2020年 社長COO年頭挨拶

2020年1月6日

本日9:00より、東京本社1Fロビーにて新年祝賀式が開催され、約2,000人の社員が参加しました。同式にて行われました当社社長COO鈴木善久による「2020年年頭挨拶」を下記の通りお知らせします。

明けましておめでとうございます。
全世界の伊藤忠グループの社員、並びにご家族の皆さんに、新年のお慶びを申し上げます。 

この年末年始は日並びも良く、皆さん、ゆっくりと英気を養っていただいたと思います。一方で、米国によるイラン司令官攻撃という衝撃的な事件で、3日のニューヨーク市場は株安、円高、原油高となり波乱の幕開けとなっています。

今年2020年は、伊藤忠があの4,000億円の特別損失を出した年からちょうど20年目にあたります。当時は、1999年度まで3年連続での赤字、2年連続の無配という非常に辛い時代でした。しかし、その後は、緩やかに業績を回復させ、岡藤会長CEOが社長に就任された2010年度以降、2,000億円、3,000億円、4,000億円と着実に利益を成長させ、そして、とうとう昨年度2018年度には5,000億円という高みに到達しました。今年度も上期を終えた時点で、史上最高となる2,891億円を達成し商社No.1となっています。まずは、これまでの皆さんの努力に改めて感謝申し上げたいと思います。

素晴らしい結果が続く一方で、決して気を緩めてはなりません。20年前の最低株価は200円台、それが今や10倍以上の2,500円台となり、史上最高値を更新中ですが、これはとりもなおさず、株主の皆様や市場からの期待が非常に大きいということです。伊藤忠は、今や20年前とはその財務諸表を見ても、全く違う会社と言ってよいでしょう。そして伊藤忠は、「ぶれないコミットメント経営」を実践する強い会社として、これからも、どんな経営環境でも、株主の皆様や市場の期待に応えていかねばなりません。

2020年度は、本中期経営計画の最終年度であると同時に、2021年度から始まる次期中期経営計画の策定年度でもあります。不確実性が加速する時代においても、連結純利益5,000億円を超えて「持続可能な成長」を実現する、そのための「新たな商社像」を示すことが、20年を経て大きく成長した今年の伊藤忠に求められている課題です。

【持続的成長に向けて】

伊藤忠が将来にわたって持続的成長を実現する上で何が必要か?まずは、当然、利益。利益がなければ成長もできません。今年は、先を見据えた成長戦略の実行を、更に加速させていく必要があります。

やるべきことははっきりしています。「既存事業を更に磨き上げること」、そして「ビジネスモデルの次世代化を進めること」です。生活消費を中心とした既存事業のバリューチェーンについては、そのデジタルトランスフォーメーション、いわゆるDXを進め、効率化・競争力強化を急ぐ一方で、モビリティ・電力・情報金融・リテールといった産業構造の変化が激しい領域においては、新技術や新しいビジネスモデルへの積極的な投資によって、次世代ビジネスへの準備を急ぐ必要があります。中国・アジア市場においては、CITIC/CPとの事業シナジーをさらに具体化させ、そして伊藤忠の強みである生活消費分野においては、最大の消費者接点であるファミリーマートとのデータの利活用を進めることで、商社のビジネスモデルを製品中心のプロダクトアウトから、消費者目線のマーケットインへの事業転換を進めることが必要です。

【「か・け・ふ」は文化】

これらの実行において常に心すべき指針は、「か・け・ふ」すなわち「稼ぐ・削る・防ぐ」です。特に昨今の不透明な環境下においては、「削る」「防ぐ」が重要となります。低重心経営を徹底し、コストや経費の低減を常に実行し、効率的な経営を追求すると共に、取引先との連携を密にして不良債権の発生を未然に防ぐ努力をお願いします。

「か・け・ふ」はもはや伊藤忠の文化です。この実践を通してここ10年で磨かれてきた伊藤忠の分散された景気耐性の強い事業基盤は、他社が簡単に真似できるものではありません。この強い事業基盤を「か・け・ふ」で更に磨き、まずは2020年度の計画を達成すること、同時に、5,000億円のその先に向けた事業基盤の強化を図ることが今年2020年の第一の命題です。

【「三方よし」-原点に返る】

そして、伊藤忠がこれまでの伊藤忠を超えて持続的な成長を実現するには、更なる企業価値の向上が求められています。会社の価値を決めるのは5,000億円という利益規模だけではありません。伊藤忠の総合的な企業価値は、利益はもちろん、環境に、社会に、社員や株主にどれだけの価値を生み出しているかで評価される時代になっています。その拠り所となるのは、現代のESGやSDGsにも通じる「三方よし」の理念であり、2020年をその原点に立ち返る年にしたいと思います。

伊藤忠は、「朝型勤務」や「脱スーツ・デー」など、「働き方改革」を先駆けて実践し、がんとの共生など「健康経営」を推進することで「社員よし」を具体化し、今や全業種で就職ランキング1位を獲得する人気企業となりました。株主還元策も高く評価され、「株主よし」の企業として史上最高値も更新中です。

「三方よし」の基本である「売手よし」「買手よし」に加えて、「社員よし」「株主よし」の実践にも努めていますが、昨今ますます問われているのは「社会よし」「環境よし」です。気候変動や環境問題に対応した商品やサービスを提供しているか、社会問題の解決にもつながる事業を生み出しているかという問いかけです。伊藤忠は、「三方よし」のうち、三つ目の「世間よし」を現代のニーズに合わせて更に実践することで、この問いかけに答えていきたいと思います。 

また、環境や社会問題への対応は実は「マーケットインの発想」そのもので、伊藤忠にとってはビジネスチャンス、「新たな商社像」の構築にも結び付く機会でもあります。リチウムイオン電池でノーベル化学賞を受賞した吉野さんが記者会見で強調しておられました。「環境問題は絶好のビジネスチャンス、大阪流に言えば絶好の金儲けのチャンス。環境は攻めだ。」と。ならば、「世間よし」の実践は利益の源泉にも繋がり、5,000億円のその先は、ESG先進企業を目指すことで見えてくるとも言えます。

160年にわたって受け継いできた創業の原点「三方よし」こそが、2020年、伊藤忠が「新たな商社像」を生み出す原動力となります。「三方よし」の実践により堅固な収益基盤を実現しつつ、同時に気候変動など環境や社会問題に真正面から取組むことで、社員一人ひとりが社会の役に立っているとの実感が持てる、達成感や幸せな気持ちを感じることができる、そんな会社創りをこれからも目指してまいりましょう。

最後に、全世界の伊藤忠グループの皆さん、そして、それを支えてくださっているご家族の皆さんの、本年のご健勝とご多幸をお祈りしまして、私からの新年の挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。