伊藤忠商事のクリーンテックビジネス

基本方針・戦略

伊藤忠商事は、中期経営計画「Brand-new Deal 2023」において、気候変動を含む「「SDGs」への貢献・取組強化」を基本方針の一つとしました。本基本方針は2024年策定の経営方針「The Brand-new Deal」にも引継がれています。脱炭素社会を業界に先駆けて実現することで、日本政府目標から10年前倒した2040年までにクリーンテックビジネスによる削減貢献量の創出が当社GHG排出量を上回る「オフセットゼロ」を目指します。更に「The Brand-new Deal」では、企業価値の持続的な向上を目指す戦略の柱の一つを「業績の向上~投資なくして成長なし」と設定し、事業領域の拡大に努めます。

気候変動を含む環境リスクは、同時にクリーンテックビジネスの機会でもあります。当社は、中長期的視野に立ち、最先端技術を取り入れ、将来的に持続可能な成長が予測される、かつ、脱炭素社会・循環型社会に向けた社会構造転換に資する具体策を先手で推進します。総合商社である当社の幅広いバリューチェーンを活かし、多角的な事業投資を行うことでプロジェクト全体の利益率を向上させ、環境性のみならず経済性の向上も同時に追求する方針です。そのため、クリーンテックビジネスについても、その他の事業と同様の厳しい投資基準を適用しています。

また、クリーンテックビジネスによる削減貢献量の推移及びこれに影響する外部環境のモニタリングを行い、各事業の進捗や市況に応じ、運営状況の見直し等を行っています。

目標(移行計画)

クリーンテックビジネス等排出量削減に貢献するビジネスの積極推進を通じ、2040年までに当社GHG排出量の「オフセットゼロ」を目指す。

  • オフセットゼロ: 削減貢献量が当社GHG排出量を上回る状態
各ビジネスセグメントにおける個別目標
ビジネスセグメント 個別目標
再生可能エネルギー事業
  • 当社持分発電容量に占める再生可能エネルギー比率を2030年度までに20%超に引き上げる
    • 合計約2,700MWの再生可能エネルギー事業に参画中
    • 売却済み案件含め、2026年3月時点で累計6,500MW、40件以上の太陽光発電所を開発中
アンモニア燃料関連事業
  • アンモニア燃料船の開発と保有運航、燃料供給拠点の整備、燃料アンモニア調達を統合的に開発することでアンモニア燃料を中心としたバリューチェーンを構築
  • 2050年の国際海運におけるGHG排出ゼロ目標に対し、アンモニア燃料船の普及促進、社会実装を進めることで国際海運の脱炭素化に貢献する
蓄電システム事業
  • 2030年度までに累計導入蓄電容量3.5GWhを超える規模を目指す
水インフラ関連事業
  • 欧州、中東、豪州等における実績を他地域にも展開し、引続き優良資産の積み上げを行う
廃棄物処理発電事業
  • 欧州、中東における実績を他地域に展開し、引続き優良資産の積み上げを行う

取組み

経営の関与 - 脱炭素・カーボンニュートラルタスクフォース

前中期経営計画「Brand-new Deal 2023」における「「SDGs」への貢献・取組強化」により脱炭素社会を業界に先駆けて実現するとの強いコミットメントは、2024年4月に策定した中長期の羅針盤となる経営方針にも引継いでいます。伊藤忠商事では、2021年4月、社長COOを管掌としたカンパニー間横断での脱炭素・カーボンニュートラルタスクフォースを立ち上げました。本タスクフォースでは、各カンパニーでの取組み案件の進捗の詳細につき原則毎月報告されており、分野も水素・アンモニア案件に限定せず、GHG排出量削減に寄与し市場拡大が見込まれるその他脱炭素案件(排出権取引、CCUS等)に関しても討議を重ねています。

個別事業のご紹介

1. 再生可能エネルギー事業

伊藤忠商事は、グローバルに脱炭素ビジネス(再生可能エネルギー、水素、アンモニア)を展開中です。 米国では同国での20年以上にわたる電力事業の経験を活かし、中核事業会社(Tyr Energy, Inc. /NAES Corporation)を軸に、電力開発、建設、投資運転・保守のバリューチェーン全体で稼ぐ体制を構築しています。太陽光・陸上風力を中心に、民需が旺盛な再生可能エネルギー分野を強化しながら、開発を核に投資、エンジニアリング、O&M、機器メンテナンス等機能を多角的に提供することで当分野における収益を積み上げる方針です。

再生可能エネルギー発電事業

再生可能エネルギー発電量推移(持分容量ベース)

2005年度には53MWしかなかった持分容量を、2025年度までに712MWまで伸長した。2030年度20%超を目指し、引き続き案件拡大を進めていく。

再生可能エネルギー比率目標(持分容量ベース)

2030年度再生可能エネルギー比率目標20%超に対して、2025年度の持分比率は19.98%となった。
発電事業における再生可能エネルギー比率と推移
2021年度 2022年度 2023年度 2024年度 2025年度 2025年度 2030年度(目標)
持分容量(MW) 持分容量(MW) 持分容量(MW) 持分容量(MW) 持分容量(MW) 比率(%) 比率(%)
風力発電事業

122

164

196

240

213

19.9%

20%超

太陽光・太陽熱発電事業

112

132

164

225

360

地熱発電事業

83

83

83

83

83

バイオマス発電事業

57

57

57

57

57

再生可能エネルギー発電計

373

436

500

605

712

天然ガス発電事業

1,258

1,258

1,466

1,666

1,897

80.1%

80%未満

石油火力発電事業

315

315

315

315

315

石炭火力発電事業

640

640

640

640

640

火力発電計

2,213

2,213

2,421

2,621

2,852

発電事業計

2,586

2,648

2,921

3,226

3,564

100%

100%

再生可能エネルギー関連取組みの一覧はこちらからご覧いただけます。
当社は、新規の石炭火力発電事業の開発は行わないことを、取組み方針としています。

取組み状況及び事例

青森むつ小川原陸上風力発電

カナデビア株式会社と伊藤忠商事の関連会社である東京センチュリー株式会社との共同事業として、良好な風況の適地である青森県上北郡六ヶ所村で陸上風力(64.5MW)の商業運転を2026年3月に開始しました。年間予想発電量は約1.7億kWhで、一般家庭約4.6万世帯分の年間消費電力量に相当します。

メガソーラー発電事業
大分日吉原太陽光発電所

2015年に愛媛県でのメガソーラーの商業運転開始に続き、2016年に大分県、2017年に岡山県、2018年に佐賀県と伊藤忠商事が国内で運営する発電所は4か所(合計発電出力130MW)になります。2025年には佐賀県の発電所について、既存のFIT再生可能エネルギー電源をFIPに転換し、蓄電池を併設して運用することを決定しました。従来のFIT制度では、発電した電気を国が定める固定価格で電力会社が買い取る仕組みであったのに対し、FIP制度では市場価格に応じて販売し、その市場価格に対して一定の上乗せ分(プレミアム)が支払われます。この移行により、電気を蓄えて柔軟に供給でき、再生可能エネルギーの安定供給に貢献します。これまでの各発電所を運営してきた知見や経験が当社における再生可能エネルギー事業の拡大に寄与しており、引続き安定した発電所の運営を目指します。

太陽光分散電源事業
アイ・グリッド・ソリューションズが運営するオンサイト型分散電源

資本業務提携先の株式会社アイ・グリッド・ソリューションズ(アイ・グリッド社)を通じてスーパーマーケット・物流施設の屋根を中心に国内最大規模のオンサイト型分散型発電所を運営しています。アイ・グリッド社は、顧客の初期投資ゼロで自家消費型太陽光発電システムを導入し、施設に直接、長期間に亘り安定価格で電力供給を行うオンサイト型太陽光事業を展開しています。また太陽光発電に加えて、蓄電池や電気自動車といった分散電源をAIによる需給調整プラットフォームによって統合制御することで、顧客施設を中心とした地域のグリーントランスフォーメーション(GX)実現に向けたソリューションを提供しています。

クリーンエナジーコネクトが運営するオフサイト型分散電源

更には、国内の土地を有効活用しグリーン電力を創出する取組みを、株式会社クリーンエナジーコネクト(CEC社)と資本業務提携し、2021年より共同で事業を推進しています。CEC社は、国内遊休地を活用し複数の中小規模の太陽光発電所を開発・保有した上でグリーン電力を束ね、都心のオフィスビル等のお客様へ長期に電気と環境価値の提供を行うオフサイト型太陽光事業を展開し、お客様の脱炭素・RE100の目標達成に貢献しています。2025年度までに国内の約2,700か所に、「追加性」のある太陽光発電所を導入しました。これら太陽光発電所は、全国25都道府県352市町村の広域に分散設置されており、発電所ポートフォリオとして天候による発電量の変動の抑制、災害等のリスク分散を図っています。総発電量は236百万kWh/年、CO2削減量は10.7万t-CO2/年となる予定です。

バイオマス発電事業
市原バイオマス発電所の外観

2020年12月、伊藤忠商事の参画する「市原バイオマス発電所」(発電出力49.9MW)が商業運転を開始しました。本発電所の年間想定発電量は約3.5億kWhとなり、一般家庭約12万世帯の年間消費電力量に相当する発電規模となります。また2024年10月には宮崎県日向市において、当社の参画する「日向バイオマス発電所」(発電出力50MW)が商業運転を開始しました。また、愛知県田原市において、バイオマス発電所(発電出力50MW)を建設中で、2026年度中の運転開始を予定しています。

風力発電事業
米国・ノースダコタ州 Bowman風力発電所

伊藤忠商事は、脱炭素社会の実現に向け、米国で6件、日本で1件の計7件の風力発電事業に投資しています。2023年には北米の再生可能エネルギー開発資産を投資対象とするファンドを設立しました。当ファンドを通じ、2024年2月にGrandview風力発電所(211MW)、2025年5月にDan’s Mountain(55MW)への出資を実行しました。本ファンドを通じて20億米ドル程度の再生可能エネルギー事業を行う予定です。

更に、2026年1月には米国屈指の高風況地帯であるノースダコタ州のBowman風力発電所(208MW)に出資を実行しました。同プロジェクトでは大学や医療機関等計8者と電力販売契約(PPA)を結び、米国10万世帯分の発電量に相当する再生可能エネルギーを供給することで、持続可能な地域社会に直接貢献していきます。

太陽光パネルリサイクル事業

伊藤忠商事は、太陽光パネルリサイクル事業取組みの一環として、先進的な太陽光パネルリサイクル技術を開発・保有する仏ROSI SASから第三者割当増資を引き受け、太陽光パネルリサイクルのビジネス推進・拡大に向けて取組んでいます。昨今、寿命を迎えた太陽光パネルの大量廃棄が近い将来起こるという懸念が世界中で広がっており、これら廃棄太陽光パネルに関する適切なリサイクルチェーンの確立が今後の大きな課題となっています。当社はこれまで培ってきた太陽光発電関連ビジネスのノウハウ及びネットワークに加え、ROSI社の保有する先進的かつ経済性の高いリサイクル技術を組合わせることで、太陽光パネルのリサイクルチェーン確立に貢献していきます。

地熱発電事業
Sarulla地熱発電所写真(2・3号機)

インドネシアにて世界最大級のSarulla地熱IPP事業に参画しています。2013年にインドネシア国有電力会社との間で30年間にわたる長期売電契約を締結、その後発電所の建設を進め、2017年に1号機、2号機、更に2018年に3号機が完成し商業運転を開始しました。世界最大級の地熱資源保有国であるインドネシアは、再生可能エネルギーの導入を今後積極的に推進する方針で、地熱発電も有力な電源の一つです。地熱発電は再生可能エネルギーの中でも日照・風況等の自然条件に大きく左右されることなく電力の安定供給が可能であり、伊藤忠商事は国や地域ごとのエネルギー事情、電源構成を踏まえた電力安定供給により脱炭素への取組みを積極推進していく考えです。

太陽光発電事業

伊藤忠商事は、米国と日本を中心に太陽光発電事業を積極的に展開しています。2025年10月に米国・コロラド州北部で最大規模となるBlack Hollow Sun発電所(Platte River Solar Project)の第1フェーズ(150MW)への出資を実行しました。現在建設中の第2フェーズ(108MW)は、2026年末の完工を予定しています。両フェーズ稼働後はコロラド州北部で最大の太陽光発電所(計258MW)となり、地元電力会社との売電契約(PPA)を通じて約7万世帯分の消費電力に相当する再生可能エネルギーを供給します。

北米再生可能エネルギー向け運転・保守事業

伊藤忠商事の100%子会社で世界最大の独立系O&M事業者であるNAES Corporationを通じて、米国の太陽光・蓄電池・風力発電所(約1,000か所、計3,000MW相当)に対する運転・保守サービス・資産管理事業を行っています。同社は遠隔で運転・故障状況を監視可能なシステムを活用することで、全米各地に散らばる太陽光発電所に対しサービスを提供しています。

北米再生可能エネルギー開発事業
北米で開発が進むメガソーラー

米国において再生可能エネルギーの開発専業部隊であるTyr Energy Development Renewables, LLCを2022年に設立し、現在までに累計約40件、6,500MW程度(売却済み案件を含む)の太陽光発電所を開発しています。土地確保、各種許認可取得、電力系統接続、売電契約の交渉・締結、主要機器・建設工事事業者の選定・交渉、ファイナンス組成等、一連の業務を自社完結する再生可能エネルギーの開発プラットフォームを構築し、今後大きな成長が見込まれる北米再生可能エネルギー事業の開発を加速します。

東ティモールにおける太陽光・蓄電池ハイブリッドIPP事業

伊藤忠商事は、フランス電力公社グループのEDF power solutionsと共同で、東ティモールにおいて、同国初の本格的な再生可能エネルギーIPP案件となる太陽光(72MW)・蓄電池(36MW/36MWh)案件に参画しています。2025年7月に東ティモール電力公社との間で25年間にわたる長期売電契約を締結しました。現在、同国の電力供給はほぼ全量を輸入ディーゼル燃料に依存しており、財政負担や温室効果ガス(GHG)の排出が大きな課題となっています。本事業では、マナトゥト県に太陽光発電所(72MW)と蓄電池(36MW/36MWh)を新設し、2026年度に発電所の建設着工を予定しています。本発電所は東ティモール国内の約8万世帯分(約40万人分)の一般家庭消費電力に相当する再生可能エネルギーを供給する予定で、安定的な電力供給を通じた生活インフラの向上と、現地社会における生活インフラの向上、東ティモールが掲げるクリーンエネルギー政策の実現にも貢献していきます。

廃棄物処理発電事業

セルビア/ベオグラード 廃棄物処理・発電PPP事業サイトの航空写真

世界で排出される一般廃棄物の一部は、回収もされずに散乱したり、焼却等の適切な処理がされないまま埋め立てられています。その結果、腐敗ガスが発生した後に自然発火して火災が起きたり、流出した有害物質が湖や川、地下水等に混じることで、周辺地域の人々の健康や生態系に悪影響を及ぼすことがあります。新興国を中心とした急速な都市化と人口増加により、今後も世界の廃棄物量は増加すると予測され、持続可能な地域社会の実現や地球環境への負荷軽減に貢献する廃棄物処理発電事業を重点分野と位置付けています。

伊藤忠商事は、英国において自治体向けに3件の廃棄物処理発電事業の投資・事業経営を担っており、3件合わせて年間85万tの廃棄物を焼却処理、10万世帯分の国内家庭消費電力に相当する電力を供給しています。また、セルビア共和国においては、セルビア政府及びベオグラード市と連携して、廃棄物処理発電所を含む統合型廃棄物処理事業を、開発・推進しています。深刻な環境被害をもたらし同国最大の環境・社会問題となっていたVinča(ヴィンチャ)廃棄物埋立場を閉鎖、適切な管理を行うと共に、ベオグラード市から排出される一般廃棄物を焼却処理、その余熱を活用したクリーン発電を行うものです。国際金融公社、欧州復興開発銀行、オーストリア開発銀行からなる国際銀行団からの融資を調達し、廃棄物処理発電プラントを含む廃棄物処理管理施設の建設を完了し、2024年7月から商業運転を開始しています。廃棄物処理発電プラントでは、年間34万tの廃棄物を焼却処理、3万世帯分の家庭消費電力に相当する電力を供給します。

これらの事業に加えて、UAE/ドバイ首長国においても廃棄物処理発電事業に取組んでいます。同首長国内で発生する一般廃棄物の約45%にあたる年間190万tを焼却処理し、焼却時に発生する熱を利用し発電を行う、世界最大規模の廃棄物処理発電事業になります。2024年8月に当該施設の建設を完了し、商業運転を開始しています。35年にわたる運営を通じて、ドバイ政府が掲げる廃棄物の埋立処分量の削減・持続可能な環境に配慮した廃棄物管理・化石燃料に頼らない代替エネルギーの開発促進といった同首長国の環境・衛生面における政策目標の達成に貢献します。

蓄電システム事業

伊藤忠商事は、再生可能エネルギーの普及に伴う電力系統の安定化に向け、蓄電システムを中心とした分散電源の統合・制御を進めています。これらにより、電力需給の最適化と脱炭素社会の実現、環境リスクの低減に取組んでいます。特に、蓄電池ビジネスを事業成長の柱とし、安定した電力供給を支える社会基盤の構築に注力しています。

家庭用分野では、AI制御ソフトウェア「GridShare」を活用し、バーチャルパワープラント(VPP)事業の高度化を進めています。家庭用蓄電池やエコキュート等多様な分散型エネルギーリソースを統合的に管理し、新たなエネルギーマネジメントモデルの確立を目指しています。これにより、地域電力システムの強化とエネルギー効率の向上を実現します。

系統用・産業用分野では、蓄電池関連機器の調達力と販売ネットワークを活かし、系統用蓄電所への投資・運用に加え、企業の脱炭素化やレジリエンス強化に対応するソリューション「Bluestorage」を提供しています。また、使用済み電池のリサイクルやトレーサビリティの確立にも取組み、資源循環型ビジネスを推進しています。当社では2030年度までに累計導入蓄電容量約3.5GWhの達成を目指し、引続き持続的な企業価値向上に努めます。

蓄電システム事業 事業規模

分散電源の累計容量(GWh)

2018年度から蓄電システムSmart Starシリーズ販売開始し、2025年度までに販売累計容量は約0.8GWhとなった。2030年度までに3.5GWhを超える規模を目指す。

伊藤忠商事は日本国内において、独自ブランドの家庭用蓄電システム「Smart Star」シリーズを、事業パートナーと共に開発・製品化。2026年3月末時点で最大約60,000台の分散電源が制御可能となりました。

また、日本政府、東京都が脱炭素社会実現に向けて推進している蓄電所事業を中心に、産業・系統用蓄電システム「Bluestorage」についても、設置実績を積み上げています。

取組み状況及び事例

日本初の系統用蓄電池専業ファンドの運営

再生可能エネルギーの開発が活発化する中、発電量が大きく変動する再生可能エネルギー電源に対する需給調整機能の必要性が増大しています。系統用蓄電池は、電力系統へ需給調整力を提供できる今後の脱炭素社会に不可欠な存在であり、東京都は電力系統の安定化に資する系統用蓄電池の普及促進を目的として、官民連携ファンドを創設しました。

伊藤忠商事は、東京都が進める創エネ・蓄エネ推進ファンドの運営事業者にGore Street Capital Limited(GSC社)と共同で選定され、GSC社と法人を設立した上で、東京都が出資参画する官民連携ファンドを運営します。本ファンドは欧州や米国に続く日本初の系統用蓄電池への専業ファンドとなり、民間機関投資家から約90億円超の出資を受け、本格運営を開始しています。

本ファンドは「再生可能エネルギー電源の最大活用」「電力需給の安定化」「蓄電所マーケットの拡大及びファイナンスモデルの確立」を目標に掲げており、不動産・サービス・自動車・金融等の多様な業種からの資本参画を得て、これらの実現に共同で取組んでいきます。

福岡県筑前町における系統用蓄電所事業の共同推進

2018年度から蓄電システムSmart Starシリーズ販売開始し、2025年度までに販売累計容量は約0.8GWhとなった。2030年度までに3.5GWhを超える規模を目指す。
蓄電所イメージ

伊藤忠商事は、三菱地所株式会社及び東京センチュリー株式会社と共同で、福岡県朝倉郡筑前町において系統用蓄電所の建設に着手しました。本プロジェクトは、2027年度の商業運転開始を見込んでいます。

九州エリアでは、太陽光をはじめとした再生可能エネルギー電源の導入が拡大する一方で、天候や時間帯による発電量の変動が大きく、安定供給が難しいという課題があります。こうした背景のもと、電力系統の安定化を図るため、本プロジェクトでは容量市場・卸電力市場・需給調整市場といった複数の電力市場において、自社開発のAIシステムを活用した高度な運用により、収益性と電力需給の安定性の両立を目指します。更に、需給調整力を提供することで、持続可能なエネルギー社会の構築に貢献していきます。

経済産業省が策定した第7次エネルギー基本計画における2050年のカーボンニュートラル実現に向け、太陽光発電等再生可能エネルギーの導入が加速する中、蓄電池市場は今後も大きな拡大が期待されています。

分散型エネルギープラットフォーム「GridShare」の事業拡大

伊藤忠商事は、家庭用蓄電池分野において業界に先駆け、2018年以降、蓄電システムの最適充放電制御を行うソフトウェア「GridShare(グリッドシェア)」を開発する英国Moixa Energy Holdings Ltd.(現Lunar Energy Limited)との資本業務提携を進めてきました。現在は、家庭用蓄電池やエコキュートをはじめとする分散型エネルギーリソースをAIで最適制御するプラットフォーム「GridShare」を、グリッドシェアジャパン株式会社を通じて展開しています。

GridShareは、全国約4万台の蓄電池をクラウド上でネットワーク化し、各家庭の電力使用パターンや気象データをもとに、AIが蓄電池の充放電を遠隔で最適に制御することで、自家消費率の向上を実現しています。加えて、個々には小規模な分散電源を統合制御し、あたかも一つの大きな蓄電システムのように機能させることで、VPP(仮想発電所)として活用しています。こうした仕組みを通じて、電力の需給状況等に応じたデマンドレスポンスを実施するとともに、分散電源の統合・集約・市場連携を一体で設計することで、新たなエネルギー価値の創出に取組んでいます。

2025年12月には、九州電力株式会社、中部電力ミライズ株式会社、東急不動産株式会社、オムロンソーシアルソリューションズ株式会社、Lunar Energy Limitedの5社が新たに資本参画し、事業基盤を更に強化しました。今後は、容量市場・需給調整市場等への参加を通じて電力系統の安定化を支えるとともに、蓄電池に加え、給湯器やEV等多様なエネルギーリソースへの対応を拡大し、次世代の電力インフラを支えるプラットフォームとして進化を続けていきます。本件を通じて、分散型蓄電の一層の有効活用を可能にするエネルギーマネジメントの普及に寄与し、グリーン電力を循環させる社会の実現に貢献していきます。

電力サービス・P2P電力取引技術開発に取組むTRENDE株式会社との資本業務提携

TRENDE株式会社は、「未来を照らしていく」をミッションに、利用者が初期費用不要で住宅向けに太陽光発電設備や蓄電システムを導入できるリースサービス(テラリス)の展開や、再生可能エネルギーの効率的活用及び普及に資するP2P電力取引※1の技術開発や社会実装に取組んでいます。

伊藤忠商事とTRENDE株式会社は、再生可能エネルギーが持つ非化石価値※2を活用した環境価値取引の拡大や、お客様同士のP2P電力取引実現を目指します。

  1. P2P電力取引: Peer to Peerの略。電力の需要家と発電設備保有者による電力の直接取引を指す
  2. 非化石価値: 発電の際に化石燃料を使用しない電源に対して付与される環境価値。再生可能エネルギーの導入を推進するため、2018年5月に取引市場が創設

AI技術を活用したエネルギーマネジメント事業

再生可能エネルギーの導入拡大が進む中、脱炭素社会の実現と電力の安定供給の両立は重要な課題となっています。再生可能エネルギーは、天候や時間帯によって出力が変動するため、電力需給に応じて柔軟に充放電できる蓄電池の重要性が高まっています。伊藤忠商事は、これまで培ってきた蓄電池事業及び電力トレードの知見を活かし、AIを活用したエネルギーマネジメント事業を展開しています。

具体的には、気象予測、電力需要、電力市場価格等のデータを分析し、蓄電池の充放電を最適に制御することで、再生可能エネルギーの有効活用、需給バランスの安定化、エネルギーコストの最適化を図っています。また、家庭用蓄電池やEV、給湯機器等の分散型エネルギーリソースを統合制御し、調整力として活用する新たなエネルギーマネジメントモデルの構築にも取組んでいます。

今後もデジタル技術を活用した新たな仕組みの実装を通じて、再生可能エネルギーの更なる普及と持続可能な社会の実現を目指していきます。

再生可能エネルギーとAI技術を組合わせた次世代エネルギーマネジメントの全体像
再生可能エネルギーとAI技術を組合わせた次世代エネルギーマネジメントの全体像
再生可能エネルギー関連取組み一覧(発電容量ベース)
取組み内容 事業名/出資先 発電容量・規模 GHG削減数値
(推定値・プロジェクト
100%ベース)
風力発電事業

Aspenall風力発電事業

米国

43MW

10万t/年

Cotton Plains風力発電事業

米国

202MW

48万t/年

Prairie Switch Wind風力発電事業

米国

160MW

38万t/年

Grandview Wind風力発電事業

米国

211MW

50万t/年

Bowman Wind風力発電事業

米国

209MW

50万t/年

Dan’s Mountain 風力発電事業

米国

55MW

13万t/年

むつ小川原風力発電事業

日本

64.5MW

15万t/年

廃棄物処理・
発電事業

ST&W 廃棄物処理・発電事業
/ South Tyne & Wear Energy Recovery Holdings Limited

英国

  • 26万t/年の一般廃棄物を
    焼却処理
  • 発電規模:31,000軒の
    家庭消費電力相当

6万t/年

Cornwall 廃棄物処理・発電事業
/ Cornwall Energy Recovery Holdings Limited

英国

  • 24万t/年の一般廃棄物を
    焼却処理
  • 発電規模:21,000軒の
    家庭消費電力相当

6万t/年

West London 廃棄物
処理・発電事業
/ West London Energy Recovery Holdings Limited

英国

  • 35万t/年の一般廃棄物を
    焼却処理
  • 発電規模:50,000軒の
    家庭消費電力相当

8万t/年

セルビア 廃棄物処理・発電事業
/ Beo Cista Energija

セルビア

  • 34万t/年の一般廃棄物を
    焼却処理発電・熱供給及び
    埋立ガス活用により発電
  • 発電・熱供給規模:
    30,000軒の家庭消費電力、
    60,000軒の家庭消費熱量
    (冬季)相当

21万t/年

ドバイ 廃棄物処理・発電事業
/ Warsan Waste Management
Company P.S.C.

UAE

  • 190万t/年の一般廃棄物を
    焼却処理
  • 200MW
  • 発電規模:135,000軒の
    家庭消費電力相当

217万t/年

地熱発電事業

Sarulla Operations Ltd

インドネシア

330MW

185万t/年

太陽光発電事業

Cotton Plains太陽光事業

米国

15MW

2万t/年

Rosamond South太陽光・蓄電池事業

米国

140MW

15万t/年

Black Hollow Sun(Platte River Solar Project)太陽光事業(フェーズ1稼働、フェーズ2建設中)

米国

258MW

28万t/年

ベトナム屋根置き太陽光事業

ベトナム

22MW

3万t/年

大分日吉原太陽光発電所
メガソーラー事業

日本

45MW

5万t/年

新岡山太陽光発電所
メガソーラー事業

日本

37MW

4万t/年

西条小松太陽光発電所
メガソーラー事業

日本

26MW

3万t/年

佐賀相知太陽光発電所
メガソーラー事業

日本

21MW

2万t/年

アイ・グリッド・ソリューションズ

日本

364MW

39万t/年

Clean Energy Connect

日本

244MW

26万t/年

バイオマス発電事業

市原バイオマス発電所
バイオマス発電事業

日本

  • 49.9MW
  • 発電規模:120,000軒の
    家庭消費電力相当

37万t/年

日向バイオマス発電所
バイオマス発電事業

日本

50MW

37万t/年

田原バイオマス発電所
バイオマス発電事業
(建設中)

日本

50MW

37万t/年

グリーンレベニュー実績(クリーンテックビジネス収益を含む組織業績)
2025年度
当期純利益(取込収益)
2026年度見通し
当期純利益(取込収益)
エネルギー・電力ソリューション部門※1

270億円

295億円

北米電力関連事業※2

265億円

278億円

  1. 国内再生可能エネルギー発電事業や蓄電池事業を専門的に担うエネルギー・化学品カンパニー傘下の部門
  2. 北米電力事業及び関連サービス事業の損益の合算

2. 次世代エネルギー事業

アンモニア燃料関連事業

世界的に脱炭素化の気運が高まる中、国際海運では、国際海事機関(IMO)は2018年にGHG排出量削減戦略として、2030年までに2008年比40%効率改善、2050年までに2008年比50%総量削減、更には今世紀中できるだけ早期にGHG排出フェーズアウト(ゼロ・エミッション)を掲げました。その後2023年に改訂し、2050年頃までのGHG排出ゼロに目標を強化しました。これらの目標達成に向け、ゼロ・エミッション船を目指した船舶の早期開発、社会実装が期待されており、その中でアンモニアは代替燃料の候補として各方面で注目されています。また、アンモニアを主燃料とする船舶の開発を具体化するには舶用アンモニア燃料の安定供給及び供給拠点の整備は欠くことが出来ない要素です。

アンモニアを主燃料とする船舶の共同開発及び舶用アンモニア燃料供給に関するサプライチェーン構築

伊藤忠商事は国際海運の脱炭素化への貢献を目指し、アンモニア燃料船の「統合型プロジェクト」に取組んでいます。このプロジェクトでは、(1)アンモニアを主燃料とする燃料船の開発、(2)同船舶の保有・運航、(3)燃料供給拠点の開発、(4)燃料アンモニアの調達及び生産案件の開発を包括的に推進しています。更に、グローバルなアンモニアバリューチェーンの構築を目指し、アンモニアを船舶燃料として社会実装することに貢献していきます。

アンモニアを主燃料とする船舶の共同開発
アンモニアバンカリング船イメージ図

2021年10月に川崎汽船(株)、NSユナイテッド海運(株)、日本シップヤード(株)、(株)三井E&Sの4社と共に、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した事業「グリーンイノベーション基金事業/次世代船舶の開発プロジェクト/アンモニア燃料船の開発」に応募し、採択されました。2022年11月には、同4社と共同で、一般財団法人日本海事協会よりアンモニア燃料船(載貨重量トン20万t級大型ばら積船)の基本設計承認(Approval in Principle)を取得しています。

アンモニア焚き大型ばら積み船のエンジン開発は2026年2月に最終段階の陸上公試を実施し、造船所と共に船舶の仕様確定、造船発注に向けた協議を進めていきます。

舶用アンモニア燃料供給に関するサプライチェーン構築

伊藤忠商事は、舶用アンモニア燃料の供給開発を世界各地で推進中です。シンガポールを優先開発し、続いて欧州主要港、スエズ運河、パナマ運河他を開発中です。シンガポールでは2024年7月に、シンガポール海事港湾庁からバンカリング事業者候補として選定されました。本事業向けに、世界初となるタンク容量5,000m³のアンモニアバンカリング船を2025年6月に発注し、現在建造中です(2027年9月竣工予定)。

2026年4月には同港湾庁からアンモニアバンカリング実証・暫定操業に係るトライアル実施認可(Authorization Letter)を受領しました。同船竣工後、商船三井がCMB.TECH NVと共同保有の上、定期用船を行うアンモニア二元燃料ケープサイズバルカーを燃料供給先として、シンガポール沖合でアンモニアバンカリング実証を行い、洋上での舶用アンモニア燃料供給の安全なオペレーションを確立する予定です。

その他の地域においても舶用アンモニア燃料供給の共同開発を目的とし、スペインでは舶用燃料供給大手であるPeninsula Petroleumと、エジプトではエンジニアリング・建設分野大手であるOrascom Construction PLCと、取組みを推進しています。シンガポール、その他主要港でのバンカリング拠点向けにインドネシアやインド等のグリーンアンモニア生産案件を同時に推進し、安全な燃料供給体制の整備やサプライチェーン構築を促進していきます。

水素関連事業

日本国内においては2020年12月に「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が公表され、その中でも水素は幅広い用途が期待されるカーボンニュートラルのキーテクノロジーとして、発電・産業・運輸等様々な分野の脱炭素化に寄与していくことが期待されています。

この大きな潮流を踏まえて、伊藤忠商事の幅広いネットワークとグループとしての総合力を発揮し、水素市場の開拓を推進していく方針です。

デンマークEverfuel社とのグリーン水素製造事業

2023年12月、伊藤忠商事は大阪ガス株式会社の子会社と共同で、グリーン水素バリューチェーン構築を推進するEverfuel A/Sの株式取得に関する契約を締結しました。同社は水電解装置を用いたグリーン水素生産設備・輸送機器・水素ステーションのEPC・運営を行っています。また、自社水素ステーション等を活用した産業分野・モビリティ分野への水素販売により、地産地消のグリーン水素バリューチェーン構築を推進しています。同社水素製造第一号案件として、2025年2月に世界最大級の水素製造・配給プラント(電解装置規模20MW)の商業運転を開始しました。

本件を通じて得られる知見やノウハウを活用し、水素の地産地消事業の欧州及び他地域への横展開並びに水素派生商品の製造事業への参画を目指すことで、脱炭素社会の実現に貢献していきます。

再エネ電気を用いて世界最大規模の水電解プラントを稼働させグリーン水素を製造し、需要家や水素ステーションに届ける流れを図示している。
グリーン水素が需要家に届けられる流れのイメージ図
プラント内の様子

分散型グリーン水素供給事業を展開する英国Protium Green Solutions社への資本参画について

2024年12月、伊藤忠商事は地産地消の分散型グリーン水素製造を手掛ける英国のProtium Green Solutions Limitedに出資しました。同社は、顧客の立地やエネルギー需要の特性を踏まえた水素利活用のコンサルテーションと、それに基づく地産地消型のグリーン水素事業の開発を強みとしており、2023年より産業・輸送分野の顧客にグリーン水素を供給してきました。当社は、本件を通じて得られた知見やノウハウを活用した水素製造事業を日本及びアジア地域にも展開することで、低炭素社会の実現を目指します。

プロティウム社の分散型グリーン水素供給事業の開発スキーム図の一例
プロティウム社の分散型グリーン水素供給事業の開発スキーム図(一例)
グリーン水素の製造装置

ZeroAvia社への出資及びアジアでの販売代理店契約、水素インフラ整備及び保守整備体制構築に向けた戦略的パートナーシップを締結

2024年、伊藤忠商事は航空機向け水素燃料電池エンジンの開発・製造を行うZeroAvia, Inc.に出資しました。また、同社とアジアにおける販売代理店契約及び保守整備体制、空港インフラ、水素インフラの構築を共同で推進する覚書を締結し、航空分野における脱炭素化を目指しています。ZeroAvia社は環境負荷が極めて低い水素燃料電池エンジンを開発しています。2023年には19人乗り機体「Dornier 228」に搭載しデモフライトを成功させました。2025年には英国航空局より、水素電動エンジンを開発する企業として世界初のDesign Organization Approval(DOA:設計認証承認)を取得しています。今後順次9~19人乗り、40~80人乗り、将来的には200人乗り機体向けのエンジン認証取得を目指しています。水素燃料電池エンジンは従来のジェット燃料エンジンと比較して9割以上のGHG削減が見込まれ、部品点数が少なく、運航コストも従来のジェット燃料エンジンに比べて約4割削減できるとされています。航空機メーカーやエネルギー企業、空港会社等との協業を通じて、すでに約2,400基を超えるエンジン予約注文を獲得しています。

当社は航空業界の脱炭素に寄与するZeroAvia社の水素燃料電池エンジンの商用化、国内外の水素インフラ関連パートナーや航空会社等との協業を通じて持続可能な地域社会の実現や地球環境への負荷軽減に貢献していきます。

19人乗り機体「Dornier 228」にZeroAvia社の
開発する水素燃料電池エンジンを搭載しデモフライト
将来的な40~80人乗りの航空機に搭載可能な
エンジンの認証取得に向けた取組み

低炭素燃料事業

持続可能な航空燃料(SAF)

伊藤忠商事は国内発電事業者向けバイオマス燃料供給を通じて、再生可能エネルギー比率の向上に取組みます。また飛行機・自動車等モビリティ市場の脱炭素化に向けて、リニューアブル燃料の調達・供給拡大にも取組んでいます。

例えば航空業界での脱炭素化の加速に応え、当社は日本で初めて航空会社向け持続可能な航空燃料(SAF)の販売を開始しました。また航空業界における温室効果ガス(GHG)排出量削減を目指し策定されたISCC CORSIAの認証を取得しています(総合商社初)。これは、CORSIAのカーボン・オフセット要件を満たすSAFを供給できることを証明する認証です。当社が取扱うリニューアブル燃料は非化石由来の原料を使用しているため、従来の石油由来の燃料に比べ大幅なGHG排出量の削減に貢献しています。

2023年5月には、世界最大のリニューアブル燃料メーカーであるNeste OYJと、同社が生産するリニューアブルディーゼル「Neste MY Renewable Diesel」の日本国内での流通拡大を目的とした商標ライセンス契約及びブランディング強化に関する協業契約を締結しました。

SAFで飛ぶ航空機イメージ
Copyright: All Nippon Airways co., Ltd. all rights reserved
SAFを給油する様子
リニューアブル燃料のサンプルボトル
提供:Neste社

日本郵船向けの低炭素メタノール燃料を韓国・蔚山港で供給

伊藤忠商事は、海運分野の代替低炭素燃料サプライチェーン構築の一環として、2025年9月、韓国・蔚山港にて日本郵船株式会社に対し低炭素メタノール燃料を販売し、同社100%子会社のNYKバルク・プロジェクト株式会社が定期傭船するメタノール二元燃料ばら積み船にShip to Ship(STS)方式で供給しました。

当社が今回供給した低炭素メタノール燃料は、重油等の従来の化石燃料に比べて炭素排出量を大幅に削減できる燃料であるため、世界的な貨物量増加に伴い海運業界のGHG削減が急務となる中、従来の重油燃料比でGHG排出量約65%削減し、2050年頃までに国際海運からのGHGの排出をネットゼロにするという目標の実現に邁進しています。今後はアジア主要港を中心に供給体制を拡充し、国際海運の脱炭素化とSDGs達成に貢献します。

  • STS方式:バンカリング船から直接燃料を供給する方法

米国ネブラスカ州におけるe-メタン製造事業(Live Oakプロジェクト)の基本設計(FEED)実施に向けた共同開発契約の締結について

伊藤忠商事は、TotalEnergies SE、Tree Energy Solutions Belgium B.V.、大阪ガス株式会社、東邦ガス株式会社と共同で、米国ネブラスカ州におけるe-メタン製造事業の基本設計(FEED)に向けた共同開発契約を締結しました。本事業では、再生可能エネルギーにより生成するグリーン水素とバイオマス由来のCO2を原料にe-メタンを製造し、2030年度中のe-メタンの製造(製造容量:年間約7.5万トン)開始及び日本への輸出を目指します。

e-メタンは、一般的な都市ガスの主成分であるメタンと同じ成分であり、既存のLNGの液化・輸送設備及び都市ガスインフラやお客様の燃焼機器をこれまでと同様に利用可能であるため、スムーズなカーボンニュートラルへの移行と社会コストの抑制が可能です。当社は日本企業の取り纏めを担い、e-メタンの社会実装とカーボンニュートラル社会の実現に貢献します。

Live Oakプロジェクトにおけるe-メタン製造と日本への輸出スキーム図
Live Oakプロジェクトにおけるe-メタン製造と日本への輸出スキーム

3. 水インフラ関連事業

伊藤忠商事は、新興国を中心とした経済発展や人口増加、気候変動による降水パターンの変化により、拡大が予想される水関連ビジネスを重点分野と位置付け、海水淡水化事業、水道コンセッション事業等を、グローバルに展開しています。

海水淡水化事業

伊藤忠商事はオーストラリア・ヴィクトリア州における海水淡水化事業に出資参画しています。本設備はヴィクトリア州メルボルン市人口の水需要の約30%を満たすことが可能であり、2012年よりメルボルン市への水の安定供給を支える事業です。
またオマーン政府傘下のオマーン電力・水公社が同国北部のバルカにて推進する海水淡水化事業には筆頭株主として出資参画しています。

取組み例

海水淡水化プラント及び浸透膜の製造・販売事業 命をつなぐ飲用水を安定供給
オマーン海水淡水化プラントの航空写真
—オマーン最大の海水淡水化事業—

2016年3月、伊藤忠商事が参画するBarka Desalination Companyは同国の水の安定供給に向けてオマーン北部バルカでの日量281,000m3の海水淡水化事業契約を締結しました。同プロジェクトは深刻な水ストレス地域であるバルカ地域への生活用水を提供するためのオマーン政府との官民連携型事業であり、逆浸透膜(RO膜)方式の海水淡水化設備と周辺設備の建設及び20年間にわたる運営を行います。設備は2018年6月に商業運転を開始し、総事業費約300百万米ドルのオマーン最大の海水淡水化事業です。2022年2月にマスカット証券取引所に上場を実現しました。

現在は、マスカット首都圏の水需要の約3割を支えるとともに、オマーン国全体の水需要の約23%を賄う重要なインフラとして機能しています。本プラントは首都マスカットへの主要な給水拠点として戦略的に位置づけられており、深刻な水不足が課題となっていた同地域において、人々の生活に欠かせない安全で安定した飲料水を日々提供し、オマーン国民の生活の潤いと国の持続的な発展に大きく貢献しています。

水処理プラント事業

イラク・クルディスタン地域 下水処理施設建設事業の契約締結について

伊藤忠商事は、イラク・クルディスタン地域政府が推進する下水処理施設建設事業を受注し、2025年8月に上下水道総局との間で建設請負契約を締結しました。本プロジェクトは、2015年6月に独立行政法人国際協力機構(JICA)とイラク共和国政府の間で調印された円借款を活用し、2028年の完工を目指します。

人口約200万人を擁するエルビル市は、し尿の地下浸透による飲料水汚染や公共河川の水質悪化が深刻な課題でした。施設の整備により、同地域の衛生環境を根本から改善し、水資源の確保・有効利用を実現します。今後も、環境ビジネスを積極的に推進していくことで環境資源を有効活用し、社会課題の解決を図ることで持続可能な社会の実現に貢献していきます。

4. 還元鉄事業

低炭素還元鉄サプライチェーン構築

鉄鋼業界では、製鉄過程で発生するCO2排出量の削減が喫緊の課題となっています。直接還元法は、鉄分値が高い「高品位鉄鉱石」を原料とし、その還元に天然ガスを使用することで、従来の高炉法に比べて製鉄過程におけるCO2排出量を大幅に削減できる製鉄手法です。

伊藤忠商事は、長年の事業パートナーであるJFEスチール株式会社、アラブ首長国連邦(UAE)鉄鋼最大手のEMSTEELと共に、低炭素還元鉄のサプライチェーン構築に関する事業化調査を共同推進しています。一般に高炉法では粗鋼1tの生産過程で発生する約2tのCO2排出量を、天然ガスを用いた直接還元法では約1~1.5tまで削減する効果があります。将来的には水素による還元を実現することで、製鉄過程のCO2排出量ゼロ化を目指します。

同事業では、当社の出資先であるブラジル鉄鉱石事業CSN Mineração S.A.(CM社)で生産される高品位鉄鉱石の活用を予定しており、2024年11月にはCM社への追加出資を実施しました。同社が保有するカサ・ジ・ペドラ鉱山は、高品位鉄鉱石を大規模かつ低コストで生産可能な希少な既操業鉱山です。本追加出資によりCM社との協業関係を強化し、生産体制の整備・拡大を図ることで、低炭素還元鉄サプライチェーンの構築を進めていきます。

また、当社は2022年より、還元鉄の生産に不可欠な高品位鉄鉱石を生産するカナダ鉄鉱石事業にも参画しています。

  • 出典: JFEグループ 環境経営ビジョン 2050、P9
高炉法では粗鋼1tの生産過程で発生する約2tのCO2排出量を、天然ガスを用いた直接還元法では約1~1.5tまで削減する効果があり、将来的には水素還元でネットゼロを目指す。
粗鋼1tを生産する過程でのCO2排出量比較
低炭素還元鉄イメージ

5. CCUS・CO2固定化事業

豪州MCi社とのCO2固定化事業

オーストラリアニューカッスルのMCi社実証プラント「Myrtle(マートル)」(2025年1月撮影)

CCUSの具体的な取組みとして、オーストラリアのMCi Carbon(MCi社)に出資し、協業しています。MCi社は鉄鋼スラグ・廃コンクリート・蛇紋岩等にCO2を結合させ、製造した炭酸塩を建材等の用途に利用する鉱物化技術の普及を進めています。2013年10月に設立されたMCi社は、将来的に毎年1億t規模のCO2の固定化を目指す、この分野におけるパイオニア企業です。

2022年7月には伊藤忠商事と大成建設株式会社、MCi社の3社間で覚書を締結し、コンクリート原料としての本炭酸塩の活用につき、検証を進めています。更に、2025年1月には伊藤忠商事、UBE三菱セメント株式会社、MCi社の3社間で覚書を締結し、日本国内の製造プラント建設や国内事業化に向けた原料調達、販売といったサプライチェーンの構築を目指しています。また、その他日本国内外のCO2排出事業者や原料供給者とも事業化に向けた協議を行っています。

MCiは従来のパイロット設備を発展させた実証プラント「Myrtle(マートル)」を豪州ニューカッスルに建設しました。同プラントは、年間約2,000tのCO2を処理可能な世界トップクラスの実証設備であり、自動・連続運転にも対応しています。今後は、商業プラントの実現に向けて、同プラントを活用したプロセス検証や運転データの取得を進める計画です。2030年前後には、オーストリア及び日本において商業規模へスケールアップしたプラントの建設を目指しています。

先進的CCS事業に関わるスタディ・設計作業受託について

伊藤忠商事が幹事会社を務め、日本製鉄(株)、太平洋セメント(株)、三菱重工業(株)、(株)INPEX、大成建設(株)及び伊藤忠石油開発(株)と共同提案した日本海側東北地方におけるCCS事業構想が、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構の2023年度公募事業「先進的CCS事業の実施に係る調査」及び2024年度公募事業「先進的CCS事業に係る設計作業等」に採択されました。

CCS(二酸化炭素の分離回収・輸送・貯留)は、政府が掲げる2050年カーボンニュートラルと2035年度においてGHG 60%削減(2013年度比)を実現するために最大限活用すべき手段として位置付けられており、当社はその社会実装に向けて注力していきます。

船舶輸送を用いた大規模広域CCSバリューチェーン事業のイメージ図

6. グリーンビルディング

伊藤忠商事は、住宅・商業及び物流施設・工業団地等を中心に、不動産開発から運営管理まで一貫して携わっており、スマートシティのコンセプトや、IoT技術等も活用した、暮らしに不可欠で良質な不動産及び関連サービスを提供しています。

グループ会社が運営する不動産投資信託は、不動産会社・ファンドのサステナビリティへの取組みを評価する「GRESBリアルエステイト評価」に参加しています。また、環境負荷低減の観点より、保有ポートフォリオにおいてグリーンビルディング認証の取得を積極的に行っています。賃貸マンション特化型の上場不動産投資信託であるアドバンス・レジデンス投資法人では、CASBEE不動産評価認証取得物件を27物件、DBJ Green Building認証を1物件、建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)評価取得物件を5物件保有しています。なお、保有ポートフォリオにおける割合は、床面積ベースで33.4%、物件数ベースで11.1%に相当します。また、総合型の私募不動産投資信託であるアドバンス・プライべート投資法人では、7物件にてCASBEE不動産評価認証を取得しており、そのポートフォリオ(底地を除く)における割合は、床面積ベースで49.9%、物件数ベースで36.8%に相当します。

  • 各数値は2026年1月末時点の情報

外部との協働

イニシアティブへの参画を通じたクリーンテックビジネスへの取組みを推進、拡大させています。各イニシアティブへの参画においては伊藤忠商事のクリーンテックビジネスに対する基本方針、取組みと合致しているか確認の上、参画を決定しています。

一般社団法人 カーボンリサイクルファンド

2019年8月に設立された一般社団法人カーボンリサイクルファンドは、CO2をカーボン源として利用し、2050年カーボンニュートラル達成に向けて一層の努力を行う必要があるという考えのもと、地球温暖化問題と世界のエネルギーアクセス改善の同時解決を目指しています。カーボンリサイクルに関わる研究助成活動や広報活動等を通じて、カーボンリサイクルイノベーション創出支援を行っており、伊藤忠商事も会員として参加しています。

日本CCS調査株式会社

2008年5月、地球温暖化対策としてのCCSを推進するという国の方針に呼応する形で、電力、石油精製、石油開発、プラントエンジニアリング等、CCS各分野の専門技術を有する大手民間会社が結集して設立された民間CCS技術統合株式会社で、北海道苫小牧におけるCO2の分離・回収、利用、輸送、地中貯留の実証プロジェクトの調査及び実証試験等を行っています。伊藤忠商事も株主の一社として、本件を支援しています。また、液化CO2大量輸送技術の確立のための研究開発・実証事業も同社と共同推進しています。

再生可能エネルギー地域活性協会

2021年6月に設立された一般社団法人再生可能エネルギー地域活性協会(FOURE)は、日本における主力電源としての再生可能エネルギーの地域導入を普及促進し、各地域と再生可能エネルギーが共生し相互に発展することで、地域に裨益する再生可能エネルギーの導入拡大並びに脱炭素社会の実現を目指す団体で、伊藤忠商事は2022年3月から会員として参画しています。

ジャパンサステナブルファッションアライアンス

2021年8月、伊藤忠商事、株式会社ゴールドウイン、日本環境設計株式会社を初代代表として「ジャパンサステナブルファッションアライアンス」が設立され、現在は正会員18社、賛助会員56社が加盟しています(2026年5月時点)。本アライアンスは、ファッション産業が自然環境や社会に与える影響を把握し、ファッション及び繊維業界の共通課題について共同で解決策を導き出すための連携プラットフォームです。「適量生産・適量購入・循環利用によるファッションロスゼロ」と「2050年カーボンニュートラル」を目標に、サステナブルなファッション産業への移行を推進していきます。