2012年度 入社式 社長メッセージ

2012年4月2日

おはようございます。社長の岡藤です。

本日、ここに総合職113名、事務職10名、合計123名のフレッシュな仲間を迎えることができ、大変嬉しく思います。年々厳しさを増す就職戦線ですが、今年度、伊藤忠に入社された総合職の皆さんは筆記試験受験者数8,668名から選ばれた方々であり、その競争率は77倍、事務職の皆さんは1,030名で実に103倍と、極めて狭き門でした。

本日は皆さんの伊藤忠パーソンとしての門出にあたり、これからの長い会社生活の中で是非覚えておいてほしいことを2点だけ申し上げます。入社されたばかりの皆さんには、話を聞いても今ひとつイメージが湧かないかも知れませんが、キーワードだけでも是非記憶してください。いずれ、わかる日が必ず来るはずです。

1点目は「社会において信用というものが如何に大切か」ということです。
伊藤忠は自由闊達な会社です。若いうちからいろいろなことにチャレンジする機会が与えられます。当然、失敗もあるでしょう。上司には叱られるかも知れませんが、仕事に対してがんばった結果の失敗は次の仕事で取り返すことができます。一度や二度の失敗で絶対に挫けることなく、前向きにがんばることが大切です。
しかしながら、仕事の中身ではなく、「人」としての信用を失ってしまうと、これを取り返すのは至難の業と思わなければなりません。皆さんも学生時代に例えば、友人から頼まれていたことや自分自身が言ったことを忘れたり、自分の都合だけを優先して相手が困っているのに助けなかったり、言ってはいけないことをうっかりしゃべってしまったり、或いは人を裏切ったり、というような経験があるのではないでしょうか。学生時代とは違ってビジネスの世界ではこれらは致命的なことになります。客先はもちろんのこと、上司や仲間からも、「こいつは信用できない」と思われてしまうと、仕事ができる機会を逸するだけでなく、信用を取り戻すために相当の負担と時間をかけなければなりません。逆に、信用される人には仕事が与えられ、それを堅実にこなすことで、次はより大きな仕事を任せてもらえるという好循環が続くことになります。職場だけでなく、例え食事の席であっても、立ち話であっても、約束したことは必ず守る、言われたことは忘れずに実行し、きちんとそれを報告する。簡単なようで続けることはなかなか難しいものですが、この繰り返しによって信用は勝ち得ていくものです。信用の大切さはよく覚えておいてください。

2点目は「業界のプロ、第一人者を目指せ」ということです。
中国の古典である「中庸」に、「君子はその位(くらい)に素(そ)して行い、その外(ほか)を願わず」という言葉があります。「位」とは地位や立場、「素して行う」とはその本分を全うするという意味です。如何なる状況にあっても自分の現在の地位に責任を感じて、自分にどんな使命があるのか、どんな貢献ができるのかを考え、自分の力の及ぶ範囲を見極めた上で、なすべきことに集中する、それ以外のことは望まない、ということです。
厳しい競争を勝ち残った皆さんは今、「大志」を抱いてこの式に臨んでいるのではないでしょうか。フレッシュな気持ちで、意欲を持つというのはとてもよいことです。しかしながら、これからはその「大志」は一旦忘れて、まずは与えられた目の前の仕事をコツコツと地道にやるようにしてください。配属先が自分の希望ではなかったり、自分が思い描いていたような仕事ではなかったりするかも知れませんが、そんなことで腐ってはいけません。どんな小さな商売、どんな小さな世界でもいい、その道のプロフェッショナルを目指すことです。なぜなら、プロフェッショナルになりその道を極めることを通してしか、仕事の「肝(きも)」や「勘所」を学ぶことはできないからです。プロフェッショナルとして認められれば、みんなが話を聞きに来ます。それによってまた情報が集まり、さらに知識と経験が高められ、プロとしての領域が広がって行きます。
それらを極めた上で、いつか、自分なりの知恵を絞って伊藤忠のために新しいビジネスを切り拓いていってほしいと思います。そうすることで、皆さんが今思っている「大志」は、いつの間にか実現できているはずです。

選ばれて入社した自信と誇りを持って、伊藤忠商事で思う存分活躍されることを願っています。最後に皆さんの入社を心から祝福し、歓迎の挨拶と致します。