コーポレート・ガバナンス
取締役会の変遷

社外取締役からのメッセージ
更なる取締役会の実効性向上を目指して

望月 晴文
経済産業事務次官を経て、2014年6月に当社監査役、2017年6月に当社取締役就任。2018年度は指名委員会の委員長を務め、経営陣幹部の選解任や後継者計画について実質面での議論を主導。また、内部統制・コンプライアンスや次世代ビジネスを含む幅広い視点から数多くの有益な提言等を行っている。
私が社外取締役に就任した2年前と比べ、当社取締役会の実効性は確実に向上していることを実感しています。取締役会においては、私たち社外取締役に対して、議案に関する十分な情報提供がなされ、また、取締役会議長を含む社内取締役が、経営上の重要な決断を下すにあたり、社外からの視点を積極的に取入れる姿勢を見せています。そういった社内の取組姿勢は、よりオープンで活発な議論に繋がり非常に有効であると考えています。議案によっては、当社の内部統制やコンプライアンス等に関して、社外取締役として監督機能を発揮する必要があります。そのためには、当社のビジネスの実態や議案の経緯等、社内の状況をしっかりと理解していなければ、議論が有効なものとなりません。当社では、国内外事業会社視察や各カンパニーにおけるビジネスの説明等、様々な機会を通じて、社外取締役が理解を深めることができています。
また、2018年度には、私が委員長を務める指名委員会において、定期的に後継者計画を審議することが決定されました。当社にとっての重要課題の一つであり、より実質的な中身のある議論を行うことを通じ、引続き当社の持続的な発展に貢献していきたいと考えています。
「新たな商社像」への進化に向けて

中森 真紀子
公認会計士としての財務及び会計に関する高度な専門知識と豊富な企業経営者としての経験を持つ。2019年6月に当社取締役就任。当社ガバナンス・報酬委員会委員。
当社は、持続的成長基盤の構築に向け、積極的な成長投資、資産入替等を通じ、新技術の活用等による次世代型成長モデルへの進化を進めています。160年を超える伊藤忠商事の長い歴史の中で、大きな転機となる「新たな商社像」への進化を目の当たりにできること、私自身がそれに関与できることを楽しみにしています。
私は、公認会計士として多数の企業の監査業務に携わり専門知識を得てきたことに加え、複数のベンチャー企業において、社外取締役または社外監査役として経営に携わってきました。多岐にわたる企業で得た経験をもとに、当社が目指す「ビジネスの次世代化」にぜひ貢献していきたいと考えています。
また、私は、当社の現取締役会メンバーの中では2人目の女性取締役として就任しました。取締役会がダイバーシティを積極的に推進する中で、その効果の一つとして、多様な視点に基づく意見が取締役会の場で交わされることがあると考えています。女性であるという点を含め、多様な価値観を意識して議論に加わることで、当社取締役会の内容をより充実したものとし、当社ガバナンスのより一層の向上に寄与していければと考えています。
社外取締役・社外監査役の主な経験分野
当社は、経営の「執行」と「監督」の分離を促進することを目的として、2017年度よりモニタリング重視型取締役会に移行しています。適切な経営の「監督」を行うことのできる取締役会として、総本社職能担当オフィサーに加え、社外取締役比率を3分の1以上とする複数名の社外取締役を選任しています。
当社の社内取締役については、豊富な業務経験と総合商社の経営全般に関する知見を有する人材を選任し、社外取締役については、より専門的な視点及び多様性等を備える人材を選任することで、当社取締役会の機能を更に高めています。また、社外監査役については、財務・会計・法務に関する知識等を有する人材を選任することで、当社の経営に対する中立的かつ客観的な視点からの監視・監督を可能にしています。
各社外取締役・社外監査役の役割、主な専門的経験分野等は、以下の通りです。

取締役会の実効性評価の概要
当社では、取締役会の実効性の維持・向上を目的として、取締役会の実効性に関する評価を実施しています。
2018年度の取締役会評価の実施要領
対象者 | 2018年度の全取締役(8名)及び全監査役(5名) |
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実施方法 | 外部コンサルタントを起用し、対象者に対するアンケート及び個別インタビューを実施 |
質問内容 | 以下5つの大項目に関する事項
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評価プロセス |
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2018年度の評価結果の概要
取締役会の構成、任意諮問委員会の構成、役割・責務、運営状況、情報提供・トレーニングの面において、当社の取締役会の実効性は確保されていることを確認しました。
外部コンサルタントより、「①アンケート設問の大多数でスコアが改善している、②取締役会議長及び事務局がガバナンス向上に向けて社外役員と連携し、より効率的で高密度な取締役会の運営を実現している、③社内役員及び社外役員双方の努力により任意諮問委員会の客観性・独立性・透明性が向上している」との評価がありました。
実効性評価における課題の進捗と今後の課題

コーポレート・ガバナンス体制概要
これまでのコーポレート・ガバナンス強化施策の経緯

コーポレート・ガバナンス体制早見表
機関設計の形態 | 取締役会・監査役(監査役会)設置会社 |
---|---|
取締役の人数(うち、社外取締役の人数) | 10名(4名) |
監査役の人数(うち、社外監査役の人数) | 5名(3名) |
取締役の任期 | 1年(社外取締役も同様) |
執行役員制度の採用 | 有 |
社長の意思決定を補佐する機関 | HMC*1が全社経営方針や重要事項を協議 |
取締役会の任意諮問委員会長 | ガバナンス・報酬委員会及び指名委員会を設置 |
当社のコーポレート・ガバナンス体制及び内部統制システムの概要図

取締役会の任意諮問委員会
名称 | 役割 |
---|---|
ガバナンス・報酬委員会 |
執行役員・取締役の報酬制度、その他ガバナンス関連議案の審議 |
指名委員会 |
執行役員の選解任、取締役・監査役候補の指名、取締役・監査役の解任、役付取締役・役付執行役員の選定・解職等の議案の審議 |
ガバナンス・報酬委員会及び指名委員会の構成
氏名 | 役位 | ガバナンス・報酬委員会 | 指名委員会 |
---|---|---|---|
岡藤 正広 |
代表取締役会長CEO |
○ |
○ |
鈴木 善久 |
代表取締役社長COO |
○ |
○ |
小林 文彦 |
代表取締役 |
|
○ |
村木 厚子 |
社外取締役 |
◎(委員長) |
○ |
望月 晴文 |
社外取締役 |
|
◎(委員長) |
川名 正敏 |
社外取締役 |
○ |
|
中森 真紀子 |
社外取締役 |
○ |
|
山口 潔 |
常勤監査役 |
|
○ |
土橋 修三郎 |
常勤監査役 |
○ |
|
間島 進吾 |
社外監査役 |
|
○ |
瓜生 健太郎 |
社外監査役 |
|
○ |
大野 恒太郎 |
社外監査役 |
○ |
|
(7名) |
(8名) |
主な社内委員会
名称 | 委員長 | 目的 |
---|---|---|
内部統制委員会 |
CAO |
内部統制システムの整備に関する事項の審議 |
開示委員会 |
CFO |
企業内容等の開示及び財務報告に係る内部統制の整備・運用に関する事項の審議 |
ALM委員会 |
CFO |
リスクマネジメント体制・制度及びB/S管理に関する事項の審議 |
コンプライアンス委員会 |
CAO |
コンプライアンスに関する事項の審議 |
サステナビリティ委員会 |
CAO |
サステナビリティ及びESG(ガバナンスを除く)に関する事項の審議 |
投融資協議委員会 |
CFO |
投融資案件に関する事項の審議 |
新本社ビル開発委員会 |
CAO |
東京新本社ビルに関する事項の審議 |
2018年度レビュー
コーポレート・ガバナンス体制のもとで取組んだ、2018年度の主な取組実績は以下の通りです。
取締役会 | 17回 |
---|---|
社外取締役の取締役会への出席状況 | 100% |
社外監査役の取締役会への出席状況 | 99% |
監査役会 | 13回 |
社外監査役の監査役会への出席状況 | 100% |
①中期経営計画(当該計画公表後レビュー含む) |
---|
②株主還元 |
③ユニー・ファミリーマートホールディングス㈱の連結子会社化 |
④2018年度に受けた排除措置命令等への対応 |
⑤役員報酬 |
⑥コーポレートガバナンス・コード改訂への対応 |
役員報酬
企業価値と連動した透明性の高い報酬制度

取締役報酬制度の概要
当社の取締役報酬制度は、「業績拡大のインセンティブ」の目的で設計されています。総報酬に占める業績連動型賞与の割合が高く、また、過去より算定式を含めて本報酬制度を対外的に開示しており、透明性が高いことが特徴ですが、中長期的な業績向上と企業価値増大への貢献意識を高めるため、報酬の一部として株式報酬を含めています。
2019年度の取締役(社外取締役を除く)報酬制度は、①月例報酬、②業績連動型賞与、③株価連動型賞与及び④業績連動型株式報酬(信託型)で構成されています。③株価連動型賞与は、2018年度に導入した時価総額連動型賞与を改定したもので、導入時に採用した単年度ベースでの設計ではなく、各中期経営計画の期間中における当社の株価成長率を、東証株価指数(TOPIX)の成長率と相対評価した上で賞与額を算定するものです。なお、②業績連動型賞与は短期(単年度)の業績に連動する報酬、③株価連動型賞与及び④業績連動型株式報酬は中長期的な企業価値の増大を意識するための報酬と位置付けています。
取締役報酬制度の決定プロセス
当社の取締役報酬制度については、事業年度ごとに当該事業年度における経営計画を踏まえて、取締役会の任意諮問委員会であるガバナンス・報酬委員会で審議の上、取締役会にて決議しています。
連動指標
連結純利益は、成長に向けた投資や株主還元の原資となる分かりやすい指標であるため株式市場の関心が高く、今後も指標としての重要性は揺るがないと考えており、また、従業員の賞与も連結純利益に連動させていることから、②業績連動型賞与及び④業績連動型株式報酬の連動指標は「連結純利益」としています。また、③株価連動型賞与については、各中期経営計画の期間中における当社の「株価成長率」を連動指標としています。
報酬の種類 | 内容 | 固定/変動 | 報酬限度額 | 株主総会決議 |
---|---|---|---|---|
①月例報酬 | 役位ごとの基準額をベースに会社への貢献度等に応じて決定 | 固定 | 月例報酬総額として年額8億円 (うち、社外取締役分は年額1億円) |
2019年 6月21日 |
②業績連動型 賞与 |
連結純利益に基づき総支給額が決定し、取締役の役位ポイントに応じて個別支給額が決定 | 変動 (単年度) |
賞与総額として年額20億円 ※社外取締役は不支給 |
|
③ 株価連動型 賞与 |
中期経営計画の期間中における当社の株価成長率を、東証株価指数(TOPIX)の成長率と相対評価した上で賞与額を算定*1 | 変動 (中長期) |
||
④ 業績連動型 株式報酬 |
連結純利益に基づき総支給額が決定し、業績連動型賞与の個別支給額の算出にあたり使用する取締役の役位ポイントに応じて個別支給額が決定*2 | 以下は2事業年度分かつ取締役及び執行役員を対象とした限度額 ・当社から信託への拠出上限額:15億円 ・ 対象者に付与するポイントの総数:130万ポイント (1ポイント=1株として換算) ※社外取締役は不支給 |
2016年 6月24日 |
- 各事業年度における当社株価及びTOPIXの成長率をベースに当該事業年度における賞与額を算定した上で、中期経営計画の期間終了時に同期間中の各事業年度の賞与額を合算します。当該賞与額の支給時期は、役員退任後となります。
- 株式報酬については、役員在任中は毎年ポイントを付与し、役員退任時に累積したポイント分に相当する株式報酬を信託よりまとめて支給することとしています。
取締役全報酬に占める業績連動報酬の割合

現行の取締役報酬制度においては、業績連動型賞与の割合を一定の水準には固定せず、当社の業績が拡大するにつれて取締役の総報酬に占める業績連動型賞与の割合が高くなる設計としています。
役員区分 | 人員 | 報酬等の総額 (百万円) |
内訳(百万円) | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
月例報酬 | 賞与 | 特別賞与 | 株式報酬 | ||||
取締役 | 取締役(社内) | 5名 | 1,731 | 445 | 1,000 | 113 | 173 |
社外取締役 | 5名 | 48 | 48 | - | - | - | |
合計 | 10名 | 1,779 | 493 | 1,000 | 113 | 173 | |
監査役 | 監査役(社内) | 3名 | 72 | 72 | - | - | - |
社外監査役 | 3名 | 43 | 43 | - | - | - | |
合計 | 6名 | 115 | 115 | - | - | - |
②業績連動型賞与及び④業績連動型株式報酬の算定式
総支給額算定ベース
総支給額算定ベース
= (A + B + C) × 対象となる取締役の役位ポイントの総和 ÷ 55
2019年度連結純利益のうち、
A = 2,000億円に達するまでの部分 × 0.35%
B = 2,000億円を超え3,000億円に達するまでの部分 × 0.525%
C = 3,000億円を超える部分 × 0.525%(うち、株式報酬として0.175%)
総支給額は、A、B及びCの合計額に、対象となる取締役の員数増減・役位変更等に伴う一定の調整を加えた額です(賞与及び株式報酬それぞれにつき報酬限度額による制限があります)。
個別支給額
個別支給額
= 総支給額算定ベース × 役位ポイント ÷ 対象となる取締役の役位ポイントの総和
各取締役への個別支給額は上記に基づき計算された総支給額を、役位ごとに定められた下記ポイントに応じて按分した金額です。
取締役会長 | 取締役社長 | 取締役 副社長執行役員 |
取締役 専務執行役員 |
取締役 常務執行役員 |
---|---|---|---|---|
10 | 7.5 | 5 | 4 | 3 |
個別支給額のうち、A及びBに係る部分は全額現金で支払われます。Cに係る部分については、0.175%分を株式報酬で支給し、残額は現金で支払われます。なお、現金で支払われる部分の70%は、担当組織の計画達成率に応じて増減する仕組みとしています(但し、担当組織の業績評価ができない取締役の計画達成率は100%とします)。
株式報酬については、在任中は毎年ポイント(1ポイント = 1株)を付与し、退任時に累積したポイント分に相当する株式報酬を信託よりまとめて支給することとしています。なお、信託より支給する株式はすべて株式市場から調達予定ですので、希薄化は生じません。
③株価連動型賞与の算定式
中期経営計画第X年度*1の個別支給額
=(中期経営計画第X年度における日々の当社株価終値の単純平均値ー中期経営計画初年度の前年度における日々の当社株価終値の単純平均値)×1,300,000×(中期経営計画初年度から第X年度までの役位ポイント*2の合計)÷(108.8ポイント×X(年))×相対株価成長率*3ー(中期経営計画期間の初年度から第X-1年度までの株価連動型賞与の合計額)*4
- 中期経営計画は初年度(第1年度)、第2年度、最終年度(第3年度)の3年をベースとします。
- 役位ポイントは②業績連動型賞与の算定に用いられるものと同一です。
- 相対株価成長率
=(中期経営計画第X年度における日々の当社株価終値の単純平均値÷中期経営計画初年度の前年度における日々の当社株価終値の単純平均値)÷(中期経営計画第X年度における日々のTOPIXの単純平均値÷中期経営計画初年度における前年度のTOPIX単純平均値) - 中期経営計画期間の初年度から第X-1年度までの株価連動型賞与の合計額について、中期経営計画初年度はゼロとします。