Project Way
Issue
課題・背景

数値目標の追求や「働きやすい」制度の拡充が、会社の目指す方向とは異なる展開に。

課題・背景

2003年、人材多様化推進計画を策定し、他社に先駆けて女性総合職数の拡大や制度の整備を進めてきた伊藤忠商事。
女性社員数は一定数まで増加、育児・介護との両立支援制度が整っていった。

一方で、現場の受入環境が整っていない中で、採用の数値目標の達成を追求したことから、離職に繋がるケースが発生。また、働きやすい環境の実現に向けて導入した配偶者の海外休職転勤制度は、育児休業との連続利用により長期のキャリアブランクを生む結果に。会社が当初想定していたキャリア継続支援の形とはならなかった。どうすれば女性の活躍を推進できるのか?道筋が見えない状態が、一定期間続いた。

そんな中、2010年、社長の交代を契機に「働き方改革」が本格化。2013年には「朝型勤務」が始まる。この時、朝型勤務による全社員の働き方改革が、結果的に女性の活躍も後押しするとは誰も想定していなかった。

採用数値目標を撤廃。配偶者の海外休職転勤制度も廃止し、再雇用制度を導入した。ここから、一律支援ではない、現場の声を踏まえた個別支援に力を入れることとなっていく。

Objectives
目的

消費者に近いビジネスを強みとする伊藤忠商事。
「マーケットイン」の発想でビジネスを進める上で、女性の活躍は不可欠。

目的

昨今、あらゆる産業で、川上のメーカーから川下の消費者に主導権が移り、消費者との接点を持つ企業がより多くの利益を獲得する潮流が加速している。“モノを持たない”総合商社は、プロダクトアウト型のビジネスから脱し「マーケットイン」の発想でビジネスを再構築する必要があると、伊藤忠商事は常々考えてきた。持続的に個の力と組織力を強化し、収益力を高めるためには、組織としての多様性が重要。そこに女性の活躍は不可欠である、という一貫した考えのもと、一連の施策を推進している。

また、コーポレートガバナンス・コードの改訂、人的資本重視の流れと相まって、社会的にも女性活躍への要請や注目度は高まってきている。多様な人材が活躍できる風土を醸成することは、中期経営計画の基本方針の一つである「SDGsへの貢献・取組強化」(ジェンダー平等)にも寄与し、企業価値の向上につながると考えている。

Results
実践と成果

全社員の働き方改革が、女性社員のキャリア継続・定着につながった。

2021年9月に実施した、出産を経て職場復帰した社員へのアンケートで、“働きながら子育てできると思った理由”の最も多かった回答が「職場全体の働き方」だった。社内全体の働き方が変わったことで、出産後もキャリアを諦めずに働き続けることができている、という声が多い。つまり、朝型勤務等の働き方改革により、男女問わず働く意識や職場の習慣が変化したことが、女性活躍推進にも功を奏したと言える。

さらなる活躍に向けて。

2021年10月、さらなる女性活躍を推進するため、取締役会の任意諮問委員会として「女性活躍推進委員会」を設置。委員の半数にあたる3名が女性、3名が社外役員であり、女性や外部からの新しい視点を通じた議論を重視している。また、女性社員向けのアンケートや座談会、個人面談等、現場へのヒアリングを徹底的に実践し、①現場との協議、②女性活躍推進委員会での議論、③取締役会への報告というサイクルで実効性ある施策に落とし込むことを目的とした。

女性活躍推進委員会
女性活躍推進委員会

何故、取締役会の任意諮問委員会として女性活躍推進委員会を設置したのか?

多くの企業が女性活躍推進の重要性を謳っているが、その取組みを全社に敷衍して行くことは容易ではない。ともすれば人事部門だけがあくせくしているという構図になりがちだ。世の中では、女性活躍推進委員会に類する機関を設置する向きもあるが、殆どが執行側の社内委員会であり、そのトップは執行役員で、判断は執行側に委ねられている。

当社で設置した委員会は取締役会の任意諮問委員会である。女性活躍推進政策について取締役会から諮問を受け、審議・答申する責務を担い、ガバナンス・指名・報酬委員会と同様、委員長を独立社外取締役とし、委員も半数以上を社外役員としている。従い、しっかりとした社外の第三者視点を入れることにより、取締役会の監督機能と透明性を強化し、持続的な企業価値向上に資する株主利益を守るものと言って良い。

これは会社の本気度を示すもので、政策に就いては、株主を含む様々なステークホルダーに対しても説明責任を担わなくてはならない。中々推進することが難しい課題に対して自らがガバナンス上も身を正して、全社政策として推進して行くことを促す体制と言える。

2023年9月20日
代表取締役 副社長執行役員 CAO
小林 文彦

Outline
施策概要

現在、女性の採用数が拡大した世代が役職候補となり得る重要なステージに入ってきています。また、共働き世帯の増加も見据え、法定を上回る水準の両立支援制度をセーフティネットとして活用しながら、個々人のライフステージやキャリアに応じたきめ細かい個別支援を行っています。

約20年におよぶ女性活躍推進の変遷

約20年におよぶ女性活躍推進の変遷
約20年におよぶ女性活躍推進の変遷
  • 2023年度は、特にフェムテック、男性の育児参加の取組みに注力しています。
    当社の20、30代の多くは共働き世代であり40代後半、50代の男性社員の多くが歩んできた仕事生活・時間の過ごし方とは大きく異なります。 固定観念から脱却し、性別を問わず、社員一人ひとりが最大限能力発揮できる環境を如何につくっていくか、「厳しくとも働きがいのある会社」にむけて引き続きチャレンジしていきます。
Data
データ集

■ 働き方改革の推進とともに、出生率が上昇

データ集

昨今、出生率の低下が日本全体の重要課題となる中、2021年度は全国1.30や東京都1.08に対し、当社の社内出生率は1.97に。朝型勤務をはじめとした一連の「働き方改革」が奏功した結果と捉えている。

※厚生労働省の人口動態統計における2021年の期間合計特殊出生率

■ 男性社員の共働き比率が約30%上昇

データ集

過去20年で男性社員の共働き比率が約30%上昇(20代は90%)。社内における変化をしっかり捉え、多様な働き方を支援している。

■ 海外駐在女性社員の活躍(2023年3月31日現在)

データ集

人材育成の一環として、入社8年目までの海外駐在の機会を付与している。

■ 女性活躍推進法等に基づく一般事業主行動計画を策定

男性の育児休業
取得率
52%
※2022年度

データ集
伊藤忠健康憲章
健康経営戦略マップ