2017年度 入社式 社長メッセージ

2017年4月3日

おはようございます。社長の岡藤です。
本日ここに、総合職142名、事務職7名、合計149名の新しい仲間を迎えることができましたことを大変嬉しく思います。今年度も非常に多くの方が伊藤忠商事を志望され、応募・受検されました。皆さんは難関を突破し、選ばれて伊藤忠商事に入社されたわけであります。

早速ですが、皆さんは、「器用貧乏」という言葉を知っていますか。この「器用貧乏」という言葉の意味を辞書で調べてみますと、「なまじ器用なために、あちこちに手を出し、どれも中途半端となって大成しないこと」とあります。「器用な人」というのはどこの世界にもいます。何でも器用にこなせてしまうためにハングリー精神が育ちにくかったり、中途半端なうぬぼれが原因で向上心に乏しく、良きにつけ悪しきにつけ、適当なところで努力をやめてしまったりするのであります。
せっかく入社した会社で高い役職に就く前に転職してしまい、転職先ではまたゼロからスタートという人もよく見かけます。一方、不器用な人というのは、「自分は不器用だ」という自覚があるため、出来なくても落ち込みません。また、そもそも多くのことに手を出さず、一つのことに集中し、根気強くやり続けることが出来ます。結果的に器用な人と比べ、諦めない力と継続力で上回り、最終的には不器用な人が大成します。「不器用」は立派な才能であり、最高の人生に導いてくれる武器となり得ます。

皆さんもまずは配属された部署で与えられた仕事にひたすら打ち込み、その道のプロフェッショナルを目指してください。どんな仕事であれ、その仕事に打ち込み、チャレンジし、成果を挙げその道のプロになることが将来どのような業界においても活躍できる人材になるための第一歩となります。

次に、一つの仕事に根気強く取り組んでいると、必ず壁にぶちあたります。それも一度や二度ではなく、何度も試練に直面することになるでしょう。そのような時にどうすべきか、という話が二つ目のお話であります。例えば、マラソンのことを考えてみて下さい。マラソンの面白さはどこにあるのでしょうか。なぜランナー達は42.195㎞もの距離を苦しい思いをして走るのでしょうか。マラソンというスポーツは、スタートからゴールまで時間が経つに比例して苦しさが増していくと思われがちですが、実はそうではなく、苦しい時間帯と体が楽になるタイミングがあります。これは「ランナーズハイ」とも表現しますが、ふとした瞬間、体が軽くなってすいすい走れる感覚に変わるのです。この感覚がマラソンの奥深さであり、ランナー達はこの感覚を忘れることが出来ず、もう一度味わいたい、とマラソンに挑むのです。
しかしながら、日頃からつらい練習を積んで、この「デッドポイント」を乗り越える経験をしていないと、この快感を味わうことは出来ません。これは仕事も同じです。常日頃デッドポイントを乗り越える経験をしている人は、その先に楽な瞬間が訪れることを知っているので、「もうひと踏ん張りしよう」というパワーが沸いてきます。従って、皆さんはこれから仕事で音を上げそうになった時には、まずはデッドポイントに到達するまで努力を続け、その上で「キツイ、もう嫌だ」と思った時には、「今、自分はデッドポイントの最中にいるが、これを乗り越えられたら楽になれる」と自分に言い聞かせることが肝要であります。

不器用は人生を成功に導く強力な武器であり、その武器を使って与えられた仕事にただひたすら打ち込み、そして直面する壁を乗り超える経験を積むことによって、誰もが認める一人前の商社パーソンになれるのです。

皆さんは未来を切り拓く、「野武士集団」伊藤忠商事の商人魂を持つ逸材と見込まれ、この場に集められました。選ばれて入社した誇りと自信をもって、思う存分、力を発揮されることを期待しています。

総合商社で最も古い歴史を誇る伊藤忠商事は今年で創業159年目を迎えました。皆さん一人ひとりが、「先人が築いてきた長い伊藤忠の歴史に新たな年輪を重ねる仕事をするんだ」という大いなる気概を持って、伊藤忠人生のスタートを切ってください。皆さんの入社を心から祝福し、歓迎の挨拶と致します。