新型コロナウイルスによる当社への影響と対応状況

新型コロナウイルスの当社業績や経営方針等への影響及び対策をご説明します。

Q.1 新型コロナウイルスの連結業績や経営戦略・ビジネスモデルに対する影響について、教えてください。

2020年度の連結業績(連結純利益)については、期初計画4,000億円を公表していますが、資源価格の下落等の影響を除く、新型コロナウイルスの直接的な影響として、約1割程度の減益インパクトを織り込んでいます。加えて、例年よりも更に200億円多い500億円の損失対応バッファーを設定し、経営環境の不確実性に対する「備え」を十分に図った計画としています。

また、当社は、新型コロナウイルスが世界的に拡大する前から、対面業界の急速な構造変化やデジタル化への対応を進め、既存のビジネスモデルを進化・変革するための取組みを着実に推進してきました。新型コロナウイルスにより、購買方法や嗜好の変化、デジタルシフト等が急激に加速すると言われていますが、お客様が求めるモノを調達し、お届けするという基本的な商流は変わりません。引続き、国や地域ごとの社会ニーズも十分に考慮しつつ、「マーケットインの発想」でお客様の視点に立った「商い」を実践していく方針です。

Q.2 新型コロナウイルスにより、ESGに対する意識に変化はありますか?

新型コロナウイルスの影響により事業活動が停滞する場合であっても、企業は急場しのぎの対応を行うのではなく、中長期的な視点に立って責任あるESG経営を堅持する必要があると考えています。

従来の気候変動や海洋プラスチックごみ汚染といった環境(E)関連の対策に加え、サプライチェーンや人権といった社会(S)関連の取組みも、新型コロナウイルス感染拡大を契機に改めて重視されています。2020年4月、当社は、創業より底流に脈々と流れ続けてきた「三方よし」を新たなグループ企業理念として改訂しましたが、収益力の維持・向上を担保しつつ、多岐にわたる商品・サービスの提供及び新規ビジネスを創出すること等で、社会課題の解決を着実に図っていく方針です。そのためには、社会の価値観の変化を敏感に捉え、引続きESGに資する取組みを積極的かつ継続的に行うことが重要であると考えています。

Q.3 新型コロナウイルスの環境下で事業を継続するために取組んだ事例はありますか?

生活消費分野に強みを持つ当社グループのビジネスは、日々の生活の基盤となる社会インフラを支えるものが多く、新型コロナウイルスの環境下でも企業活動を継続するために、様々な取組みを行っています。

例えば、当社の子会社で来店型の保険代理店大手である「ほけんの窓口」は、対面での保険相談に懸念を持たれているお客様に対応すべく、全国でオンライン上での保険相談を受け付ける体制を当社グループのリソースも活用して迅速に整備し、2020年7月よりその運用を開始しています。また、当社の関連会社で企業のデータ活用を支えるソフトウェア・サービスを提供するウイングアーク1st㈱は、テレワークが急速に広まる中、在宅勤務時の障壁となる請求書の発行・発送業務を電子化する「請求書Web配信サービス」をグループ内外に積極的に展開し、導入先企業の感染リスクの防止、及び新型コロナウイルス環境下における働き方の変化に寄与しています。

当社グループは、こうした営業現場での改善や小さな取組みをコツコツと積み重ねていき、お客様や世間にも配慮した当社グループならではの、独自性の高い「商い」を実践していく考えです。

Q.4 働き方や今後の人材戦略の方向性に変化はありますか?

当社はこれまで、人材戦略を重要な経営戦略の一つと捉え、2013年度の「朝型勤務制度」の導入を皮切りに、社員の健康力の向上や働きがいのある職場環境の整備を進めることで「労働生産性の向上」に取組んできました。

新型コロナウイルスの環境下、「働き方改革」という点で社員の意識も大きく変わってきています。また、在宅勤務の利便性の向上やオンラインサービスの活用が更に図られたことに加え、特に育児や介護等を抱える社員に向けた、仕事と家庭が両立しやすい職場環境の整備も加速しています。

今後は、コロナ禍で注目を集めた在宅勤務等のメリットのみならず、目に見えにくいデメリットについても現場からしっかりと意見を吸い上げ、現行の人事・業績制度も踏まえた多角的な分析や、デメリットの改善策等を十分に講じた上で、労働生産性の更なる向上に繋げていきたいと考えています。

Q.5 新型コロナウイルスの影響によるステークホルダーへの対応について教えてください。

当社は、新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた2020年1月より「新型コロナウイルス対策本部」を立ち上げ、社員の安全確保を最優先に、在宅勤務の拡大や海外からの一時退避等を実施してきました。引続き、PCR検査の拡充や執務エリア等での遮蔽板設置等、社員が安心して働くことができる体制を整備しています。

その上で、生活消費分野に強みを持つ総合商社として、事業会社を含む現場でのお客様対応の責任を果たすと共に、各分野におけるサプライチェーンの維持を通じて社会生活の安定化に貢献するべく、感染拡大時においてもリスクを回避しつつ、重要業務を継続しています。

また、株主の皆様の感染防止の観点から、株主総会は規模を大幅に縮小し、当社役員のみでの開催となりましたが、招集通知に加えて、株主の皆様のご関心が高い事象をQ&Aにまとめた小冊子を同封することで、ご出席いただかなくても当社の状況について十分にご理解いただけるように努めました。

「2020年度 経営計画」の公表に際しては、従来通り、連結業績等の定量計画に加え、定性計画についてもポイントを絞った開示を実施し、新型コロナウイルスの環境下における当社の経営方針や重点施策の理解を図りました。引続き、市場からご評価をいただけるように積極的な「対話」を心掛け、更なる企業価値向上を図っていく考えです。

当社の新型コロナウイルス対策に対する社外取締役コメント

当社では、新型コロナウイルスの対応方針や感染防止策に関する情報共有が、社外取締役に対してもタイムリーになされています。私は当社の社外取締役として、医療に長年携わってきた経験や知識に基づき、より実践的な意見やアドバイスを行うように心掛けてきました。

当社では、感染が拡大し始めた2020年1月より、「新型コロナウイルス対策本部」が社内に設置され、対策本部長であるCAOの指揮の下、事業活動を継続する上で必要となる感染防止策の徹底や検査体制等の強化が図られており、医療現場のプロの視点から見ても、迅速かつ適切な処置がなされていると考えています。

新型コロナウイルス環境下における企業経営の舵取りには、感染リスクを縮減することと、事業活動への影響を最小限に抑えることの両立が求められますが、当社役職員が安心して仕事に集中できる環境を整備し維持することに向け、引続き、社内関係部署等との協働を通じ貢献していきたいと考えています。

川名正敏
社外取締役
川名 正敏
東京女子医科大学病院副院長等としての病院経営の経験と医療に関する高度な知識を持つ。2018年6月に当社取締役就任。2019年度はガバナンス・報酬委員会の委員を務め、当社のガバナンスの更なる進化に貢献。また、健康経営やメディカルケア関連ビジネスの分野においては、専門知識を活かして数多くの有益な提言等を行っている。