伊藤忠商事のクリーンテックビジネス

基本方針・戦略

伊藤忠商事は、中期経営計画「Brand-new Deal 2023」において、気候変動を含む「「SDGs」への貢献・取組強化」を基本方針の一つとしました。本基本方針は2024年策定の経営方針「The Brand-new Deal」にも引継がれています。脱炭素社会を業界に先駆けて実現することで、日本政府目標から10年前倒した2040年までにクリーンテックビジネスによる削減貢献量の創出が当社GHG排出量を上回る「オフセットゼロ」を目指します。更に「The Brand-new Deal」では、企業価値の持続的な向上を目指す戦略の柱の一つを「業績の向上~投資なくして成長なし」と設定し、事業領域の拡大に努めます。

気候変動を含む環境リスクは、同時にクリーンテックビジネスの機会でもあります。当社は、中長期的視野に立ち、最先端技術を取り入れ、将来的に持続可能な成長が予測される、かつ、脱炭素社会・循環型社会に向けた社会構造転換に資する具体策を先手で推進します。総合商社である当社の幅広いバリューチェーンを活かし、多角的な事業投資を行うことでプロジェクト全体の利益率を向上させ、環境性のみならず経済性の向上も同時に追求する方針です。そのため、クリーンテックビジネスについても、その他の事業と同様の厳しい投資基準を適用しています。

また、クリーンテックビジネスによる削減貢献量の推移及びこれに影響する外部環境のモニタリングを行い、各事業の進捗や市況に応じ、運営状況の見直し等を行っています。

目標(移行計画)

クリーンテックビジネス等排出量削減に貢献するビジネスの積極推進を通じ、2040年までに当社GHG排出量の「オフセットゼロ」を目指す。

  • オフセットゼロ: 削減貢献量が当社GHG排出量を上回る状態
各ビジネスセグメントにおける個別目標
ビジネスセグメント 個別目標
再生可能エネルギー事業
  • 当社持分発電容量に占める再生可能エネルギー比率を2030年度までに20%超に引き上げる。
    • 米テキサス州Cotton Plains(風力・太陽光)、Prairie Switch(風力)や尼Sarulla(地熱)等、合計約2,500MWの再生可能エネルギー事業に参画中。
    • 売却済み案件含め、2025年3月時点で累計6,800MW、40件以上の太陽光発電所を開発中。
アンモニア燃料関連事業
  • アンモニア燃料船の開発と保有運航、燃料供給拠点の整備、燃料アンモニア調達を統合的に開発することでアンモニア燃料を中心としたバリューチェーンを構築。
  • 2050年の国際海運におけるGHG排出ゼロ目標に対し、アンモニア燃料船の普及促進、社会実装を進めることで国際海運の脱炭素化に貢献する。
蓄電システム事業
  • 2030年度までに累計電力容量2GWhを超える規模を目指す。
水インフラ関連事業
  • 欧州、豪州等における実績を他地域にも展開し、引続き優良資産の積み上げを行う。
廃棄物処理発電事業
  • 欧州における実績を中東始めアジア他地域に展開し、引続き優良資産の積み上げを行う。
  • 2024年にセルビア統合型廃棄物処理事業における廃棄物処理発電所、世界最大級のドバイ廃棄物処理発電所の商業運転開始。

取組み

経営の関与 - 脱炭素・カーボンニュートラルタスクフォース

前中期経営計画「Brand-new Deal 2023」における「「SDGs」への貢献・取組強化」により脱炭素社会を業界に先駆けて実現するとの強いコミットメントは、2024年4月に策定した中長期の羅針盤となる経営方針にも引継いでいます。伊藤忠商事では、2021年4月、社長COOを管掌としたカンパニー間横断での脱炭素・カーボンニュートラルタスクフォースを立ち上げました。本タスクフォースでは、各カンパニーでの取組み案件の進捗の詳細につき原則毎月報告されており、分野も水素・アンモニア案件に限定せず、GHG排出量削減に寄与し市場拡大が見込まれるその他脱炭素案件(排出権取引、CCUS等)に関しても討議を重ねています。

個別事業のご紹介

1. 再生可能エネルギー事業

伊藤忠商事は、グローバルに脱炭素ビジネス(再生可能エネルギー、水素、アンモニア)を展開中です。開発を核に投資、エンジニアリング、O&M、機器メンテナンス等機能を多角的に提供することで当分野における収益を積み上げる方針です。

再生可能エネルギー発電量推移(持分容量ベース)

2005年度には53MWしかなかった持分容量を、2024年度までに604MWまで伸長した。2030年度20%超を目指し、引き続き案件拡大を進めていく。

再生可能エネルギー比率目標(持分容量ベース)

2030年度再生可能エネルギー比率目標20%超に対して、2024年度の持分比率は18.7%となった。
発電事業における再生可能エネルギー比率と推移
2020年 2021年 2022年 2023年 2024年 2024年 2030年(目標)
持分容量(MW) 持分容量(MW) 持分容量(MW) 持分容量(MW) 持分容量(MW) 比率(%) 比率(%)
風力発電事業

179

122

164

196

240

18.7%

20%超

太陽光・太陽熱発電事業

80

112

132

164

225

地熱発電事業

83

83

83

83

83

バイオマス発電事業

33

57

57

57

57

再生可能エネルギー発電計

375

373

436

500

605

天然ガス発電事業

1,258

1,258

1,258

1,466

1,666

81.3%

80%未満

石油火力発電事業

315

315

315

315

315

石炭火力発電事業

640

640

640

640

640

火力発電計

2,213

2,213

2,213

2,421

2,621

発電事業計

2,588

2,586

2,648

2,921

3,226

100%

100%

再生可能エネルギー関連取組みの一覧はこちらからご覧いただけます。
当社は、新規の石炭火力発電事業の開発は行わないことを、取組み方針としています。

取組み状況及び事例

風力発電事業

風力発電(陸上、洋上)においては、1990年代後半から取組んでおり、日本、米国、ドイツにて、現在7件を開発もしくは保有しています。

欧米での風力発電事業
Butendiek風力発電所

再生可能エネルギーの需要が高まる中、戦略的業務・資本提携を締結しているCITICグループと共に、ドイツ北海沖で稼働中の洋上風力発電所(288MW)の発電事業に参画しています。ドイツ標準家庭の約37万世帯分の電力を供給しており、脱炭素社会への移行に貢献しています。

2023年には北米の再生可能エネルギー開発資産を投資対象とするファンドを設立しました。当ファンドを通じ、2024年2月に初号案件となるGrandview風力発電所(211MW)への出資を実行しました。今後も投資家の募集を継続し、本ファンドを通じて20億ドル程度の再生可能エネルギー事業を行う予定です。(2024年9月には第2号投資案件(新規太陽光、蓄電池資産)に関わる投資契約を締結。)

青森むつ小川原陸上風力発電

カナデビア株式会社と伊藤忠商事の関連会社である東京センチュリー株式会社との共同事業として良好な風況の適地である青森県上北郡六ヶ所村で陸上風力(64.5MW)を建設中で、2026年4月の稼働開始を予定しています。年間予想発電量は約1億6,600万kWhで、一般家庭約46,000世帯分の年間消費電力量に相当します。

メガソーラー発電事業

大分日吉原太陽光発電所

2015年に愛媛県でのメガソーラーの商業運転開始に続き、2016年に大分県、2017年に岡山県、2018年に佐賀県と伊藤忠商事が国内で運営する発電所は4か所(合計発電出力130MW)になります。これまでの各発電所を運営してきた知見や経験が当社における再生可能エネルギー事業の拡大に寄与しており、引続き安定した発電所の運営を目指します。

太陽光分散電源事業

アイ・グリッド・ソリューションズが運営するオンサイト型分散電源

資本業務提携先の株式会社アイ・グリッド・ソリューションズ(以下、アイ・グリッド社)を通じてスーパーマーケット・物流施設の屋根を中心に国内最大規模のオンサイト型分散型発電所を運営しています。アイ・グリッド社は、顧客の初期投資ゼロで自家消費型太陽光発電システムを導入し、施設に直接、長期間に亘り安定価格で電力供給を行うオンサイト型太陽光事業を展開しています。更には太陽光発電に加えて、蓄電池や電気自動車といった分散電源をAIによる需給調整プラットフォームによって統合制御することで、顧客施設を中心とした地域のグリーントランスフォーメーション(GX)実現に向けたソリューションを提供しています。

クリーンエナジーコネクトが運営するオフサイト型分散電源

更には、国内の土地を有効活用しグリーン電力を創出する取組みを、株式会社クリーンエナジーコネクト(以下、CEC社)と資本業務提携し、2021年より共同で事業を推進しています。CEC社は、国内遊休地を活用し複数の中小規模の太陽光発電所を開発・保有した上でグリーン電力を束ね、都心のオフィスビル等のお客様へ長期に電気と環境価値の提供を行うオフサイト型太陽光事業を展開し、お客様の脱炭素・RE100の目標達成に貢献しています。2024年度までに国内の約2,000か所に、「追加性」のある太陽光発電所を導入しました。これら太陽光発電所は、全国24都道府県293市町村の広域に分散設置されており、発電所ポートフォリオとして天候による発電量の変動の抑制、災害等のリスク分散を図っています。総発電量は188百万kWh/年、CO2削減量は7.9万t-CO2/年となる予定です。

太陽光パネルリサイクル事業

伊藤忠商事は、太陽光パネルリサイクル事業取組みの一環として、先進的な太陽光パネルリサイクル技術を開発・保有する仏ROSI SASから第三者割当増資を引き受け、太陽光パネルリサイクルのビジネス推進・拡大に向けて取組んでいます。

昨今、寿命を迎えた太陽光パネルの大量廃棄が近い将来起こるという懸念が世界中で広がっており、これら廃棄太陽光パネルに関する適切なリサイクルチェーンの確立が今後の大きな課題となっています。

当社はこれまで培ってきた太陽光発電関連ビジネスのノウハウ及びネットワークに加え、ROSI社の保有する先進的、かつ、経済性の高いリサイクル技術を組合わせることで太陽光パネルリサイクルチェーンの確立に貢献していきます。

地熱発電事業

インドネシアにて世界最大級のSarulla地熱IPP事業に参画しています。2013年にインドネシア国有電力会社との間で30年間にわたる長期売電契約を締結、その後発電所の建設を進め、2017年に1号機、2号機、更に2018年に3号機が完成し商業運転を開始しました。世界最大級の地熱資源保有国であるインドネシアは、再生可能エネルギーの導入を今後積極的に推進する方針で、地熱発電も有力な電源の一つです。地熱発電は再生可能エネルギーの中でも日照・風況等の自然条件に大きく左右されることなく電力の安定供給が可能であり、伊藤忠商事は国や地域ごとのエネルギー事情、電源構成を踏まえた電力安定供給により脱炭素への取組みを積極推進していく考えです。

バイオマス発電事業

市原バイオマス発電所の外観

2020年12月、伊藤忠商事の参画する「市原バイオマス発電所」(発電出力49.9MW)が商業運転を開始しました。本発電所の年間想定発電量は約3.5億kWhとなり、一般家庭約12万世帯の年間消費電力量に相当する発電規模となります。また2024年10月には宮崎県日向市において、当社の参画する「日向バイオマス発電所」(発電出力50MW)が商業運転を開始しました。また、愛知県田原市において、バイオマス発電所(発電出力50MW)を建設中で、2025年度中の運転開始を予定しています。

バイオマス燃料・リニューアブル燃料関連事業

持続可能な航空燃料(SAF)

伊藤忠商事は国内発電事業者向けバイオマス燃料供給を通じて、再生可能エネルギー比率の向上に取組みます。また飛行機・自動車等モビリティ市場の脱炭素化に向けて、リニューアブル燃料の調達・供給拡大にも取組んでいます。

例えば航空業界での脱炭素化の加速に応え、当社は日本で初めて航空会社向け持続可能な航空燃料(SAF)の販売を開始しました。また航空業界における温室効果ガス(GHG)排出量削減を目指し策定されたISCC CORSIAの認証を取得しています(総合商社初)。これは、CORSIAのカーボン・オフセット要件を満たすSAFを供給できることを証明する認証です。当社が取扱うリニューアブル燃料は非化石由来の原料を使用しているため、従来の石油由来の燃料に比べ大幅なGHG排出量の削減に貢献しています。

2023年5月には、世界最大のリニューアブル燃料メーカーであるNeste OYJと、同社が生産するリニューアブルディーゼル「Neste MY Renewable Diesel」の日本国内での流通拡大を目的とした商標ライセンス契約及びブランディング強化に関する協業契約を締結しました。

SAFで飛ぶ航空機イメージ
Copyright: All Nippon Airways co., Ltd. all rights reserved
SAFを給油する様子
リニューアブル燃料のサンプルボトル
提供:Neste社

北米再生可能エネルギー向け運転・保守事業

子会社のNAES Corporationを通じて、米国の太陽光・蓄電池・風力発電所(計3,000MW)に対する運転・保守サービス・資産管理事業を行っています。同社は遠隔で運転・故障状況を監視可能なシステムを活用することで、全米各地に散らばる約1,400か所もの太陽光発電所に対しサービスを提供しています。

北米再生可能エネルギー開発事業

北米で開発が進むメガソーラー

米国において再生可能エネルギーの開発専業部隊であるTyr Energy Development Renewables, LLCを2022年に設立し、現在約5,000MW程度の再生可能エネルギー案件を開発しています。土地確保、各種許認可取得、電力系統接続、売電契約の交渉・締結、主要機器・建設工事事業者の選定・交渉、ファイナンス組成等、一連の業務を自社完結する再生可能エネルギーの開発プラットフォームを構築し、今後大きな成長が見込まれる北米再生可能エネルギー事業の開発を加速します。

2. アンモニア燃料関連事業

世界的に脱炭素化の気運が高まる中、国際海運では、国際海事機関(IMO)は2018年にGHG排出量削減戦略として、2030年までに2008年比40%効率改善、2050年までに2008年比50%総量削減、更には今世紀中できるだけ早期にGHG排出フェーズアウト(ゼロ・エミッション)を掲げました。その後2023年に改訂し、2050年頃までのGHG排出ゼロに目標を強化しました。これらの目標達成に向け、ゼロ・エミッション船を目指した船舶の早期開発、社会実装が期待されており、その中でアンモニアは代替燃料の候補として各方面で注目されています。また、アンモニアを主燃料とする船舶の開発を具体化するには舶用アンモニア燃料の安定供給及び供給拠点の整備は欠くことが出来ない要素です。

アンモニアを主燃料とする船舶の共同開発

伊藤忠商事は、日本シップヤード(株)、(株)三井E&Sマシナリー(現(株)三井E&S)、一般財団法人日本海事協会、伊藤忠エネクス(株)及びMAN Energy Solutions(以下、MAN社)と共に、MAN社が開発を進めているアンモニアを主燃料とする主機関(以下、アンモニア焚機関)を搭載する船舶の共同開発に取組んでいます。

また、2021年10月に川崎汽船(株)、NSユナイテッド海運(株)、日本シップヤード(株)、(株)三井E&Sマシナリー(現(株)三井E&S)の4社と共に、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した事業「グリーンイノベーション基金事業/次世代船舶の開発プロジェクト/アンモニア燃料船の開発」に応募し、採択されました。2022年11月には、同4社と共同で、一般財団法人日本海事協会よりアンモニア燃料船(載貨重量トン20万t級大型ばら積船)の基本設計承認(Approval in Principle)を取得しています。本公募事業は2028年までのできるだけ早期に、アンモニア燃料船を日本主導で社会実装し、他国に先駆けて推進システム・船体開発、及び、保有・運航を行うものです。

舶用アンモニア燃料供給に関するサプライチェーン構築

伊藤忠商事は舶用アンモニア燃料の供給開発を世界各地で推進中です。シンガポールでは2024年7月に、シンガポール海事港湾庁からバンカリング事業者の候補者として選定されました。その他の地域においても舶用アンモニア燃料供給の共同開発を目的とし、スペインでは舶用燃料供給大手であるPeninsula Petroleumと、エジプトではエンジニアリング・建設分野大手であるOrascom Construction PLCと、当社はそれぞれ2023年後半に覚書を締結しました。これにより、安全な燃料供給体制の整備やアンモニア・バンカリング船開発を更に加速させています。

また、2021年6月以降、アンモニアの舶用燃料利用を目指し、34企業・団体と共に立ち上げたフレームワークである「協議会」を通じ、アンモニアの舶用燃料利用に関する共通課題を検証・整理する活動を継続しています。2022年4月には、アンモニア燃料補給における安全性やガイドラインに関する課題、知見を関係者間で共有することを目的としたフレームワークとして「港湾協議会」を16企業・団体と共に発足させ活動を拡大させています。これらを発展させ、2023年9月にはアンモニアを主燃料とするコンテナ船を想定した燃料補給時の安全性について協議・検討することを目的として8企業・団体と覚書を締結しました。これらの協議会は2024年3月末に活動終了し、現在は個別案件の取組みに移行しています。

上述各々の共同開発やフレームワークに関しては、アンモニア焚機関を搭載する船舶の開発、シンガポールでの舶用アンモニア燃料の供給拠点整備にとどまらず、同船舶の保有運航、舶用アンモニア燃料の調達、及び世界規模でのサプライチェーン構築を含めた「統合型プロジェクト」の一環として位置付けており、国内外の各企業、関係省庁とも協力し、国際海運のGHG排出量削減に向けた取組みを進めていきます。

カナダのクリーンアンモニア製造販売事業の共同事業化調査

アルバータ州のプロジェクトサイト候補地の航空写真

伊藤忠商事は、マレーシアの国営石油ガス会社Petroliam Nasional BerhadグループのGentari Hydrogen Sdn. Bhd.と、カナダ(アルバータ州)でのクリーンアンモニア製造販売事業の共同事業化調査を実施しています。

当社は、従来の化石燃料由来のものよりGHGの排出削減効果があるクリーンアンモニアの製造及び供給体制を確立することで、脱炭素社会の実現を目指します。

3. 水素関連事業

日本国内においては2020年12月に「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が公表され、その中でも水素は幅広い用途が期待されるカーボンニュートラルのキーテクノロジーとして、発電・産業・運輸等様々な分野の脱炭素化に寄与していくことが期待されています。

この大きな潮流を踏まえて、伊藤忠商事の幅広いネットワークとグループとしての総合力を発揮し、水素市場の開拓を推進していく方針です。

水素バリューチェーン構築に関する戦略的協業

2024年5月に開業したエア・リキード本宮インターチェンジ水素ステーション

伊藤忠商事、日本エア・リキード合同会社、伊藤忠エネクス株式会社の3社は、日本の大都市圏を念頭に、水素製造・供給、水素ステーション事業を共同で検討し、モビリティ・他各種産業向け水素市場開拓を目指しています。

2024年5月に開業した日本初の大型商用車両対応の本宮インターチェンジ水素ステーション(福島県本宮市)を皮切りに、大型商用車の利用が見込まれる幹線道路沿いにおける大型水素ステーション建設の検討を継続する予定です。

伊藤忠商事の生活産業分野を中心とした広範なネットワークを駆使して、グループとしての総合力を発揮し、水素市場の拡大に貢献していきます。

水素地産地消モデル事業構築

伊藤忠商事の重要顧客である日本コークス工業株式会社、及び新造船において当社と長年の取引があるベルギー最大手の総合海運会社Compagnie Maritime Belge B.V. (以下、CMB社)と共に、九州北部での水素地産地消モデル事業を検討しています。

本プロジェクトでは、コークス事業からの廃プラスチック由来水素とCMB社の水素エンジンを柱に、水素の需要・供給双方を創出し、地産地消モデル構築を目指します。更に、同プロジェクトの他地域への積極展開により、グローバル規模での水素の社会実装を実現し、「「SDGs」への貢献・取組強化」を推進します。

水素エンジン搭載のストラドルキャリア
水素エンジン搭載のタグボート
水素エンジン搭載の洋上風力支援船
日本国内で運航中の水素エンジン搭載の客船

デンマークEverfuel社とのグリーン水素製造事業

2023年12月、伊藤忠商事は大阪ガス株式会社の子会社と共同で、グリーン水素バリューチェーン構築を推進するEverfuel A/Sの株式取得に関する契約を締結しました。同社は水電解装置を用いたグリーン水素生産設備・輸送機器・水素ステーションのEPC・運営を行っています。また、自社水素ステーション等を活用した産業分野・モビリティ分野への水素販売により、地産地消のグリーン水素バリューチェーン構築を推進しています。同社水素製造第一号案件として、2025年2月に世界最大級の水素製造・配給プラント(電解装置規模20MW)の商業運転を開始しました。

本件を通じて得られる知見やノウハウを活用し、水素の地産地消事業の欧州及び他地域への横展開並びに水素派生商品の製造事業への参画を目指すことで、脱炭素社会の実現に貢献していきます。

再エネ電気を用いて世界最大規模の水電解プラントを稼働させグリーン水素を製造し、需要家や水素ステーションに届ける流れを図示している。
グリーン水素が需要家に届けられる流れのイメージ図
プラント内の様子

ZeroAvia社への出資及びアジアでの販売代理店契約、水素インフラ整備及び保守整備体制構築に向けた戦略的パートナーシップを締結

2024年、伊藤忠商事は航空機向け水素燃料電池エンジンの開発・製造を行うZeroAvia, Inc.に出資しました。また、同社とアジアにおける販売代理店契約及び保守整備体制、空港インフラ、水素インフラの構築を共同で推進する覚書を締結し、航空分野における脱炭素化を目指しています。ZeroAvia社は環境負荷が極めて低い水素燃料電池エンジンを開発しています。2023年には19人乗り機体「Dornier 228」に搭載しデモフライトを成功させました。2026年には9から19人乗り、2028年には40から80人乗り、将来的には200人乗り機体向けのエンジン認証取得を目指しています。水素燃料電池エンジンは従来のジェット燃料エンジンと比較して9割以上のGHGを削減でき、また部品点数が少なく、運航コストは従来のジェット燃料エンジンに比べて約4割削減できると見られています。航空機メーカーやエネルギー企業、空港会社等と協業し、すでに約2,000基を超えるエンジン予約注文を獲得しています。

当社は航空業界の脱炭素に寄与するZeroAvia社の水素燃料電池エンジンの商用化、国内外の水素インフラ関連パートナーや航空会社等との協業を通じて持続可能な地域社会の実現、地球環境への負荷軽減に貢献していきます。

19人乗り機体「Dornier 228」にZeroAvia社の
開発する水素燃料電池エンジンを搭載しデモフライト
将来的な40から80人乗りの航空機に搭載可能な
エンジンの認証取得に向けた取組み

4. 蓄電システム事業

再生可能エネルギー供給安定化において調整弁の役割を持つESS(Energy Storage System、蓄電システム)を販売することで、脱炭素社会の促進、環境リスクの低減を図り企業価値向上に貢献していきます。2030年度までに売上規模年間200億円、累計電力容量約2GWh規模を目指します。

今後はグローバルな電池調達や販売店網強化を行い、更なる家庭用蓄電システムの展開、各事業者の脱炭素化に資する産業用蓄電システムの導入、再生可能エネルギー事業と需要家を結ぶ蓄電所向けの系統用システムの開発を、リユース電池も用いながら加速させていきます。海外においては資本業務提携先とAI搭載蓄電システムの開発及び市場投入、地域に合わせたソリューションを提供する事業展開(特に今後伸長が予測される米国、豪州市場を想定)を目指し、推進していきます。また、EV(電気自動車)や蓄電システムから発生する廃棄電池のリサイクル、及びそのトレーサビリティに関する取組みを加速させることで、循環型ビジネスを行い、企業価値の更なる向上に貢献していきます。

蓄電システム事業 事業規模

蓄電システム販売累計容量(GWh)

2018年度から蓄電システムSmart Starシリーズ販売開始し、2023年度までに販売累計容量は0.7GWhとなった。2030年度までに2GWhを超える規模を目指す。

伊藤忠商事は日本国内において、独自ブランドの家庭用蓄電システム「Smart Star」シリーズを、事業パートナーと共に開発・製品化。2025年1月末時点で累計約60,000台の販売実績となりました。

また、日本政府、東京都が脱炭素社会実現に向けて推進している蓄電所事業を中心に、産業・系統用蓄電システム「Bluestorage」についても、設置実績を積み上げ始めています。

取組み状況及び事例

AI技術を活用した次世代家庭用蓄電システムの販売

伊藤忠商事は、蓄電システムの最適充放電制御を行うソフトウェア「GridShare」を開発する、英国Moixa Energy Holdings Ltd.と資本業務提携しました。

GridShareをSmart Starシリーズへ組み込むことにより、停電時に強みを発揮する本来の特長に加え、AIが気象予報やユーザーの電力需要・発電予測等を分析・学習し、蓄電システムの最適充放電制御を行う事で、太陽光発電並びに蓄電システムの効率的な運用を可能にしました。

また2021年5月から販売を開始した「Smart Star3」においては、世界初となる、家庭用蓄電システムを通じた環境価値のポイント化やEV充電機能を実装しています。

Smart Star Lの製品公式サイトはこちら別ウインドウで開きますをご覧ください。

Smart Star L外観
Smart Star3外観

GridShareを活用したデマンドレスポンス

伊藤忠商事が資本参画するグリッドシェアジャパン株式会社を通じて、遠隔で最適制御サービスを提供するユーザーを一つに束ね、電力の需給状況等に応じた制御を実施するデマンドレスポンスを実施。2022年度は最大約1万7千台、約51MW/167MWh規模の参加者を募りました。一つ一つの蓄電システムは小さくとも、あたかも一つの大きな蓄電システムのように統合制御し、VPP(Virtual Power Plant、仮想発電所)として機能させました。本取組みは再生可能エネルギーの普及、電力需給逼迫への対応、小売電気事業者への収益貢献が期待され、今後も拡大推進していきます。

電力サービス・P2P電力取引技術開発に取組むTRENDE株式会社との資本業務提携

TRENDE株式会社は、「未来を照らしていく」をミッションに、初期費用ゼロ円での住宅向け太陽光発電電力小売サービス(ほっとでんき・ひだまりでんき・じぶん電力)の展開や、再生可能エネルギーの効率的活用及び普及に資するP2P電力取引※1の技術開発や社会実装に取組んでいます。

伊藤忠商事とTRENDE株式会社は、再生可能エネルギーが持つ非化石価値※2を活用した環境価値取引の拡大や、お客様同士のP2P電力取引実現を目指します。

  1. P2P電力取引: Peer to Peerの略。電力の需要家と発電設備保有者による電力の直接取引を指す。
  2. 非化石価値: 発電の際に化石燃料を使用しない電源に対して付与される環境価値。再生可能エネルギーの導入を推進するため、2018年5月に取引市場が創設。

日本初の系統用蓄電池専業ファンドの運営

再生可能エネルギーの開発が活発化する中、発電量が大きく変動する再生可能エネルギー電源に対する需給調整機能の必要性が増大しています。系統用蓄電池は、電力系統へ需給調整力を提供できる今後の脱炭素社会に不可欠な存在であり、東京都は電力系統の安定化に資する系統用蓄電池の普及促進を目的として、官民連携ファンドを創設することとしました。

伊藤忠商事は、東京都が進める創エネ・蓄エネ推進ファンドの運営事業者にGore Street Capital Limited(以下、GSC社)と共同で選定され、GSC社と法人を設立の上、東京都が出資参画する官民連携ファンドを運営します。本ファンドは欧州や米国に続く日本初の系統用蓄電池への専業ファンドとなり、民間機関投資家から80億円超の出資を受け本格運営を開始しています。

本ファンドは「再エネ電源の最大活用」「電力需給の安定化」「蓄電所マーケットの拡大及びファイナンスモデルの確立」を目標に掲げており、不動産・サービス・自動車・金融等の多様な業種からの資本参画を得て、これらの実現に共同で取組んでいきます。

系統用蓄電池事業における豪州Akaysha Energy Ptyとの戦略的業務提携

Akaysha社開発中の豪州蓄電所プロジェクトの完成イメージ

伊藤忠商事とAkaysha Energy Pty(以下、Akaysha社)は、高性能で効率的な系統用蓄電池システムの開発を目指し、戦略的提携契約を締結し競争力の強化を図ります。ブラックロック・グループ傘下のAkaysha社は、事業開発プラットフォーマーとして、グローバルに系統用蓄電ソリューションの開発、保有及び運営を推進しています。当社は、国内外の再生可能エネルギーの更なる導入拡大と安定供給に寄与できるよう、本協業を通じて互いの革新的なソリューションを組合わせ、持続可能な社会の実現に向けた役割を果たしていきます。

5. 水インフラ関連事業

伊藤忠商事は、新興国を中心とした経済発展や人口増加、気候変動による降水パターンの変化により、拡大が予想される水関連ビジネスを重点分野と位置付け、海水淡水化事業、水道コンセッション事業等を、グローバルに展開しています。

海水淡水化事業

伊藤忠商事は豪州ヴィクトリア州における海水淡水化事業に出資参画しています。本設備はヴィクトリア州メルボルン市人口の水需要の約30%を満たすことが可能であり、2012年よりメルボルン市への水の安定供給を支える事業です。
またオマーン政府傘下のオマーン電力・水公社が同国北部のバルカにて推進する海水淡水化事業には筆頭株主として出資参画しています。

取組み例

海水淡水化プラント及び浸透膜の製造・販売事業 命をつなぐ飲用水を安定供給
オマーン海水淡水化プラントの航空写真
—オマーン最大の海水淡水化事業—

2016年3月、伊藤忠商事が参画するBarka Desalination Company(バルカ・デサリネーション・カンパニー)は同国の水の安定供給に向けてオマーン北部バルカでの日量281,000m3の海水淡水化事業契約を締結しました。同プロジェクトは深刻な水ストレス地域であるバルカ地域への生活用水を提供するためのオマーン政府との官民連携型事業であり、逆浸透膜(RO膜)方式の海水淡水化設備と周辺設備の建設及び20年間にわたる運営を行います。設備は2018年6月に商業運転を開始し、総事業費約300百万米ドルのオマーン最大の海水淡水化事業です。2022年2月にマスカット証券取引所に上場を実現しました。

6. 廃棄物処理発電事業

セルビア/ベオグラード 廃棄物処理・発電PPP事業サイトの航空写真

世界では年間20.1億t(東京ドーム約5,400杯分)の一般廃棄物が排出されており、その少なくとも3分の1は回収もされず散乱もしくは焼却等適切な処理がされずに埋め立てられています。その結果、腐敗ガスが出たのちに自然発火して火災が発生したり、流れ出た有害物質が湖や川、地下水等に混じったりすることで、周辺地域の人々の健康や生態系に悪影響を及ぼすこともあります。新興国を中心とした急速な都市化と人口増加により、今後30年間で世界の廃棄物量は年間34億tにまで達すると予測されています。

伊藤忠商事は、英国において自治体向けに3件の廃棄物処理発電事業を開発・投資・事業経営を担っており、3件合わせて年間85万tの廃棄物を焼却処理、10万世帯分の国内家庭消費電力に相当する電力を供給しています。また、セルビア共和国においては、セルビア政府及びベオグラード市と連携して、廃棄物処理発電所を含む統合型廃棄物処理事業を、開発・推進しています。深刻な環境被害をもたらし同国最大の環境・社会問題となっていたVinča(ヴィンチャ)廃棄物埋立場を閉鎖、適切な管理を行うと共に、ベオグラード市から排出される一般廃棄物を焼却処理、その余熱を活用したクリーン発電を行うものです。国際金融公社、欧州復興開発銀行、オーストリア開発銀行からなる国際銀行団からの融資を調達し、廃棄物処理発電プラントを含む廃棄物処理管理施設の建設を完了し、2024年7月から商業運転を開始しています。廃棄物処理発電プラントでは、年間34万tの廃棄物を焼却処理、3万世帯分の家庭消費電力に相当する電力を供給します。これらの事業に加え、2020年には、UAE/ドバイ首長国において廃棄物処理発電事業の取組みを開始しました。同首長国内で発生する一般廃棄物の約45%にあたる年間190万tを焼却処理し、焼却時に発生する熱を利用し発電を行う、世界最大規模の廃棄物処理発電事業になります。2024年8月に当該施設の建設を完了し、商業運転を開始しています。35年にわたる運営を通じて、ドバイ政府が掲げる、廃棄物の埋立処分量の削減・持続可能な環境に配慮した廃棄物管理・化石燃料に頼らない代替エネルギーの開発促進といった同首長国の環境・衛生面における政策目標の達成に貢献します。

7. 還元鉄事業

低炭素還元鉄サプライチェーン構築

鉄鋼業界では、製鉄過程で発生するCO2排出量の削減が喫緊の課題となっています。直接還元法は、鉄分値が高い「高品位鉄鉱石」を原料とし、その還元に天然ガスを使用することで、従来の高炉法に比べて製鉄過程におけるCO2排出量を大幅に削減できる製鉄手法です。

伊藤忠商事は、長年の事業パートナーであるJFEスチール株式会社、アラブ首長国連邦(UAE)鉄鋼最大手のEMSTEELと共に、低炭素還元鉄のサプライチェーン構築に関する事業化調査を共同推進しています。一般に高炉法では粗鋼1tの生産過程で発生する約2tのCO2排出量を、天然ガスを用いた直接還元法では約1~1.5tまで削減する効果があります。将来的には水素による還元を実現することで、製鉄過程のCO2排出量ゼロ化を目指します。

同事業では、当社の出資先であるブラジル鉄鉱石事業CSN Mineração S.A.(以下、CM社)で生産される高品位鉄鉱石の活用を予定しており、2024年11月にはCM社への追加出資を実施しました。同社が保有するカサ・ジ・ペドラ鉱山は、高品位鉄鉱石を大規模かつ低コストで生産可能な希少な既操業鉱山です。本追加出資によりCM社との協業関係を強化し、生産体制の整備・拡大を図ることで、低炭素還元鉄サプライチェーンの構築を進めていきます。

また、当社は2022年より、還元鉄の生産に不可欠な高品位鉄鉱石を生産するカナダ鉄鉱石事業にも参画しています。

  • 出典: JFEグループ 環境経営ビジョン 2050、P9
高炉法では粗鋼1tの生産過程で発生する約2tのCO2排出量を、天然ガスを用いた直接還元法では約1~1.5tまで削減する効果があり、将来的には水素還元でネットゼロを目指す。
粗鋼1tを生産する過程でのCO2排出量比較
低炭素還元鉄イメージ

8. CCUS・CO2固定化事業

豪州MCi社とのCO2固定化事業

オーストラリアニューカッスルのMCi社実証プラント(2025年1月撮影)

CCUSの具体的な取組みとして、オーストラリアのMCi Carbon(以下、MCi社)に出資し、協業しています。MCi社は鉄鋼スラグ・廃コンクリート・蛇紋岩等にCO2を結合させ、製造した炭酸塩を建材等の用途に利用する技術の普及を進めています。2013年10月に設立されたMCi社は、将来的に毎年1億t規模のCO2の固定化を目指す、この分野におけるパイオニア企業です。

2022年7月には伊藤忠商事と大成建設株式会社、MCi社の3社間で覚書を締結し、コンクリート原料としての本炭酸塩の活用につき、検証を進めています。更に、2025年1月には伊藤忠商事、UBE三菱セメント株式会社、MCi社の3社間で覚書を締結し、日本国内の製造プラント建設や国内事業化に向けた原料調達、販売といったサプライチェーンの構築を目指しています。また、その他日本国内外のCO2排出事業者や原料供給者とも事業化に向けた協議を行っています。

MCiはテスト用のパイロットプラントを既に保有しており、現在、自動化や連続運転が可能な実証プラントの建設をニューカッスルにて進めています。2025年6月には本格稼働を開始し、年間1,000t以上のCO2を処理する計画です。その後は、2028年頃に第一号の商業プラントをオーストリアに建設することを目指しています。

先進的CCS事業に関わるスタディ・設計作業受託について

伊藤忠商事が幹事会社を務め、日本製鉄(株)、太平洋セメント(株)、三菱重工業(株)、(株)INPEX、大成建設(株)及び伊藤忠石油開発(株)と共同提案した日本海側東北地方におけるCCS事業構想が、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構の2023年度公募事業「先進的CCS事業の実施に係る調査」及び2024年度公募事業「先進的CCS事業に係る設計作業等」に採択されました。

CCS(二酸化炭素の分離回収・輸送・貯留)は、政府が掲げる2050年カーボンニュートラルと2035年度においてGHG 60%削減(2013年度比)を実現するために最大限活用すべき手段として位置付けられており、当社はその社会実装に向けて注力していきます。

船舶輸送を用いた大規模広域CCSバリューチェーン事業のイメージ図

9. グリーンビルディング

伊藤忠商事は、住宅・商業及び物流施設・工業団地等を中心に、不動産開発から運営管理まで一貫して携わっており、スマートシティのコンセプトや、IoT技術等も活用した、暮らしに不可欠で良質な不動産及び関連サービスを提供しています。

グループ会社が運営する不動産投資信託は、不動産会社・ファンドのサステナビリティへの取組みを評価する「GRESBリアルエステイト評価」に参加しています。また、環境負荷低減の観点より、保有ポートフォリオにおいてグリーンビルディング認証の取得を積極的に行っています。賃貸マンション特化型の上場不動産投資信託であるアドバンス・レジデンス投資法人では、CASBEE不動産評価認証取得物件を27物件、DBJ Green Building認証を1物件、建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)評価取得物件を4物件保有しています。なお、保有ポートフォリオにおける割合は、床面積ベースで33.1%、物件数ベースで10.7%に相当します。また、総合型の私募不動産投資信託であるアドバンス・プライべート投資法人では、3物件にてCASBEE不動産評価認証を取得しており、そのポートフォリオ(底地を除く)における割合は、床面積ベースで37.7%、物件数ベースで21.4%に相当します。

  • 各数値は2025年1月末時点の情報です。

10. 外部との協働

イニシアティブへの参画を通じたクリーンテックビジネスへの取組みを推進、拡大させています。各イニシアティブへの参画においては伊藤忠商事のクリーンテックビジネスに対する基本方針、取組みと合致しているか確認の上、参画を決定しています。

一般社団法人 カーボンリサイクルファンド

2019年8月に設立。CO2をカーボン源として利用し、2050年カーボンニュートラルという目標達成に向けて一層の努力を行う必要があると考え、地球温暖化問題と世界のエネルギーアクセス改善の同時解決を目指し、カーボンリサイクルに関わる研究助成活動や広報活動等により、カーボンリサイクルイノベーション創出支援を行う一般社団法人であり、伊藤忠商事も会員として参加しています。

日本CCS調査株式会社

2008年5月、地球温暖化対策としてのCCSを推進するという国の方針に呼応する形で、電力、石油精製、石油開発、プラントエンジニアリング等、CCS各分野の専門技術を有する大手民間会社が結集して設立された民間CCS技術統合株式会社で、北海道苫小牧におけるCO2の分離・回収、利用、輸送、地中貯留の実証プロジェクトの調査及び実証試験等を行っています。伊藤忠商事も株主の一社として、本件を支援しています。また、液化CO2大量輸送技術の確立のための研究開発・実証事業も同社と共同推進しています。

再生可能エネルギー地域活性協会

一般社団法人再生可能エネルギー地域活性協会(FOURE)は、日本における主力電源としての再生可能エネルギーの地域導入を普及促進し、各地域と再生可能エネルギーが共生し相互に発展することで、地域に裨益する再生可能エネルギーの導入拡大並びに脱炭素社会の実現を目指す団体で、2021年6月に設立、伊藤忠商事は2022年3月から会員として参画しています。

ジャパンサステナブルファッションアライアンス

2021年8月、伊藤忠商事、株式会社ゴールドウイン、日本環境設計株式会社を初代代表として「ジャパンサステナブルファッションアライアンス」が設立されました。本アライアンスは、ファッション産業が自然環境や社会に与える影響を把握し、ファッション及び繊維業界の共通課題について共同で解決策を導き出すための連携プラットフォームです。「適量生産・適量購入・循環利用によるファッションロスゼロ」と「2050年カーボンニュートラル」を目標に、サステナブルなファッション産業への移行を推進していきます。

再生可能エネルギー関連取組み一覧(発電容量ベース)
取組み内容 事業名/出資先 発電容量・規模 GHG削減数値
(推定値・プロジェクト
100%ベース)
風力発電事業

Aspenall風力発電事業

アメリカ

43MW

10万t/年

Cotton Plains風力発電事業

アメリカ

202MW

48万t/年

Prairie Switch Wind風力発電事業

アメリカ

160MW

38万t/年

Grandview Wind風力発電事業

アメリカ

211MW

50万t/年

Bowman Wind風力発電事業(建設中)

アメリカ

209MW

50万t/年

むつ小川原風力発電事業(建設中)

日本

64.5MW

15万t/年

洋上風力発電事業

Butendiek 洋上風力発電事業

ドイツ

288MW
発電規模:370,000軒の
家庭消費電力相当

75万t/年

廃棄物処理・
発電事業

ST&W 廃棄物処理・発電事業
/ South Tyne & Wear Energy Recovery Holdings Limited

イギリス

26万t/年の一般廃棄物を焼却処理
発電規模:31,000軒の
家庭消費電力相当

6万t/年

Cornwall 廃棄物処理・発電事業
/ Cornwall Energy Recovery Holdings Limited

イギリス

24万t/年の一般廃棄物を焼却処理
発電規模:21,000軒の
家庭消費電力相当

6万t/年

West London 廃棄物
処理・発電事業
/ West London Energy Recovery Holdings Limited

イギリス

35万t/年の一般廃棄物を焼却処理
発電規模:50,000軒の
家庭消費電力相当

8万t/年

セルビア 廃棄物処理・発電事業
/ Beo Cista Energija

セルビア

34万t/年の一般廃棄物を焼却処理発電・熱供給及び埋立ガス活用により発電
発電・熱供給規模:
30,000軒の家庭消費電力、60,000軒の家庭消費熱量(冬季)相当

10万t/年

ドバイ 廃棄物処理・発電事業
/ Warsan Waste Management
Company P.S.C.

UAE

190万t/年の一般廃棄物を焼却処理
発電容量:約200MW

109万t/年

地熱発電事業

Sarulla Operations Ltd

インドネシア

330MW

215万t/年

太陽光発電事業

Cotton Plains太陽光事業

アメリカ

15MW

2万t/年

Rosamond South太陽光・蓄電池事業(建設工事中)

アメリカ

140MW

15万t/年

ベトナム屋根置き太陽光事業

ベトナム

15MW

2万t/年

大分日吉原太陽光発電所
メガソーラー事業

日本

45MW

5万t/年

新岡山太陽光発電所
メガソーラー事業

日本

37MW

4万t/年

西条小松太陽光発電所
メガソーラー事業

日本

26MW

3万t/年

佐賀相知太陽光発電所
メガソーラー事業

日本

21MW

2万t/年

アイ・グリッド・ソリューションズ

日本

291MW

30万t/年

Clean Energy Connect

日本

193MW

20万t/年

Solaben太陽熱発電事業

スペイン

100MW

18万t/年

バイオマス発電事業

市原バイオマス発電所
バイオマス発電事業

日本

49.9MW

36万t/年

日向バイオマス発電所
バイオマス発電事業

日本

50MW

36万t/年

田原バイオマス発電所
バイオマス発電事業
(建設中)

日本

50MW

36万t/年

グリーンレベニュー実績(クリーンテックビジネス収益を含む組織業績)
2024年度
当期純利益(取込収益)
2025年度見通し
当期純利益(取込収益)
電力・環境ソリューション部門※1

89億円

75億円

北米電力関連事業※2

115億円

148億円

  1. 国内再生可能エネルギー発電事業や蓄電池事業を専門的に担うエネルギー・化学品カンパニー傘下の部門
  2. 北米電力事業及び関連サービス事業の損益を合算して表示しています。