次世代1:「商いの次世代化」に向けて

「第4次産業革命」が進展する中、当社グループが長きに亘り磨き上げてきた既存ビジネスを強みとし、そのバージョンアップを図っていくことで、伊藤忠商事ならではのビジネス革新を追求していきます。

リアル資産を強みに「商いの次世代化」を推進

世界の様々な産業で「第4次産業革命」が進展しています。「デジタルジャイアント」が巨大な経済圏を構築し、創業から間もない企業が、先端技術を駆使したビジネスイノベーションで、伝統的な産業に「ゲームチェンジ」を巻き起こしています。7つのカンパニーが事業を展開する当社の幅広い産業領域でも、大きな構造変化が加速度的に進んでいます。
当社は、リアルビジネスにおいて長きに亘り既存事業に磨きをかけ、顧客基盤やパートナーとの関係性、ビジネスノウハウ等の無形資産を含む、優良資産を築き上げてきました。そうした当社ならではの資産を強みとし、すべての領域において新技術を取込みながら「稼ぐ・削る・防ぐ」を進化させることで「商いの次世代化」を推進し、変化をチャンスに変えていきます。

生活消費分野におけるバリューチェーンの価値向上

小売業界では、消費者優位の構造が一層強まっています。そのため消費者ニーズの的確な把握、最適なチャネルでの販売が競争力のカギとなっています。近年、EC企業のリアルへの進出が加速していますが、その大きな目的は、生活消費資材の9割以上が消費されるリアル店舗での消費者データの取得にあります。
全国に約17,000店舗を展開し、一日当たり延べ1,500万人が来店するユニー・ファミリーマートホールディングス(株)(UFHD)は、当社グループ最大の消費者接点であり、膨大な消費者データの確保が可能です。また、(株)日本アクセスは全国550の拠点を中心に約10,000台のトラックを保有し、低温度帯物流網は高い競争力を誇ります。この他、世界最大の青果物メジャーであるDole International Holdings(株)や輸入車販売最大手の(株)ヤナセ等、極めて潜在力が大きい資産を有しています。こうしたビジネスインフラを基盤に、全社横断的にバリューチェーンの価値向上に取組んでいます。

すべての領域において新技術を取込み、「稼ぐ・削る・防ぐ」を進化

全事業部門で「次世代化」を推進

当社が「商いの次世代化」を推進するにあたり、一番留意しなくてはいけないことは、当社は総合商社であるため、世の中に技術革新を巻き起こすような先端技術や新商品そのものを開発するのではなく、顧客の価値観に沿った新しいビジネスモデルの構築が中心となるという点です。当社は、既に非資源分野、特に生活消費分野に強固な収益基盤を構築してきているため、それらを構成するビジネスの一つひとつを丁寧に見直し、先端技術の活用により新たな付加価値を創造し、現在は点と点で独立したビジネスを線で繋ぐ、更には面的に広がりを持った新たなビジネスモデルに変えていく、いわば「既存ビジネスのバージョンアップ」を図っていく方針です。新しいビジネスモデルの構築を模索する際に、当社の総合商社としてのノウハウと経験、顧客基盤やパートナーの関係性がキーワードであり、感じるセンスとそれを実行する「個の力」がポイントになります。当社の「働き方改革」を中心とした諸施策を背景に社員の労働生産性や発想力を高めることで、「第4次産業革命」を追い風に変え、持続的な企業価値向上を実現していきます。

主な取組み

「生活消費分野バリューチェーンの価値向上」の事例

「生活消費分野バリューチェーンの価値向上」の事例
データの分析・解析基盤構築

UFHDのグループ店舗に日々来店されるお客様の購買データや顧客動向データをビッグデータ化し、多面的に分析・解析するID基盤の構築を「次世代化」の起点と位置付け、UFHDと一体となってITインフラ等の準備を進めていきます。
第一ステップとして、お客様との接点を更に増やすべく、専用アプリの導入等を通じて顧客基盤の構築、データの蓄積を進めていきます。2017年11月に実施した当社グループ及び(株)ファミリーマートによるポケットカード(株)のTOBも、こうした消費者接点の強化に向けた取組みの一環です。
また、UFHDではAIやIoT等の新しい情報技術を活用したビジネスオペレーションの効率化に取組む他、当社とUFHDは(株)UFI FUTECHを設立し、キャッシュレス化対応やフィンテック関連ビジネスも推進していく方針です。

バリューチェーンの最適化

データの分析・解析結果を活かした需要予測によって、バリューチェーン全体の最適化を推し進めていきます。消費者ニーズや行動理解を、ファミリーマート店舗における機会損失の低減と仕入、保管、廃棄、物流コストの削減、更には店舗オペレーションの省力化等に繋げていきます。また、(株)日本アクセスをはじめとするバリューチェーン上のグループ企業の商取引データを統合した共通プラットフォームを構築することで、中間流通における流通在庫の削減やメーカーの生産量管理、並びに商品開発等にも繋げていきます。更に、 (株)日本アクセスに関しては、流通システムの次世代化により競争力を高めていき、幅広い顧客の開拓を進めていきます。

新たな収益機会の創造

将来的には、共通基盤上のデータの分析・解析結果を活かした精度の高い広告等のOne-to-Oneマーケティングや個人向け金融サービス、取引履歴に基づく中小企業向け融資サービス等、様々な可能性を視野に入れていきます。