次世代2:伊藤忠グループのCSV

Dole Philippines社の地域との共生による持続的な発展

「反政府活動よりもパイナップル」

当社が2013年に買収した、世界最大の青果物メジャーDole Food Companyのアジア青果物事業とグローバル加工食品事業は、最大生産拠点であるフィリピンで自然災害等により生産数量が減少していました。しかし、当社の資金力の活用及びマネジメント・現場への人材派遣等を通じて生産量、収益力が回復し、現在では増産体制を整え、アジア最大の農産物インテグレーターに向けた取組みを推進しています。

初期費用のローンや栽培ノウハウ、収穫物の買い取り等を提供
従業員の勤務年数・態度に対して住宅を建設するプログラムを提供

Dole International Holdings(株)傘下のDole Philippines社パイナップル部門(Dolefil)の歴史は、Dole FoodCompanyがフィリピン・ミンダナオ島に入植した1963年に遡ります。パイナップルの生産プロセスは労働集約的な側面が強く、ビジネスインフラも整備されていない地域でのビジネスとなります。そのためDolefilは、地域との共生を重視した経営を徹底することで、半世紀に亘る持続的な事業発展を実現してきました。例えば、パイナップル栽培は一定期間(3年1周期)の資金負担が必要です。そのため農家に対して、初期費用のローンや生産効率の向上ノウハウの提供、収穫物の買い取り等により参入障壁を下げると共に、栽培事業の安定性も支援しています。また、勤務年数・態度等の評価を点数化し、高い点数の従業員を対象者として住宅を建設するプログラムは、生活インフラの支援と生産性の向上をリンクさせている一例です。

反政府武装勢力が活動を行う、治安が不安定な地域での農場経営であるにもかかわらず、これまでそうした勢力からの被害がないことが、地域との信頼関係を物語る何よりの証左です。

強固な「産業クラスター」

地域が事業を守る「Social Fence」

Dolefilの社会貢献と成長戦略を統合した取組みは、「Social Fence」、すなわち地域が事業を守るというコンセプトです。Dolefil のCSR 部門からスピンアウトしたNGOであるMahintana Foundation, Inc.(MFI)や、地域政府等との連携により、産業や雇用の創出、環境保護・森林再生、教育、生活支援、従業員福祉、健康・安全など多岐にわたる取組みを行い、地域に強固な「産業クラスター※」を形成しています。

【財源として学校への寄付】【雇用創出】【リサイクル】【地域貢献】

例えば、社員の給与から一人当たり5ペソ/月が天引きされ、労働組合・Dolefilが補填することで天引き額の5倍の金額を確保し、これを財源に地域の学校への寄付を継続的に行っています。更に寄付金を財源とし、地域の木工業者に児童用の椅子を発注することで雇用を創出し、使用済みパレットを椅子用木材として提供することで、資材のリサイクルにも繋げています。寄付と引き換えに児童に植林への参加を要請する等、地域貢献への参加を拡大し、植林用の苗木を地元に発注することで雇用を創出する、というサイクルを回しています。

環境保全においても「サイクル」を回しています。DolefilとMFIが主導する「Ridge to Reefプロジェクト」は、河川を保護して土砂の流出をコントロールし、海洋資源を保護することを目的とし、地方政府、地元企業、取引先等も巻き込んだ一大プロジェクトとなっています。活動への寄付金の一部は、地元の育苗業者の苗育成や仕入に充てられており、Dolefilの植林活動用の苗木の需要を満たすと共に、地域住民に対する安定的な雇用の創出にも繋げています。

※ 産業クラスター:特定の産業を形成する主体が地理的に集積した状態。米国の経営学者であるマイケル・E・ポーター教授は、「企業が拠点を置く地域を支援する産業クラスターを作る」をCSVの三つのアプローチの一つとして提唱している。

「三方よし」にも通じるDolefilのCSV

2018年、MFIは事業を通じた社会貢献が評価され、フィリピンNo.1 NGOとして表彰されました。また、2年ごとに開催されているDepartment of Labor and Employmentによる、企業と社員の関係が優良な企業を表彰するコンテストでも、2015年と2017年の2回連続で最優秀企業に選出されました。

Dolefilが本拠を置くポロモロック市は、自治体とDolefilの相乗効果を通じ、フィリピン全体で6番目、ミンダナオ島では最も競争力のある自治体となっています。“Dole is Polomolok, Polomolok is Dole”というポロモロック市長の声明が示す通り、Dolefilは地域に深く根ざした企業として認められています。

現地雇用を創出し、地域住民の暮らしを向上させることで「Social Fence」の範囲も拡大し、事業の持続性と生産性・品質を高めるという、「三方よし」にも通じるDolefilのCSV(Creating Shared Values)。当社は様々な機能の提供を通じ、そうしたアプローチをサポートすることで、Dole事業の持続的な企業価値の向上を実現していきます。