新造アンモニアバンカリング船の発注について
2025年7月14日
伊藤忠商事株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長COO:石井 敬太、以下「伊藤忠商事」)は、この度、当社100%子会社で、在シンガポール特定目的会社のClean Ammonia Bunkering Shipping Pte. Ltd.(以下、「CABS社」)を通じて、佐々木造船株式会社(以下「佐々木造船」)、泉鋼業株式会社(以下「泉鋼業」)との間で、5,000 m3型アンモニアバンカリング船(以下「本船」)建造に関する建造契約、及び本船に搭載するアンモニアタンクプラント製造に関する請負契約(以下、両契約を総称して「本契約」)を、それぞれ締結しました。同時にCABS社は株式会社広島銀行との間で本船建造資金に関する融資契約を締結しました。
国際海運における脱炭素化の進展
国際海事機関(IMO)は「2050年頃までに国際海運からの温室効果ガス(GHG)の排出をネットゼロにする」という国際目標の実現に向け、各国と様々な協議を重ねています。今年4月には、中期施策として、舶用燃料を段階的にGHG排出量の少ない代替燃料に転換する制度や、ゼロ・エミッション燃料船導入に対して経済的インセンティブを与える制度を含む条約改正案が、国際間で承認されました。この枠組みが発効すると、GHG排出量の少ない代替燃料供給に向けた取組みや、ゼロ・エミッション燃料船の導入が加速します。
また、代替燃料の中でも、アンモニアはゼロ・エミッション燃料として期待されており、アンモニア燃料船は、船会社、造船所や荷主等、現在多くの海事関係者が検討し、開発を進めています。その中で舶用アンモニア燃料の供給を行うアンモニアバンカリング事業は、海事産業と燃料産業の接点であり、特にバンカリング船は燃料供給のラストワンマイルを担う重要な設備として世界でも注目されています。
本契約の背景
本契約は、経済産業省の令和5年度補正「グローバルサウス未来志向型共創等事業(大型実証 ASEAN加盟国)(第2回公募)」に採択された「シンガポール国/舶用燃料アンモニア供給実証事業」に基づいたものです。今後、世界初となる新造アンモニアバンカリング船を建造し(シンガポール船籍、2027年9月完工予定)、シンガポールでのアンモニアバンカリング実証に向け、シンガポール海事港湾庁(MPA)等、海事関係者や燃料生産者との具体的な協議を、日本国政府の支援を得ながら進めていくことになります。
今後について
当社は、「統合型プロジェクト」※1)推進のための重要なステップとなる本船建造や実証を通じて、洋上での安全な舶用アンモニア燃料の供給オペレーションを確立します。その上で、アンモニア燃料船とクリーンアンモニア生産における先行者を本船で繋ぎ、舶用アンモニア燃料の初期需要を確保することで、シンガポールでのアンモニアバンカリングの事業化を実現し、将来的にはスペイン(ジブラルタル海峡)、エジプト(スエズ運河)、日本等、世界の主要な海上交通要所への拡大を目指します。
また、本船建造実績や実証での知見を活かし、需要が増しているアンモニアバンカリング船、アンモニアタンク製造における日本造船産業の競争力強化に貢献してまいります。
伊藤忠商事は、経営方針「The Brand-new Deal~利は川下にあり~」を掲げ、市場・社会等のあらゆるステークホールダーの声に耳を傾けながら、「SDGsへの貢献・取組強化」を推進しています。今後もアンモニア燃料船の「統合型プロジェクト」を推進し、アンモニア燃料船の早期の社会実装を実現することで、国際海運における脱炭素化に貢献してまいります。
- ※1)「統合型プロジェクト」は、アンモニア燃料船の開発と、舶用アンモニア燃料の世界的なサプライチェーンの構築という両面から構成される。
各社役割
船主 | Clean Ammonia Bunkering Shipping Pte. Ltd.(「CABS社」、伊藤忠商事100%子会社、在シンガポールの特定目的会社) ・佐々木造船に5,000 m3型アンモニアバンカリング船、泉鋼業にアンモニアタンクプラントを発注。シンガポール船籍の本船を保有し、シンガポールにてアンモニアバンカリング実証を行う。 |
---|---|
造船所 | 佐々木造船株式会社(本社・広島県豊田郡大崎上島町) ・ケミカルタンカー、液化ガス運搬船など特殊船建造や自社独自の設計・開発能力に強みを有する造船所。 (HP:https://www.sasakizosen.com/indexj.html ) |
タンク製造者 | 泉鋼業株式会社(本社・香川県高松市) ・舶用LPGタンク製造では国内最大手。中小型の加圧式舶用LPGタンクプラントでは世界で40%以上のシェアを有する。日本政府補助金を活用し、需要の増す舶用アンモニア燃料タンクの増産を計画。 (HP:https://www.izumi-steel.co.jp/ ) |
融資行 | 株式会社広島銀行(本社・広島県広島市) ・地場の造船・海運産業育成や支援の観点より融資を行う船舶ファイナンスの有力行。本船建造の一部資金を融資。 (HP:https://www.hirogin.co.jp/ ) |
取引図
|
今後のスケジュール
時期 | 内容 |
---|---|
2025年6月 | アンモニアバンカリング船建造契約締結 |
2027年9月頃 | 完工 |
2027年10月以降 | シンガポールでのバンカリング実証 |
舶用アンモニア燃料供給事業取引図
|
- ※2)ZETA Bunkering Pte. Ltd.(伊藤忠商事100%子会社、在シンガポールの特定目的会社)
本船イメージ図
|