伊藤忠商事のクリーンテックビジネス
環境・クリーンテック分野において、中長期的視野に立ち、最先端技術を取り入れ用い、将来的に持続可能な成長が予測される且つ、低炭素社会・循環型社会に向けて社会構造の転換に資する下記の分野のビジネス開発に積極的に取組んでいます。
1. 再生可能エネルギー事業の積極的な推進と拡大
伊藤忠商事では、世界中の各種発電所建設/改修プロジェクト・新規/既存発電所のIPP(Independent Power Producer)事業・発電所の運転保守事業等電力に関わるプロジェクトに多角的に取組み、発電効率の最適化を目指しています。
これらの事業の中でも、地熱・風力・太陽光・バイオマス等の再生可能エネルギーを活用した発電事業を積極的に推進しており、発電事業全般において、持分容量ベースの再生可能エネルギー比率を2019年度の12.5%から2030年度までに20%超への拡大をめざしています。
当社は引き続き国内外における再生可能エネルギーを活用した発電事業を積極的に推進することで、持続可能な開発目標としての気候変動を緩和する低炭素社会の形成に貢献していきます。
再生可能エネルギー発電量推移(持分容量ベース)
![[図表]](/ja/img/bu_ct_img05.gif?200323)
再生可能エネルギー比率の目標
![[図表]](/ja/img/bu_ct_img06.gif?200710)
2019年 | 2019年 | 2030年(目標) | |
---|---|---|---|
持分容量(MW) | 比率(%) | 比率(%) | |
風力発電事業 | 185 |
12.5% |
20%超 |
太陽光・太陽熱発電事業 | 83 |
||
地熱発電事業 | 83 |
||
バイオマス発電事業 | 20 |
||
再生可能エネルギー発電計 |
369 |
||
天然ガス発電 | 1,621 |
87% |
80%未満 |
石炭・石油火力発電 | 955 |
||
火力発電計 |
2,576 |
||
発電事業計 |
2,945 |
100% |
100% |
再生可能エネルギー関連取組みの一覧はこちらからご覧いただけます。
「新規の石炭火力発電事業の開発および一般炭炭鉱事業の獲得は行わない」※ことを、取組み方針とします。
取組み状況および事例
風力発電事業
風力発電(陸上、洋上)においては、1990年代後半から取組んでおり、日本、米国、ドイツにて、現在6件を開発若しくは保有しています。
ドイツ北海沖の洋上風力発電 Butendiek風力発電所
![[写真]](/ja/img/bu_ct_img01.jpg)
再生可能エネルギーの需要が高まる中、ドイツ北海沖で稼働中の洋上風力発電所(288MW)の発電事業に、戦略的業務・資本提携を締結しているCITICグループと共同参画しています。ドイツ標準家庭の約37万世帯分の電力を供給しており、低炭素社会への移行に貢献しています。
太陽光・太陽熱発電事業
日本、米国、スペインにて、合計6件の大型の太陽光・太陽熱発電事業に取り組んでいます。これに加え、事業会社のVPP Japanを通して約10MWの屋根置き太陽光を保有しており、2021年までに100MWを目指しています。
太陽光の力でクリーンな電力を供給 佐賀相知太陽光発電所
![[写真]](/ja/img/bu_ct_img02.jpg)
—国内4か所目の太陽光発電事業—
2018年4月、当社が参画する「佐賀相知太陽光発電所」(発電出力約1万7千キロワット)の商用運転が開始しました。本発電所は佐賀県唐津市相知町に建設した現時点で県内最大のメガソーラー(大規模太陽光発電所)であり、株式会社九電工と共同で20年間運営を行う予定です。年間予想発電量は約2,400万キロワット時と、一般家庭約4,200世帯分の年間消費電力量に相当します。これに伴う二酸化炭素の削減量は、年間で約1万1,000トンとなります。当社が国内で運営するメガソーラーは愛媛、大分、岡山に続き4か所目となりました。
地熱発電事業
インドネシアにて世界最大級のサルーラ地熱IPP事業に参画しています。本プロジェクトは株式会社国際協力銀行、アジア開発銀行及び市中銀行による、初の新規地熱IPP向けの協調融資案件であり、総額約1,170百万米ドルのプロジェクトファイナンスが適用されています。
バイオマス発電事業
日本にて、当社がバイオマス燃料の供給を行うことで、ファイナンス組成を円滑にし、既に保有する発電所の建設、運営の知見を組み合わせることで、安定的なバイオマス発電事業に取り組んでいます。
2. アンモニア燃料関連事業
2016年にパリ協定が発効し、脱炭素化の世界的な気運が高まる中、海運では、国際海事機関が2018年に温室効果ガス(GHG)削減戦略を採択し2030年までに2008年比40%効率改善、2050年までに2008年比50%総量削減、更には今世紀中できるだけ早期にGHG排出フェーズアウト(ゼロ・エミッション)を掲げています。これらの目標達成に向け、ゼロ・エミッション船を目指した船舶の早期開発が期待されており、その中でアンモニアは代替燃料の候補として各方面で注目されています。また、アンモニア燃料の船舶開発を具体化するにはアンモニア燃料の舶用サプライチェーンの構築が重要となります。
アンモニアを主燃料とする主機関を搭載する船舶の共同開発
伊藤忠商事は、今治造船株式会社、株式会社三井E&Sマシナリー、一般財団法人日本海事協会、伊藤忠エネクス株式会社とともに、この度、MAN Energy Solutionsの間で、MAN社が開発を進めているアンモニアを主燃料とする主機関(以下、「アンモニア焚機関」)を搭載する船舶の共同開発に取り組むことに合意しました。
今回の日本企業連合を核とした共同開発においては、単にアンモニア焚機関を搭載する船舶の開発にとどまらず、同船舶の保有運航、舶用アンモニア燃料の導入、及びその供給設備を含めた統合型プロジェクトの具体化までを目指しており、国内外の各企業、関係省庁とも協力し、GHG削減に向けた取組を進めていきます。
アンモニア燃料の船舶用供給に関するサプライチェーン構築
伊藤忠商事と伊藤忠エネクスは、VOPAK Terminal Singapore Pte Ltdとの間で、シンガポールでのアンモニア燃料の舶用供給に関するサプライチェーン構築に関する共同研究に取り組んでいくことを合意しました。
今回の共同開発においては、シンガポールでのアンモニア燃料のサプライチェーン構築にとどまらず、伊藤忠商事、及び伊藤忠エネクスが並行して進めているアンモニアを主燃料とする主機関を搭載する船舶の共同開発、同船舶の保有運航、舶用アンモニア燃料の導入、及びその供給設備を含めた統合型プロジェクトの一環として位置付けており、国内外の各企業、関係省庁とも協力し、GHG削減に向けた取組を進めていきます。
3. 蓄電システム事業の積極的な推進と拡大
再生可能エネルギー供給安定化において調整弁の役割を持つ蓄電システム(Energy Storage System : ESS)を販売することで、低酸素社会の促進、環境リスクの低減を図り企業価値向上に貢献していきます。2030年度までに売上規模年間500億円、累計電力容量19年比22倍を超える5,850,000kwh規模を目指します。
今後はグローバルな電池調達や販売店網との取り組みを強化し、海外事業展開(特に今後伸長が予測される米国、豪州市場を想定)、産業用途や電力用途大型蓄電システムさらには車載電池のリユースからリサイクル事業の取り組みまで行うことで環境リスクの低減を図り、企業価値向上に貢献してまいります。
蓄電システム事業 事業規模
伊藤忠商事は日本国内において、独自ブランドの蓄電システム「Smart Star」を株式会社エヌエフ回路設計ブロックとともに開発・製品化し、2019年度3月時点で累計約30,000台の販売実績となりました。
蓄電システム年間売上金額(百万円)
![[図表]](/ja/img/bu_ct_img07.gif)
蓄電システム販売累計容量(kwh)
![[図表]](/ja/img/bu_ct_img08.gif)
取組み例
AI技術を活用した次世代蓄電システム販売開始
![[写真]](/ja/img/bu_ct_img03.jpg)
伊藤忠商事株式会社は、英国のMoixa Energy Holdings Ltd.と資本業務提携しました。
本取り組みにより、Smart Star Lが持つ停電時に強みを発揮する本来の特長に加え、AIが気象予報やユーザーの電力需要・発電予測等を分析・学習し、蓄電池の最適充放電制御を行う事で、太陽光ならびに蓄電池の効率的な運用を可能にいたしました。
Smart Star Lの製品公式サイトはこちらをご覧ください。
米国Sunnova社との蓄電池ビジネスの資本・業務提携
米国の大手住宅用太陽光発電事業・ESS事業者Sunnova Energy Corporationから第三者割当増資を引き受け、ESS事業の共同推進を行います。
今後、米国では住宅用太陽光発電設備の補助政策(Net Energy Metering)の縮小により、太陽光発電の自宅使用や停電時のバックアップ電源として、ESSの需要が高まることが見込まれております。Sunnova社と当社は米国市場に適したESSの共同開発を行い、Sunnova社の太陽光発電設備へのESS導入、ならびに当社の出資先である英国Moixa Energy Holdings Ltd.のAIソフトウェアによるESSの最適運用サービス展開を予定しています。
4. 水インフラ関連ビジネス
伊藤忠商事は、新興国を中心とした経済発展や人口増加、気候変動による降水パターンの変化により、拡大が予想される水関連ビジネスを重点分野と位置付け、海水淡水化事業や水処理事業、2014年から取組んでいるコンセッション事業等を、グローバルに展開しています。
欧州における上下水道コンセッション事業
2012年、英国Bristol Waterグループに出資。日本企業初の英国水道事業参入を果たし、水源管理から浄水処理、給配水、料金徴収・顧客サービスまでを包括した上水サービスを約120万人に提供しています。
2014年、スペインカナリア諸島にて上下水道サービスを提供するCANARAGUA CONCESIONES S.A.に出資。日本企業初のスペイン水道事業参入を果たし、自治体とのコンセッション契約に基づき延べ130万人に対し上下水道サービスを提供しています。
海水淡水化事業
豪州ヴィクトリア州における海水淡水化事業に出資参画。本設備はヴィクトリア州メルボルン市人口の水需要の約30%を満たすことが可能であり、2012年よりメルボルン市への水の安定供給を支える事業です。
オマーン政府傘下のオマーン電力・水公社が同国北部のバルカにて推進する日量281,000m3の海水淡水化事業に筆頭株主として出資参画。本件はオマーン最大の海水淡水化事業であり、逆浸透膜(RO膜)方式の海水淡水化設備と周辺設備の建設及び20年間に亘る運営を行います。2018年6月に商業運転開始。
取組み例
海水淡水化プラント及び浸透膜の製造・販売事業 命をつなぐ飲用水を安定供給
![[写真]](/ja/img/bu_ct_img04.jpg)
—オマーン最大の海水淡水化事業—
2016年3月、当社が参画するBarka Desalination Company(バルカ・デサリネーション・カンパニー)は同国の水の安定供給に向けてオマーン北部バルカでの日量281,000m3の海水淡水化事業契約を締結しました。同プロジェクトは、オマーン政府が推進する官民連携型事業であり、逆浸透膜(RO膜)方式の海水淡水化設備と周辺設備の建設及び20年間にわたる運営を行います。設備は2018年6月に商業運転を開始し、総事業費約300百万ドルのオマーン最大の海水淡水化事業となります。
5. グリーンビルディング等への取組み
建設・不動産部門及び同部門グループは、住宅・商業及び物流施設・工業団地等を中心に、不動産開発から運営管理まで一貫して携わっており、スマートシティのコンセプトや、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)の先端技術等も活用した、暮らしに不可欠で良質な不動産及び関連サービスを提供しています。
国内不動産事業
グループ会社が運営する、賃貸マンション特化型の上場不動産投資信託であるアドバンス・レジデンス投資法人では、不動産会社・ファンドのサステナビリティへの取組みを評価する「GRESB」評価に参加しており、また、DBJ Green Building認証取得物件を15物件保有しております。保有ポートフォリオにおける割合は、床面積ベースで25.3%、物件数ベースで5.6%に相当します。なお、物流不動産特化型の上場不動産投資信託である伊藤忠アドバンス・ロジスティクス投資法人では、DBJ Green Building認証取得物件を5物件保有しております。保有ポートフォリオにおける割合は、床面積ベースで65.5%、物件数ベースで55.6%に相当します。
海外工業団地事業
アジアで工業団地の開発・管理・運営まで一貫で提供しています。インドネシアではカラワン工業団地(KIIC)を事業展開し、およそ1,400haの工業団地には150社超の企業が入居しています。団地内には、独自の工業用水プラント施設や排水プラント施設、非常用バックアップとしての調整池の設置など、安定したインフラ設備の構築を実現しています。また、24時間警備の実施やカワラン県政府・警察との連携、消防車や救急車の配備など、治安・警備・セキュリティ面で入居企業が事業に専念できる体制を整備するとともに、インドネシアの工業団地として初めてスマート街路灯※を整備し、環境負荷の低減にも努めています。
- スマート街路灯:省電力・高効率LEDに調光・制御機能を付加し、街路照明をスマート化するIoTソリューション。KIIC内に約1,200本整備。
6. その他クリーンテック事業(リンク集)
再生可能エネルギー
代替燃料
電力マネージメント
燃料節減
水インフラ
浄水・海水淡水化
取組み内容 | 事業主名/出資先 | 国 | 発電容量・規模 | 温室効果ガス 削減数値 |
---|---|---|---|---|
風力発電事業 | CPV Keenan Ⅱ |
アメリカ |
152MW |
約40万トン/年 |
Cotton Plains 風力・太陽光発電事業 |
アメリカ |
217MW |
約56万トン/年 |
|
洋上風力発電事業 | Butendiek 洋上風力発電事業 |
ドイツ |
288MW |
約75万トン/年 |
廃棄物処理・ 発電事業 |
ST&W 廃棄物処理・ |
イギリス |
26万トン/年の一般廃棄物を焼却処理 |
推定6.2万トン/年 |
Cornwall 廃棄物処理・ |
イギリス |
24万トン/年の一般廃棄物を焼却処理 |
推定6万トン/年 |
|
Merseyside 廃棄物 |
イギリス |
46万トン/年の一般廃棄物を焼却処理 |
推定13万トン/年 |
|
West London 廃棄物 |
イギリス |
35万トン/年の一般廃棄物を焼却処理 |
推定8.3万トン/年 |
|
セルビア 廃棄物処理・ |
セルビア |
34万トン/年の一般廃棄物を焼却処理予定 |
推定12万トン/年 |
|
地熱発電事業 | Sarulla Operations Ltd |
インドネシア |
330MW |
約135万トン/年 |
太陽光発電事業 | 大分日吉原太陽光発電所 |
日本 |
44.8MW |
推定3.2万トン/年 |
新岡山太陽光発電所 |
日本 |
37MW |
推定2.6万トン/年 |
|
西条小松太陽光発電所 |
日本 |
26.2MW |
推定1.7万トン/年 |
|
佐賀相知太陽光発電所 |
日本 |
21MW |
推定1.1万トン/年 |
|
バイオマス発電事業 | 市原バイオマス発電所 |
日本 |
49.9MW |
推定13.6万トン/年 |