国内最大の「面」展開を通じた「三方よし」

当社の蓄電池ビジネスは、「マーケットインの発想」と、すべてのステークホルダーが価値を分かち合うエコシステムを原動力に、国内最大規模のAIを搭載した蓄電池の「面」を形成することで、持続的な価値向上を目指していきます。

「時間」への投資がもたらした競争優位

2010年5月、当社は様々な協力企業、及び茨城県つくば市と共に、太陽光発電システムや電気自動車、蓄電池、ICT等を複合的に組み合わせた未来の低炭素交通社会システムを描いた共同実証プロジェクトを進めていました。それから約10年、当時の布石は、現在の「蓄電池ビジネス」に繋がっています。「時間」への投資を通じて蓄積したノウハウや、中長期的なビジョンを共有するパートナーが、現在の当社の競争優位を形づくる、かけがえのない財産になっています。

総合商社の枠を超えた挑戦

1990年代より展開してきた蓄電池の製造装置、部材等を電池メーカーに納入するビジネスは、電池メーカーの製品の売れ行きに成長を依存しており、持続的成長の実現には、川下にビジネスを拡げ、自ら需要を生み出す必要がありました。そこで着目したのが、家庭向け「蓄電システム」です。当社は、単なる製品の販売にとどまらず、「メーカーポジションへの進出」という挑戦に、過去より取引のあった電子回路や制御システムに強みを持つ㈱エヌエフ回路設計ブロックをパートナーとして取組みました。

「マーケットインの発想」の徹底とエコシステム全体のデザイン

第一に取組んだのが、東日本大震災発生時の生活者の声を反映し、非常時に家庭の電力を丸ごとバックアップできる200V電源に対応することでした。また、2019年以降の再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)終了後の需要も見据え、家庭の1日平均使用電力量に相当する約10kWhの蓄電容量を確保する等、当時の他社製品にはない機能を実装した蓄電池「Smart Star L」を世に送り出したのは2017年5月のことでした。

機能を追求するだけではなく、販売、物流、施工、コールセンターでのサポート等、すべての家庭やパートナーにとって最適なエコシステムをデザインしていきました。そこでは、非資源分野に強い当社ならではのノウハウやコーディネーション力が真価を発揮しました。

自然災害の増加を背景に電力対策への関心が高まる中、「Smart Star L」の活用事例が注目されたことに加え、「マーケットインの発想」の徹底、グループ会社をはじめとした強力な販売網、更に最適化されたエコシステムの条件が揃ったことが、新たな機会を創り出していくことになります。

既存ビジネスと新技術の「掛け合わせ」による進化

2018年1月、当社はAI技術を活用した電力プラットフォーム事業を展開する英国Moixa Energy社と資本業務提携し、同社の家庭向けサービスの国内独占販売権を取得しました。「メーカーポジションへの進出」という挑戦が、蓄電池に同社のAI技術を載せたプラットフォーム構想という共通のビジョンに繋がることで実現した提携でした。同社のAI技術により、気象予報や家庭の電力需要等を分析・学習し、蓄電池の最適充放電制御を行うことで、蓄電システムの効率的な運用が可能になりました。

「Smart Star L」販売台数は2020年3月現在で3万台を突破し、分散電源を遠隔制御できる蓄電システムとして、国内最大規模の「面」を形成するに至っています。

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国内最大の「面」が拡げる可能性

川上から川下までのトレードビジネスに加え、消費者接点で製品とサービスに付加価値をつけながら「面」を拡げてきた当社が見据えるのは、AI搭載蓄電池による国内最大規模の「面」を基盤としたVPP(仮想発電所)事業への参入です。2019年3月に太陽光第三者保有モデルで事業展開する㈱VPP Japan、2020年6月に電力小売サービスを展開する東京電力グループのTRENDE㈱に出資しています。事業環境が整う2021年以降に向け、地域の人々を電力で繋げる経済圏の形成等、蓄電池や余剰電力の販売にとどまらず様々な可能性を模索しています。

日本における成功モデルの海外への横展開も進めています。世界中で分散型エネルギーへのシフトが進んでいますが、2万台近いAI搭載蓄電池を束ねる蓄電システムを運用している強みが、新たなパートナーを呼ぶ好循環を生み出しています。2018年の半固体リチウムイオン電池の研究・開発を行う米国24M Technologies社への出資、家庭用太陽光発電・蓄電池事業者の米国Sunnova Energy社との資本業務提携に加え、2019年10月に車載用電池のリユース・リサイクル事業を手掛ける中国Shenzhen Pandpower社に、2020年3月には独自開発の蓄電システムを販売するカナダEguana Technologies社に出資参画しました。日本市場で培った蓄電池ビジネスの知見を強力な海外パートナーと共に進化させ、海外での新規ビジネスに繋げると共に、そこで得たノウハウを日本でのVPP事業への参入等にも活かしていく方針です。

「伊藤忠らしさ」でビジネスの持続的な成長を目指す

当社は、「マーケットインの発想」を徹底し、きめ細かなエコシステムの改善を続けています。成長期待が高いこの市場には、今後も様々な企業の参入が予想されますが、これまでの成長の原動力である「強み」で差別化を図ると共に、今後も先手先手で新たな挑戦を続けていきます。そして、様々なパートナー、家庭、より良い社会の実現にも貢献し、「三方よし」の具現化を通じた持続的な成長を実現していきます。

新技術と既存ビジネスとの「掛け合わせ」によるビジネスモデルの進化