思います。ビジネスの基本は信用です。信用の無い仕事は長続きしません。人間力と感性を磨いていれば、必ず周囲からの信用を得ることができます。そして、その信用がまた次のビジネスに繋がり、信用の連鎖が生まれていきます。是非これから現場で、リアルの難しさ、人との交流の楽しさを感じてください。デジタル時代においても、人は心で動くものだと思います。

先日私は韓国と中国へ出張し、各国トップ企業のCEOや政府幹部の方々と面談をしてきましたが、海外出張に行くときには、毎回必ず駐在員と面談・会食を行い、現地の取組に耳を傾けるようにしています。世界各国の駐在員たちの生の話と意気込みを聞くことは、私にとっても熱いエネルギーとなっており、特に、次の未来を担う若い世代の駐在員が商いの現場に入り、現地の方々と一緒に仕事に熱中している姿を見ると、本当に嬉しく、また、大変頼もしく思います。私は、リアルの現場に出ることの価値は、もっと会社に貢献したいという気持ちに加えて、目の前の現場の為に全力を尽くしたい、お客様を笑顔にしたい、共に働く仲間達と一緒に喜びを分かち合いたいという気持ちを感じることだと思っています。これから皆さんにも、是非そのような経験をして頂きたいと思います。

最後になりますが、皆さんはどのような希望を抱いて今日の日を迎えていますでしょうか?今から41年前に私は伊藤忠商事に入社しました。商社に入れば世界の舞台で活躍できる、多様な産業の中で幅広い経験ができる、そして何よりも、面接の過程で出会った魅力的な先輩や同期と一緒に働きたい、そんな期待を胸に入社したことを覚えています。私は採用面接のときに「人生とは真っ白なキャンバスに絵を描いていくようなものだ。だったら、伊藤忠商事でより大きくて色彩豊かな現場の絵を描きたい」と言いました。私自身もまだまだ夢半ばではありますが、一つだけ確実に言えるとすれば、伊藤忠商事は皆さんが内に秘めているエネルギーと情熱を全力で受け止めてくれる会社だということです。これから皆さんと一緒に、無数の使命を果たしていけることを楽しみにしています。

改めて、皆さんの入社を心から祝福し、私の歓迎の挨拶とします。